フェルメール

デルフトの眺望

制作年代:1660~1661年頃
技法:カンヴァス、油彩
サイズ:96.5×115.7cm
所蔵:デン・ハーグ、マウリッツハイス美術館
来歴:
運河と市壁に囲まれた都市・デルフトを市の南端、スヒー川の対岸から眺めた図。中央にスヒーダム門、右にロッテルダム門が描かれ、スヒーダム門の時計から、時間が朝の7時過ぎであることがわかる。2つの門の間からは新教会の塔がひときわ明るく照らされているのが見える。マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』に言及されていることで著名な作品である。『失われた時を求めて』で重要なモチーフになっている「黄色い壁」はロッテルダム門の左に見えるが、実際は「壁」ではなく屋根であると思われる。

 


高遠弘美氏の「プルーストと暮らす日々」

(4)より

連載中、”失われた時を求めて”の中にフェルメールの絵画「デルフトの眺望」という絵にまつわる話が出てくる。

”プルーストが「世界でもっとも美しい絵」と書きつけている傑作である。”と高遠氏は言う。

そんな「世界でもっとも美しい絵」ならば見なければと検索してみたのが上の絵だ。

確かに空と海、繊細に描かれた町並みなど、人物画の多いフェルメールにしてはめずらしい。

プルーストが著作の中で語らせたこの絵、高遠氏にとっては見ないわけにはいかない・・・と書く。

プルーストにのめり込んだ高遠氏はこの絵を実際に見るためオランダに渡ったのが30歳を迎えた春のことだが、美術館に着いたら「修復のため一時閉館」とあり見られなかった。


1996年デン・ハーグのフェルメール展に出かけて行ってその絵の前に立ったのが14年後のこと。

出会えた時のことを想像するが感慨もひとしおであったろう。


この物事に拘り続ける性質(たち)は、諦めばかりで希望の持てない今の世の中、稀有の類に入るが、生きていく上では成就如何にかかわらず持ち続けたい性質(たち)なのではないか。