昔々のとある国。

海と森に恵まれた豊かな国。



暗い海の底を悠々と泳ぐウツボが2匹。

1人の人魚を探しています。


「兄さん、この辺から人魚の匂いがするよ。」


「本当か?...本当だ、とってもいい香り。」



この2匹は兄弟ウツボです。



「マスターに報告だ。

弟よ、左眼を貸してくれ。」


「いいとも。

右眼を貸してくれよ兄さん。」



2匹が顔を突合せ

怪しく光る黄色い眼球を並べます。



《かわいそうな人魚を発見。

王子に会えなくなって悲しんでるよ。》



2人で声を合わせて静かに呟きます。

彼女は海難事故で

海に投げ出された王子を

助けて恋に落ち、

父親であるトリトン王に酷く叱られ、

泣きながら王宮を

抜け出してきたところだったのです。






『そうかい、そりゃよかった。

屋敷に迎えるよ。』






海の魔女―かつて邪悪な海の魔女に

魂を取られた少女―の声が

2匹の脳に響きました。



2匹は早速人魚の前に回り込み、



「やあお姫様。」


「暗い顔をしてどうしたの?」


「なにか悲しいことがあったのかな。」


「お父様に叱られた?」



からかうように質問を投げかけては

ケタケタと笑ってみせました。



「恋は人魚を美しくするって言うけど、」


「今の君は全然美しくないねぇ。」




「どうして知ってるの?

あなた達誰なの?」




2匹に囲まれ絡みつかれて、

怯えるように人魚が問いかけます。



しかし2匹はクスクスと笑うだけ。

さらに悲しくなってしまった人魚は、




「放って置いて!」




鰭で兄弟を振り切って行ってしまいます。


兄弟は近道をして行く手を塞ぎ



「親切で言ってやってるのにね。」


「俺たちのマスターなら願いを叶えてくれる。」


「マスターは海の魔女だからね。」




また光る眼球を並べて、

今度は人魚を洗脳しました。




「ついて行くわ。」




《こっちへ。》






兄弟ウツボはマスターのいる屋敷へと

人魚を先導します。





人魚は、嬉しそうにあとに続くのでした。

このお話の続きはまた今度。







続く。