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●お話

マンションの建設現場で約二百年前の人骨が発見された。肋骨の一本に刺し傷のような痕があり、どうやら他殺体のものであるらしい。骨と遺留品を鑑定した科学分析ラボの宇田川から依頼され、時空旅行者のおゆうこと関口優佳は、まだ事件化していない殺人について江戸で調査を始める。一方、南町奉行所の同心・伝三郎からは、紙問屋の若旦那が旗本の奥方と不義密通しているという噂を聞き……。

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●感想

今回も面白かった

このシリーズ、

新しい本が出るたびに面白さが増してる。

 

 

今回は新しい切り口で、

現代から

江戸時代に起こった殺人事件の捜査依頼がある。

 

 

依頼者は

科捜研の下請けをしている

おゆうの友達で分析会社の宇田川

 

 

宇田川によると

とあるマンションの建設現場で、

 

骨に傷跡のある他殺の白骨

 

白骨の遺留品で錆びた銅板が発見され、

それを、

科捜研から依頼されて分析したところ、

骨も銅板も江戸時代のモノと判明した。

それも恐らく、

おゆうが活動拠点としている時代。

 

 

しかも

発見された場所も四谷なので、

江戸時代のおゆうの家がある

日本橋馬喰町から約7kmの範囲とそう遠くない。

 

 

そんな訳で宇田川は、

お父さん白骨と銅板の正体を調べて欲しい

と言う依頼をしてきた。

 

 

もちろん

他殺とは言え江戸時代の事件だから、

現代の警察がそれを調べるはずもないので、

これは宇田川の個人的な興味本位。

 

 

だけど問題は

おゆうのいる時代にその人は、

●もう死んでいるのか?

●それともこれから死ぬのか?

 

 

それに

江戸時代の地図は正確ではないため、

白骨の発見された場所も、

現代と江戸時代の地図を照合したところで

あまり参考にはならないから、

 

 

お母さんそんなのどうやって調べるのよ?

お父さんまずは四谷の行方不明者でも調べたら?

と言うことで、

いつも江戸の事件を

無料で分析してもらってる恩もあるため、

依頼を断る選択肢はないから、

 

 

自宅の押入れから

江戸時代に行ったおゆうは仕方なく、

まずは

四谷の行方不明者の有無を調べ始める。

 

 

一方で

江戸時代の上司の鵜飼からも、

紙問屋の若旦那と旗本の奥方の

不義密通(不倫)の真偽を確認して欲しい。

と言う内密の指示があった。

 

この時代の不倫は死罪で、

妻が不倫したら夫は、

妻と不倫相手を殺しても罪には問われない。

この時代の不倫はそのくらい重い罪だけど、

家族にそんな人間がいると知れたら恥ずかしい。

だから現実には隠したがる人が多い。

実は

旗本の奥さんはすでに病死しているが、

死の状況には不審な点があり、

不義密通の噂がある人だから、

死の原因を偽っているのではないか?

・・・というのが奉行所の見立て。

ところが

相手は旗本なので、

調べ方を間違うと大事に発展しかねないため、

信用の出来る人間に慎重に調べて欲しい。

と言うことでおゆうが抜擢された。

 

 

そんな訳で

おゆうは2つの事件を並行して捜査することに。

・・・みたいなお話

 

 

これね

旗本の不義密通は隠し事が多いし、

白骨と銅板は情報が少なすぎるから、

捜査はとても難航します。

しかもその上、

一見して不関係そうなキャラがどんどん現れ、

謎は更に深まります。

・・・けど、

最初に出された

白骨と銅板、旗本の不義密通という謎の深さ、

2つの事件の真相が知りたくて、

とてもワクワクするし、

伏線の回収の仕方も見事で、

最終的に大きな事件に発展していくし、

今回はめちゃくちゃ楽しく読めました。

 

 

更に

おゆうと宇田川は、

江戸の人から見れば未来人だけど、

実は鵜飼も未来人で、

鵜飼は2人が未来人と気づいていて、

おゆうはそれに気づいてないけど、

宇田川はそれに気づいている。

今回は宇田川が、

鵜飼に探りを入れる展開があります。

面白いのが、

鵜飼は2人を、

未来からのエージェント、

あるいは過去を調査する会社の人?

みたいに思ってるらしく、

実際にはただの趣味なんだけど、

この辺の空気感の差も興味深いです。

 

 

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