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| 2010年12月23日(木)より映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』が公開された。今回のメガホンをとったアベユーイチ監督に話を聞いた。 |
【詳細画像または表】
ウルトラマンシリーズ45周年記念作品となる本作は、ウルトラセブンの息子である最新ウルトラヒーロー「ウルトラマンゼロ」が冒険のなかで出会う新たな仲間(ニューヒーロー)たちとともに大切なことを学びながら成長していく物語。09年に公開された『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で“史上初の邪悪なウルトラマン”ウルトラマンベリアルが、強大な銀河帝国を築き「銀河皇帝カイザーベリアル」としてさらに邪悪にパワーアップして登場。ウルトラマンゼロは、歴代ウルトラ戦士や新たに登場する仲間たちとともに、宇宙制覇を目指すカイザーベリアルの野望に立ち向かう。
本作のメガホンをとったのは、アベ ユーイチ監督は、97年の『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』(小中和哉監督)VFXコーディネーターを務め、その後も監督として「SDガンダムフォース」(04年/TX)、「ウルトラマンネクサス」(04年/CBC)、「ウルトラマンメビウス」(06年/CBC)を手がけてきた人物だ。
ウルトラマンゼロという新たなヒーローを主人公に、アベ ユーイチ監督は、何を描こうとしていたのだろうか。
アベ ユーイチ
真正面からぶつかって行くことで分かり合える
——今回の作品はどういったウルトラマン像がテーマなのでしょうか?
アベ ユーイチ監督(以下、アベ):描きたかったのは、若いウルトラマンですね。「ウルトラマンメビウス」も成長はテーマでしたが、さらに若くて生きがいい、元気なウルトラマンを描いてみたかった。彼が、どんな人生を歩むのかという部分も含めて。
ウルトラマンゼロ(以下ゼロ)は、今までのウルトラマンよりも気さくで、わりとやんちゃで、子どもたちが親近感を持ちやすい存在だと思うんです。その彼が取る行動が子どもたちの生き方の指針となるような、見ている子どもたちが彼と共に学んでいくような、若いウルトラマン像を描きたいと思いました。
——新しい仲間と出会う中でぶつかり合う場面もあります。これは、成長の要素の一つであるということですか?
アベ:短い出会いの中では、真正面からぶつかって行くことで、結果的に一番早く、手を取り合い分かり合うことができるようになるのではないでしょうか。相手とガツンとぶつかってこそ共感することもあるし、考えが違うところも分かった上で認め合える。そういうぶつかりあいを経ることが大事なのではないかと。ちょっと少年マンガ的な展開に感じるかもしれませんが。
——これまでのウルトラマンの話には、兄弟や先輩が保護者のように次々と出てきて、主人公のひ弱さを感じることもありました。今回の映画はそれに対するアンチテーゼなのでしょうか。
アベ:アンチテーゼではないですね。
ゼロのバックには、たしかに親、兄弟、先輩がズドっと存在しています。それは変わりません。ただ、現実の世界を見渡すと、不況で厳しい状態が続いている。その中で、親もがんばらなければいけないけれど、子ども自身も頑張って生きていかなければいけない。
それぞれが一生懸命生きていないといけない今の世の中では、自分で考えて自分で行動し、自分で責任を持つというところに行き着くと思うんです。大人は、そうやって生きてきているわけで、だからこそ子どもをフォローできるはず。
ゼロの状況も、いわばとても厳しいもの。ただ、彼には人生の先輩がいっぱいいるから、無茶ができる。つまりウルトラファミリーがいる環境というのは、「ゼロ=子ども」が成長するのに理想的な環境でもあると思います。
人生で一番うれしい瞬間の一つは、父親に認められるとき
——とはいえ今回は、ウルトラファミリーとは離れた世界での戦いになるようですが。
アベ:ゼロはファミリーにフォローされることがないような、別の宇宙まで行きます。どう考えてもファミリーが助けに行くことができない、自分の力で何とかするしかないという中、ゼロは他人に自分のパワー(命)を分け与える。それが何倍もの力になって返って来るんです。与えることで自分が力をもらえるんだということの大事さが伝わるように、結果的にゼロを追い込むことになりました。
それでも、旅立つときには父親のウルトラセブンに“3回分の変身エネルギーの入ったブレスレット”をもらっています。父の力をもらうことで頑張れているわけで、親子の関係性は切れることなく続いています。その中で、息子のゼロが自身の力で何かをつかみ取りやり遂げる姿を見て、セブン(父親)が喜ぶ。
僕は人生で一番うれしい瞬間の一つは、父親に認められるときだと思うんですよ。それがこの映画の根本にはあるのだと思います。「よくやった」と父親に言われることが、どんなにうれしいかということが。
——過去に円谷プロダクションが生み出してきた“円谷ヒーロー”をモチーフにしたキャラクターが出てくるのは監督のアイデアですか?
アベ:キャラクターデザイナーの後藤正行さんたちの打ち合わせの席で「造形部の人たちが、今度の新作に旧ヒーローが出るとおもしろいよねと言っていた」ということを聞いたのがきっかけです。特に今回は“別の宇宙に行く”というアイデアがベースにありましたから、そういう設定ならほかのヒーローたちが出てきてもおかしくないと。
なにしろそれぞれのヒーロー(の作品)ごとに、“宇宙“の設定や起こったことが違います。それを今ウルトラマンがいるはずの宇宙に入れ込むと、設定がごちゃごちゃになってしまい大変です。ところが“別の宇宙”にすれば、違うヒーローが現れても問題がクリアできる。 ただ昔と今ではデザインの仕方もラインの描き方も違っている。そのままゼロと一緒に立たせると違和感が出てしまうため、キャラクターはリニューアルしました。
ウルトラマンも宇宙に出ると小さい存在でしかない
——仲間になるヒーローたちの性格付けはどうされたんですか?
アベ:それぞれのキャラクターをどういう位置付けにするのか、最初からイメージは持っていましたが、完成したものは微妙に変わりました。「グレンファイヤー」は炎の戦士なので、熱くて短気で直情型だけど、ゼロよりも精神年齢が高い兄貴分をイメージしていました。「あしたのジョー」のキャラクターにたとえるなら、ゼロがジョーで、グレンファイヤーは力石というのが当初のイメージでした。
ただ担当するスーツアクターの寺井(大介)君と話していく中で、海賊船の用心棒という設定もあって、だんだん自由気ままなキャラクターになっていきました。型にはまっておらず、相手の気持ちがよく分かり、プライドも高い。独特ないいキャラクターになったと思います。
——ミラーナイトはクールというか、デザインが発想のベースなんでしょうか?
アベ:ミラー=鏡ですし、デザインもクールですしね。しかもナイト(騎士)という立ち位置なのでちょっと上品だろうと。
ジャンボット(ジャンバード/鋼鉄の武人)のキャラクターはどうするか、すごく悩みました。最初は無骨な、執事的なキャラクターも考えました。太古に作られた遺産という設定で考えていたので。それが、声優を神谷浩史さんにしようと思い始めたころに、あまり年寄りで無骨すぎてもダメだ、4人揃ったときに合わないだろうと思い、だんだん若くなっていきました。
——ウルトラマンは光の巨人というイメージですが、対象物がない宇宙に出てしまうと等身大の人間に見えてしまう。それは作劇に影響しているのでしょうか。
アベ:思いきり影響していますね。ウルトラマンも宇宙に出ると小さい存在でしかない、ということもあると考えました。
人間とやりとりをするウルトラマンは巨大に見えます。それが話が進み彼らよりもさらに巨大な敵と戦う時は、ウルトラマンが人間ぐらいに見える。そうすることで、“人間側”から親近感を感じてもらえるようになる。そういう演出をとっています。
——ウルトラマンが戦いながらよくしゃべることが、意外というか新鮮です。
アベ:(前作で)ゼロが登場してから(ウルトラマンが)よくしゃべるようになっています。でも、ゼロが巨大化したときに人間と直接言葉を交わすシーンはない。やりとりはテレパシーで意思を送り、それに対して人間がうなずくなどして返す。これは今までのウルトラマンの流れをちゃんと続けていこう、間違えてはいけないというこだわりです。
ただし巨大な人たち同士(ウルトラマンなど)は言葉を直接交わせるし、別の宇宙にいる人間たちと巨大な人たちは直接会話できる。ゼロだけが違う宇宙から来ているので、会話ができない。ゼロの異質さや特異性を表して、神秘性も増すようにして、違うんだということを分かるようにしています。
——今回は、初めてウルトラマンゼロの“人間態”が出てきますが?
アベ:やはりドラマとしての物語に肉をつけたいと思いました。心臓の音が聞こえ、血を流し、痛いという思いをする人がいないと、ベリアルに痛めつけられている人々の苦しみが分かりにくいし、戦う意味も勝ったときの喜びも伝わりにくい。
そして、死んだら本当に死んでしまうという小さな命の、本当の大切さを込めておかなければならないと考えました。そこをちゃんと押さえておかないと、実感のない作品になってしまうでしょう。
やはり、人間を出したかったんですね。子どもが感情移入しやすい小さな男の子と、変身するかっこいいお兄さんと、そしてきれいなお姫様。子どもがあこがれるような登場人物をすべて投入したかったんですよね。
“マルチバース”を描くのが大変だった
——見てもらいたい対象年齢は? やはりお父さんがウルトラマンシリーズで育った世代でしょうか?
アベ:いえ、そこだけには留まりません。どの世代にも見てほしいです。もちろんジャンボットやミラーナイトが登場するので、元の作品を見ていた僕ぐらいの世代の人にはぜひ、とにかくぜひ見ていただきたい! というのはありますが。
でも年齢を超えて、小さい子どもから若い人、女の子でも楽しめる普通のエンタテインメント作品になっていると思います。特に年齢に関係なく、自分の道を探している人に見てほしい。小学校に入学したり中学校に進学したりして環境が変わって、どうしたらいいだろうと考えている子どもたち。あるいは田舎から東京に出てきて悩んでいる人など、新しい道に踏み出している人に見てほしいですね。
——ここが見どころという点は?
アベ:見どころと聞かれるといつも困るんですが……ゼロがかっこいい。いろいろなことに対する彼の行動がかっこいいし、出会って仲間になっていくところがドラマ的におもしろいと思います。
——シーンとして一番苦労されたのは?
アベ:「マルチバース」の部分です。僕らの住んでいる宇宙から別の宇宙に行く途中に、宇宙の外側を通るんです。宇宙の外がこうなっているということをビジュアル化するんですが、そこには別の宇宙が泡粒のようにいくつもぶわっと浮いている。我々の宇宙だけでなく、複数の宇宙が存在するというマルチバース理論から来ているんですが、この空間を描くのが一番苦労しました。
映画でマルチバースという言葉を使ったのは、世界初ではないでしょうか? 科学啓蒙映画です(笑)。ウルトラマンは空想科学番組だったじゃないですか。単なるファンタジーだけじゃなく、科学っていう部分があるのがウルトラマンのすごいところだと思いますし、僕もそこが大好きです。
■企画・制作:円谷プロダクション■製作:「ウルトラマンゼロ THE MOVIE」製作委員会■監督・脚本:アベ ユーイチ■キャスト:小柳友、濱田龍臣、土屋太鳳■声の出演:宮野真守、黒部進、森次晃嗣、緑川光、関智一、神谷浩史■公式HP:http://www.ultramanzero.com
(文/柳 竹彦=日経トレンディネット)
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