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~Rakusho-enne~

庄子智一の公式ざれごと

▼『あまの最期』
 
【ご報告】

2016/10/18 23:00

我が最愛の猫『あま』(♂:享年12歳)は、最期、我が太腿の上で、綺麗に、かっこよく息を引き取りました。
 
その死に様は、本当に綺麗でした。
 
 
 
『あま』は、なんともプライドが高く、『品』のある猫でした。
その最期も、男として惚れ惚れする天晴れな死に様でした。
 
 
 
11年前、埼玉県川越市で、1年間弱、『半野良生活』を送っていた幼い『あま』は、今より11歳若い某に懐き、アスファルトに座る某の太腿の上でよく寝ていました。
 
『あま』は、この太腿の上が大好きでした。

https://youtu.be/3PSwXD7zwm0
 
某と『あま』の時間は、この太腿の上から始まり、この太腿の上で終えることができました。
  
これ以上の『幸せな終わり方』はないーと思います。
 
 
 
今は、不思議なくらい安堵というか、清々しい気持ちでいっぱいです。
 
 
 
そりゃ、悲しいし、淋しいし、悔しいけれど…
「この11年間、某は、某なりに、やれることはやった。」
と思えます。
 
 
なんだか、

「やり遂げた……『あま』の猫人生を、最期まで見届けた。」

という感じです。
 
 
飼い主としても、感慨無量です。
 
 
 
『あま』は幸せ者だったー

そう思います。
そう、思うようにします。
 
 
 
半野良だった『あま』は、某に拉致られて、家に閉じ込められて、ただただ『生きてきた』だけです。
 
 
その「ただ生きてくれること」により、某がもらった『幸せ』は計り知れません。
 
 
最期の最期も、『あま』は、『生きること』を、某に教えてくれました。
 
 
 
悲しみに浸っている暇はありません。
 
某は、『あま』と過ごしてきた11年間を胸に抱いて、
『あま』からもらったたくさんの『幸せ』を糧に、
これからの人生を、そして、音楽活動をより良きものにしたいと思います。
 
 
 
『あま』は、最高の息子でした。
『あま』への感謝の気持ちを忘れることなく、これから、胸を張って生きていきます。
 
 
 
『あま』にひっかかれた皆様、ごめんなさいね。笑

『あま』を可愛がってくださいました皆様、本当にありがとうございました。
 
 
2016/10/19 01:42
▼闘う作曲家:庄子智一▼
 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※ここから先は、本当に読みたい方だけ読んでください。
 
『あまの最期』の様子、『あま』からもらったもの、『あま』から教わったこと…
を綴ったものです。
 

すいません…めちゃくちゃ長いです。
「書くこと」で、気持ちを整理しました。
 
 
 
 
 
2016/10/18火 02:10
『あま』がいよいよ歩けなくなってきた。
もう、見ていられない…

でも、既に『覚悟』はできた。
もう、意識も遠くなってるんじゃないかな…

最期まで、そっと見守ってあげよう。
 
できれば、少しでも苦しむことなく、眠るように、スゥーって、短時間で死んでくれたらいいのに…
 
 
 
11年前の俺は、『力』もないのに、俺の『エゴ』で、『あま』の自由を奪った…

でも、愛情は存分に注いできたし、比較的広いスペースも提供したし、コストはかかったけど、若くして膀胱を悪くした『あま』に合わせてウェットフードを与えてきた…

貧乏ながら、「やれること」はやってきたつもりだ…
 
だから、『最期』も、俺の『エゴ』で決める。
 
 
だって、あのゴミ屋敷に放っておいたら、きっと5年も持たなかったんじゃないかな…

あそこは、野良猫多かったし…
そもそも、『あま』を引き取ったキッカケは、怪我だったんだから…
 
 
12歳…
『家猫』としては、ちょっと若いのが悔しいけど、正直、今の俺の力では、どうにもできない。
 
 

そりゃ、辛いよ
きついよ
悔しいよ…
 
 
 
「もっとやれたことがあった…」
なんていう『後悔』なんて、いくらでも並べられる。
 
でも、しょうがないよね…
己を責めても、どうにもならないよね…
 
 
「俺は、よくやった」
 
 
そう思うことにした。
 
 
 
そして、なによりも、
 
 
「俺は、『あま』を心の底から愛してきた。大切に大切にしてきた。」
 
 
これだけは言える。
これだけは、胸を張って言える。
 
 
もう、変に『後悔』することはやめよう。
胸を張って、『あま』を見送ろう。
 
 
 
 
04:00頃
『あま』が首を起こして、歩き出そうとした。

でも、もう後ろ足に力が入らず、前足もうまく床のグリップを掴めず、シャカシャカと歩こうとするも、一向に進まなかった。
 
「おいおい、あま…進んでないぞ…笑」

と、笑いながら突っ込んだ。
 
 
 
俺は、いつも『あま』と笑ってきた。

時に、怒ったり、落ち込んだり、泣いたりもしてきたけど、『あま』とのコミュニケーションのほとんどは、笑っていたはずだ…
 
 
 
「苦しいのか??どこに行くんだよ??
全然、進んでねぇぞ。
それじゃ『ひとみ婆さん』みてぇじゃねぇかよ…笑」
 
 
笑って、ツッコミを入れられるようになってきた。
 
 
 
大丈夫だ…
もう、俺は大丈夫だ。

笑いながら、『あま』を見送ってみせる。
 
 
 
俺がしっかりしなきゃ…

最期の瞬間を見届けるために、べったりと張り付いていたいけど、ちゃんと『己のこと』も、しっかりとやらなきゃダメだ。
 
 

「あまー、風呂に入ってくるから、もうちっと踏ん張れよー」
 
と声をかけて、しばらく入れていなかった風呂に入り、身を清めた。
 
 
風呂から上がると、『あま』は随分と位置を変えて横たわっていた。
幸いなことに、まだ息はあった。
 
 
「おい、こら…こんなに動いたのか??
おまえ、すげぇな…笑」
 
 
何度、柔らかい座布団に寝かせても、よろよろと這いつくばって冷たい床に移動してしまう。

もはや、『本能』なのだろう…
  
 
 
よく、「猫は、死に際を人に見せない」なんていう逸話を聞くけど、ニュアンスが少し違う気がする。
 
死に際の猫が、
「誰かに見られている」なんていう『客観的な視点』を持っているとは思えない。

身体中に毒素が廻り、脳にも支障をきたしている状態なわけで、その『苦痛』やら『不調』から逃げるために、もはや『本能』で、

「ここではないどこか」

に、行こうとしているだけーなんじゃないかな。
 
 
 
おそらく、今の『あま』は、目も見えてないし、俺のことを認識していないだろう…
 
 
それでも、俺は、語りかけ続けた…
 
 
 
 
 
08:00頃
もう外は、すっかり明るくなっていたが、まったく飯を食べていないことに気づいた。

「あまー、俺、明日ってゆーか、今日、いろいろやらなきゃいけないから、飯食って寝るぞー」

と、声をかけ、まったく食欲もなかったが、むりやり飯を口にねじ込んだ。
 
 
「人も動物も、自ら食べなくなったら終わりだ。」
 
 
俺は食う。
たとえ、辛くても、哀しくても食う。
食って生きる。
 
 
 
「あまー、食ったから寝るぞ。
死ぬときは、ちゃんと起こせよー」
 
真横に寝かせた『あま』に声をかけて、布団に潜った。

しばらく撫でているうちに、俺は眠ってしまったらしい…
 
 
 
 
12:00頃
目を覚ますと、『あま』は、ほんの少し位置を変えて横たわっていた。
目は半開きで、呼吸は穏やかだった。
 
 
 
 
14:30
よし、動かなきゃー
銀行行ってお金を降ろして、買い物しなきゃ…
 
 
「あまー、ちょっと出掛けてくるー
すぐ戻るから、もうちっと踏ん張ってな。」

後ろ髪を引かれながら、玄関を開けた…
 
 
 
 
15:15
身体の向きが変わっていたが、ほぼ同じ場所、同じ表情で、『あま』は横たわっていた。
 
 
 
 
16:00
仕事をするために、『あま』を一階に移動して、PCをつけた。

でも、まだ『音』には反応するようで、作曲をして、いろんな音を出すのは、さすがに気が引けた…

静かにできることをやろう…
 
 
 
 
17:00頃
時折、前足をピクンと痙攣させるようになってきた。
 
ふと、手に血がついてることに気付いた。

あれ…?いつ怪我したんだろう…??

ウェットティッシュで拭く。
口元にも、血がついていた。
 
 
あ…これ…吐血したんだ…
 
 
それが、胃からなのか、食道からなのか、口内なのかはわからない…
でも、それほどまでに、『あま』の内臓は蝕まれていたのか…
 
そんなんじゃ、飯なんて食えるわけないよな…
水だって、スポイトで無理矢理ねじ込まれても、内臓が受け付けられないよな…
 
そんなの、『苦痛』を引き延ばすだけだ…
 
 
もっと、早く気付いて、どうにかしてあげられたらよかった…
 
「ごめんな…あま…」
 
いかんいかん…
「もう『後悔』はしない」と決めたんだった。
 
 
「あま…、俺はもう謝んねぇぞ…笑」
  
  
  
 
17:50
突如、『あま』が起き出して、激しく身を震わせた。
始めて見る激しい痙攣…
 
急いで、駆け寄り、抱きしめた。
 
「あまー、よしよし、大丈夫か??
あ、大丈夫なわけないよな…
よしよし…」
 
 
昨夜、ネットで見かけた『腎不全末期の痙攣』ってやつか…

   
その知識がとても助かった。
 
「痙攣は、自分の意思に反して、筋肉が勝手に動いて収縮してしまう状態のことを言います。
猫の腎不全の末期に起きる痙攣は、脳の異常から生じる神経症状です。
つまり、痙攣が起きている時点で、脳は正常ではなくなっている…ということです。
もう、意識はほとんどないと思っていいでしょう。
つまり、『苦痛』は感じていません。」
 
こんな激しい痙攣を、この知識なしに見ていたら…
さすがに、きつかった…と思う。
 
 
見た目には、激しいから、苦しそうで、なんとも見てられないが、

「そっか、『あま』の脳は、そこまでやられてるんだな…
てことは、あんまり、苦しくはないんだな…」

と、理屈として思えて、落ち着いて、激しく震える愛しき息子を抱きしめることができた。 
 
 
『あま』は、目を見開き、口を大きく開け、何かを吐き出したがっているように見えるも、何も出ず、無言で、全身を激しく揺らした。
 
「あまー、よしよし…
んー…
こういうとき、なんて声をかけたらいいかわかんねぇなぁ…
んーと…
あまー…愛してるぞー…笑」
 
 
しばらく、痙攣は続いたが、おさまり、また、穏やかに横たわった。
 
 
 
いよいよだな…
でも、これ、あと何時間、続くのかな…

仕事なんてやってらんねーや…
 
 
と、PCの電源を落とし、コーヒーを入れ、『あま』の真横に座った。
よし…今夜は長期戦だ…

ミニトマトでも買ってくればよかった…笑
 
 
涙は流さない。
俺は『あま』を笑って見送ってみせる。
 
 
 
 
18:02
特に息苦しそうには見えず、呼吸はゆっくりで、口は開いてない。
鼻で息してる。
 
目はずっと半開きのまま、ぼんやりとしている。
ここ数日、ずっと開きっぱなしなんじゃないかな。
 
指で瞼をつついても、まばたきすらしない。

『まばたき』って、健康だからこそできる反応なんだな…
 
 
 
でも、「あまー」と優しく声をかけると、わずかにしっぽを揺らした。
『音』は聞こえるらしい。
 
その後、頭を持ち上げて、こっちを見たけど、目に輝きはなく、焦点も合ってない。

手を振っても、追いかけることもなく、瞳は動かなかった。

もう、見えてないんだな…
 
 
意識も朦朧としていることだろう…
それが、返って気が楽だった。

苦しんでいるようには見えない。

もう、耳だけが辛うじて聞こえている状態ー
 
 
 
こんな状態でも、『あま』って綺麗だなぁ…
かっこいいなぁ…
 
俺の愛しい『あま』
ハンサムだな♪
 
 
 
 
18:45
むくっと起き上がり、立ち上がるもバタっと倒れた。

大きい音は聞こえるようで、手を叩いたり、大きな声で

「おーい!!あまー!!愛してるぞー!!」

と呼ぶと、ピクっと手足を痙攣させて反応する。
 
それも、単なる『反射反応』のように見えて、可哀想な気もするな…
でも、俺の声を、この脳に響かせるのも、今しかないもんね。
 
 
 
きっと、『記憶』を司る脳の表層の部分は、もう麻痺っちゃったんだろうな…

あとは、脳の奥底の生物としての『本能』を司る部分だけが、辛うじて生き残ってる状態だろう…

そこが止まれば、『あま』の呼吸も止まる…
 
 
 
 
19:07
時折、首を上げる。
まだ、起きようとする。

いっそのこと、『介錯』してやろうかな…と、思えてきた。

無限の愛を込めて、首を絞めてやろうか…
と、細くなった首に手をかけたが、できなかった…
 
 
あま…
俺にはできねぇや…
ごめんな…
 
 
 
 
19:10
なにやら、動きが激しくなってきた。
首を上げ、這うように手を動かす頻度が増えてきた。

脳の奥を、毒素が蝕んでいるんだろう。

大きな音には反応する。
でも、それも、反射でしかない。

なにやら飲み込むように、喉を動かす。
 
 
19:12
またもや、立ち上がった。
そして、倒れた。

だけど、呼吸はまだ穏やか。
 
 
 
 
19:41
ビクンビクンビクンと、大きくも単発の痙攣を3回して、ほんの少しだけ、尿失禁した。
 
「これが、最後のおしっこなわけか…」
 
 
『あま』は、なぜか砂におしっこをしてくれなかった。

最初の数年は、してくれてたんだけど、猫が増えていくうちに、砂でしなくなった。
きっと、『他の猫の匂い』がするところでしたくなかったのだろう…

どんだけ、猫が嫌いなんだよ…苦笑
 
結果、最期の最期までペットシートだったね。笑
 
 
 
 
19:56
臆病な3匹目『もこ』が、たぶん様子がおかしいことに気づいて、少し離れたところから、じっとこちらを観察してる。
 
「もこー、おいで。
『あま』にお別れを言おう…おいで…」
 
と優しく呼びかけると、しばらく間を置いて、恐る恐る近寄ってきた。
 
『あま』のしっぽの先っちょの匂いを少し嗅いで、また、離れてしまった…
 
はい、よくできました♪ 
お別れ言えたね。笑
 
 
 
 
20:26
『あま』がいきなり立ち上がった…!!
 
 
「どこにそんな力が残されていたのか…?!」
というくらいの力を見せ、少し前進して、バターン!!と倒れた…
 
ゴーンって、床に頭を打った。
頭を打つのはやだなぁ…
 
 
 
俺は、シャツの下に着ていた肌着を脱いで、『あま』の枕にした。
 
 
『あま』は、俺の匂いのする服が大好きだった…

いつも、俺が脱ぎ捨てたシャツで『巣作り』して、その上に座ってたっけ。

おかげで、俺のシャツは毛だらけじゃ…笑
 
 
 
 
21:14
『あま』は、上体を起こした。
おまえ、かっこいいな。

ここにきて、まだ、立ち上がろうとするのか…
 
 
おまえ、かっこいいよ♪
それでこそ、我が息子よー
 
 
 
『あま』は、とにかくプライドが高かった。
俺以外の人間は、「餌をくれる時」以外は受け入れなかった。
 
安易に撫でようものなら、爪でひっ掻く問題児だった。
 
来客の皆さんには、申し訳なかったけど、その媚びない姿勢、『プライドの高さ』が大好きだった。
 
 
猫が大嫌いで、他の猫が近寄ろうものなら、
「ニ゛ャアーー!!」と蹴散らしていた。
  
 
それでいて、俺には思いっきり甘えた。
『あま』とは、『甘えん坊』の『あま』からつけた。
 
 
俺の足の上が大好きで、一度乗ったら、ゴロゴロと喉を鳴らして動かなかった。
『あま』との『スタート』も、この足の上だった…

  
「あま…最期は、この足の上で死のうな…」
 
 
 
 
21:27
2度目の激しい痙攣
すかさず、抱き上げて、胡座をかいた某の足の上に抱き寄せた。

激しくて、長めの痙攣…
 
 
「あまー…よしよし…
愛してるよ。
よしよし…
おぉおぉ、激しいな。
よしよし…」
 
 
 
もう、何も怖くないー
 
 
この『激しい痙攣』も怖くなくなった。
 
 
 
なんだか、可哀想だけど、わけもわかってないのだろうが、『あま』は、今も尚、「生きよう」としている。

残り僅かな【命の炎】を燃やし切ろうとしている。
 
 
我が足の上で、ゆっくりと呼吸をする『あま』からは、しっかりと『体温』を感じる。
 
『あま』はまだ温かい…
『あま』の【命の炎】は、まだ、燃えているんだ…
 
 
 
「よっしゃー!!
おまえの『最期の勇姿』見届けるからな!!
あま…
おまえ、かっこいいよ♪」
 
 
 
『あま』は、
「ふぅぅ…」
とほんの少しだけ声を出した。
 
 
久々に聞く『あま』の声ー
 
 
 
 
21:36
目の前に手をかざして陰を作り、離して明るくすると、『あま』の瞳孔はゆっくりだが反応した。
猫って強いな…って思う。
もはや、何もできない、死んでいくだけの身だけど、なかなかのしぶとさを感じる。

『あま』の強さ
『あま』の『生命力』をしかと受け止めたぞ。
 
 
「あま…おまえ、強いな…
さすが、我が息子だ…!!
なぁんちってな…笑」
 
 
俺の足の上に横たわっている『あま』は、ピクンと反応して、首を少しだけ動かした。
 
 
 
 
22:06
俺の太腿の上で、ときおりビクンと動くけど、だいぶ落ち着いてきたような気がするな。

ゆるやかに上下する『あま』のお腹が愛おしい。
 
 
俺も足が痺れちゃうから、胡座をかいたり、伸ばしたり、ときおり体勢を変える。

そのたびに、『あま』を抱き上げるのだが、なんとも軽いし、暴れることもないし…

「あまよ…あんだか大人しくなっちゃったなぁ…笑」
 
 
 
随分と軽くなっちったけど、『あま』は、まだ温かい…
 
ここ数日、何も食ってないわけだから、肉を使って燃やしているわけだよな…
そりゃ、痩せちゃうわけだよな…
 
 
 
 
 
22:39
『あま』の体温を太腿で感じながら、静かな部屋でゆっくりと時が過ぎていく…
 
冷蔵庫とエアコンのノイズ音が微かに聞こえる。
 
 
 
「静かだなぁ…」
 
 
 
トコン…トコン…と、重量感を感じる足音が階段から聞こえてきた。

この足音は3匹目の『もこ』だな。
腹が減ったのかな…
 
 
 
上で、2匹目の『かっぱ』が鳴いている…
 
 
 
 
「平和だなぁ…」
 
 
 
平和っつっても、今、まさに、最愛の家族を亡くそうとしているわけだけど…笑

なんだか、酷く気持ちが穏やかだ。
 
 
 
 
『あま』は本当にいい子だった。
プライドが高く、『品』のある雄猫だった。
 
『あま』との時間は、本当に穏やかで、幸せな時間だった。
 
 
 
「あま…ありがとうな。
ちっと、先に逝って待っててね。
まぁ、ちょっと待たせちゃうかもしれないけど…」
 
 
 
 
『あま』は、最初の1年弱を『半野良状態』で暮らしていた。
他の猫たちと違って、『外での暮らし』が少し長い。

その分、『家の外』の記憶が強いんだろう…
だから、他の猫たちと比べて、強く外に出たがっていた。
 
 
それを、俺は閉じ込めた。
俺は、『あま』の『自由』を奪ったー
 
 
 
「あま…
おまえの自由を奪ってごめんな…
 
俺は、おまえがどうしても欲しかったんだ…

ほら、おまえ、すぐ喧嘩して怪我すんじゃん。笑 
だから、外に出せなかったんだよ。
病気 感染るし…
 
だって、おまえの怪我を手当てしたの俺なんだぜ??
覚えてっか??笑」
 
 
『あま』は、ビクンと動いた。
 
 
『あま』の顎を撫でながら、語り続けた…
 
 
 
「おまえ、外に行きたがってたもんなぁ…
 
ちょっと先に逝って、外で遊んでこいよ。
外でいっぱい遊んできな。
 
おまえは、もう自由だよ…
自由にしていいんだよ。
 
また、俺が見つけてやっから。笑
 
また、一緒になろう。
また、一緒にあそぼう…」
 
 
 
 
耐えていた涙が、一気に溢れ出してきた…
涙がボロボロと『あま』のお腹に落ちた。
 
 
くそぅ…!!
情けない…!!
 
 
 
「あま…ありがとうな
幸せいっぱいくれてありがとうな

楽しかったなぁ
ほんとにありがとう

愛してるよ…」
 
 
 
だぁーっと泣いたら、スッキリした♪
ふぅ…もう大丈夫だ…
 
 
「おっと…ごめんごめん…笑」
 
と、我が涙でビチョビチョになった『あま』の身体を拭いた。
 
 
 
その直後…
 
 
 
 
22:45頃
『あま』のビクンビクンが激しくなってきた。

「うぅ…」

という小さな声と共に、しゃっくりのような感じの痙攣を繰り返し始めた。
 
 
 
そのしゃっくりから、
 
「くはぁ…!」

という咳になりきれない咳のような呼吸に変わった。
 
 
どうやら、お迎えが来たようだ…
 
 
 
「あまー!!
ありがとうね!!

あまー!!
おつかれさまね!!
よくがんばったね!!
もう、休んでいいよ!!

あまー!!」
 
 
 
何度も何度も、叫んだ。
 
 
 
「あまー!!愛してるよ!!

ありがとうね!!
また一緒になろうね!!

あまー!!」
 
 
 
 
「ぐはぁー!!」

という大きめの嘔吐のような咳をして、『あま』の呼吸は止まった…
 
 
かすかに、心臓は動いていたが、ピクピクと痙攣させて手足を伸ばした後、心臓の動きも止まった…
 
 
 
「あまー、ありがとうね
愛してるよ♪」
 
 
『あま』の瞳を見ると、徐々に色が濁っていったけど、それもやがて止まって、瞳がまんまるくなった。
 
 
 
 
23:00
『あま』は、俺の太腿の上で息を引き取った。
 
 
 
きれいだ…
本当に、きれいな死に方だ…
 
 
「あま…
おまえ…最期までかっこよかったよ♪」
 
 
俺は、笑いながら『あま』の鼻にキスをしたー
 
 
 
 
 
▼おわりにー

すぐに、ネットで『訪問ペット火葬』を調べて連絡をとると、3時間後に来てくれるというので、今、『あま』の遺体の傍で、これを書いている。
 
『あま』は今頃、
「ラッキー♪」と言わんばかりに、外を駆けずり回っていることだろう…笑
 
 
 
「あまー、存分に遊びな。
たまには、帰って来いよ。笑」 
 
 
 
 
 
 
▼『繰り返しのご挨拶』

2016/10/18 23:00

我が最愛の猫『あま』(♂:享年12歳)は、最期、我が太腿の上で、綺麗に、かっこよく息を引き取りました。
 
その死に様は、本当に綺麗でした。
 
 
 
『あま』は、なんともプライドが高く、『品』のある猫でした。
その最期も、男として惚れ惚れする天晴れな死に様でした。
 
 
 
11年前、埼玉県川越市で、1年間弱、『半野良生活』を送っていた幼い『あま』は、今より11歳若い某に懐き、アスファルトに座る某の太腿の上でよく寝ていました。
 
『あま』は、この太腿の上が大好きでした。

https://youtu.be/3PSwXD7zwm0
 
某と『あま』の時間は、この太腿の上から始まり、この太腿の上で終えることができました。
  
これ以上の『幸せな終わり方』はないーと思います。
 
 
 
今は、不思議なくらい安堵というか、清々しい気持ちでいっぱいです。
 
 
 
そりゃ、悲しいし、淋しいし、悔しいけれど…
「この11年間、某は、某なりに、やれることはやった。」
と思えます。
 
 
なんだか、

「やり遂げた……『あま』の猫人生を、最期まで見届けた。」

という感じです。
 
 
飼い主としても、感慨無量です。
 
 
 
『あま』は幸せ者だったー
 
そう思います。
そう、思うようにします。
 
 
 
 
半野良だった『あま』は、某に拉致られて、家に閉じ込められて、ただただ『生きてきた』だけです。
 
 
その「ただ生きてくれること」により、某がもらった『幸せ』は計り知れません。
 
 
最期の最期も、『あま』は、『生きること』を、某に教えてくれました。
 
 
 
悲しみに浸っている暇はありません。
 
某は、『あま』と過ごしてきた11年間を胸に抱いて、
『あま』からもらったたくさんの『幸せ』を糧に、
これからの人生を、そして、音楽活動をより良きものにしたいと思います。
 
 
 
『あま』は、最高の息子でした。
『あま』への感謝の気持ちを忘れることなく、これから、胸を張って生きていきます。
 
 
 
『あま』にひっかかれた皆様、ごめんなさいね。笑

『あま』を可愛がってくださいました皆様、本当にありがとうございました。
 
 

2016/10/19 01:42
▼闘う作曲家:庄子智一▼