昨日も精密検査が続いていた。
 精密検査は、心配してくださるようなことはない。左脳の動脈が切れそうで、その場合は即死する程度の話である。

 日本を代表する脳外科医に先週から診てもらっているのだが、私はあらゆる角度から見てエスキモー(イヌイット)型だそうである。たとえばデンマーク人は、エスキモーの脳梗塞罹患率より100倍ほども多い。世界でエスキモーが一番、少ないのである。
 アトランダムに日本人を100名ピックアップしたとき、私はどのグループでも「最も罹患しない」ものになる――それほど危険因子がなかった。
 が、現実に発症した。なぜだ、という話になる。簡単に言えば、各種スポーツをグアム島の合宿で繰り返していた際(首を回した瞬間)頭蓋内動脈が骨に当たってしまった。
 習慣性でもなく(暴飲、コルステロールなど)、血圧その他にも問題が全くないうえ、糖尿や不正脈なども皆無である。
 それが改めて確認されたからどうだ、ということになるだろうが、意外と重要なのだよね。原因が特殊だから、今日を限りに命が終わるか、クスリも飲まなくていいか、両極端な診断が可能なのである。
 ベテラン脳外科医が集まって2週間、結論が出ない。昨日は、朝9時から検査と検証を始めた。あごの上あたりにあるマンモスの牙(きば)――人間にもたとえばシッポの痕跡と考えられる尾てい骨があるでしょ――のようなものが残っている。私の牙が7センチくらいあるとすれば、血管破損の説明がつく。というわけで、すくに検査をしたら何と、たったの2センチ。ううむ。
 次に、これも生まれて初めての脳内血管に造影剤を投入してのCT検査を――。技師いわく、「身体中が熱くなったり、頸部がものすごく違和感があったりしますが、それは大丈夫です。腕から入れる造影剤を身体が拒否すると何とか(聞き取れず)な場合は危険なので、すぐこのコールを押してください」
 この検査を来週に回していたら6日間くら~い気分になっていた気がする。即、頭蓋骨を開いて手術にもなるしね。
 それを「ついでに今日やっちゃいましょう」と、私にではなく家族に医師が言い、うっかり私は何が始まるのか知らずに造影剤使用のCT検査が、今年9回目となるMRI検査などとともにやることになったのは、慶賀すべきことなのかなあ。とにかく肝要な検査が、最良のスタッフと環境のなかで3週間かけて行なわれ、その間にもリハビリやら入院先であった病院にも行くなど、いろいろとある。その日も朝8時半にタクシーで出て、再びタクシーで帰ってきたのは12時間後だ。
 みなさま、この費用どうされているのでしょう?
 タクシー代が介護保険で出ることはありえない。介護保険は、ずっと寝ていろというコンセプトのもとに作られている。


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