『ツキアカリイノリウタ』
月明かりと、小さなスポットライトのように光る電灯の下、澄んだ声が穏やかに響いていた。
少年は歌う。
優しく、柔らかく、祈るように。
人通りの少ない夜の道、学生服の上にコートを羽織っただけのその姿はさながら黒を纏う天使のようで。
中学二年生の、冬の日。
明日からは冬休みと云うその夜に、枢木スザクは彼と出会った。
冷たく、全てを切り裂こうとするような風が少年の黒い髪とロングコートを打ち、歌声が途切れる。
ふるりと身を震わせて下げていた両手を口元に寄せ、ふと彼はスザクを見る。
驚いた様子もなく見据えてくる瞳は上質な紫水晶のようで、つい先程まで響いていた歌声と同じく酷く澄み切っていた。
「。。。いつまで、そこで見ているんだ?」
柔らかなテノールが呼びかける、そばに来れば良いと。
うっすらと微笑み、寒さで朱くなった指に白い吐息を吹き掛けながら。
「聴いて、いたんだろう?」
吹き付ける風にぱたぱたと黒髪が揺れる。
子猫のような仕種で首を傾げて見せる少年に軽く息を飲み、スザクはそっと歩み寄った。
「綺麗な声。。。だったから。。。」
少年から数歩離れた位置で立ち止まり、勝手に聴いていてごめんと呟く。
構わないと囁くように告げる少年にどう話して良いのかわからない。
年齢はスザクと変わらないだろう、透けるような白い肌の、綺麗な少年。
無防備なのにどこか艶を帯びた眼差しが痛い、たまたま通り掛かっただけなのに、なんだかいたたまれなくなる。
「えぇと。。。どうしてこんな所で、歌ってたの?」
ストリートミュージシャンは主に駅前とか公園に出没する筈だよね?
そう問い掛けると、彼は少しきょとんとした。
歌い手ならば誰かに聴かせるために歌うだろうと思っていたスザクには、人の少ない夜道で歌う意味はわからないのに。
「。。。歌いたかったから。」
答えはひどくあっさりと彼の唇から流れた。
「風とか夜空とか。。。気持ちがよかったからな」
だから歌っていたんだと、至極当たり前のように云う彼は、ただ歌が、歌うことが好きなのだと。。。ようやくスザクにも理解できた。
ヒトに聴かせるだけが歌ではない、自己主張の手段やまして利益のためだけに歌うのではない。。。
ただ純粋に歌いたいから歌う、その行為が飾らない態度が、歌声に顕れるのだと。
美しく澄んだ歌声は、彼の心がそのまま流れ出したようなものだったのだと。
だから、だからスザクは立ち止まった。
引き寄せられるように、無心にその声を追っていた。
街に溢れるありきたりに装飾された歌たちにはさして興味も湧かない自分が、『聴いていたい』と思ったから。
それを告げると、紫水晶の瞳が少し嬉しげに細められた。
薔薇色の唇がやわらかく弧を描く。
「変わった奴だな、お前」
くすくすと微笑う、その姿は月光に融けてしまいそうに儚く細く、ただ綺麗で。
気付けばその頬に触れていた。
夜気に晒されていた肌は冷たく、陶器のようでありながら柔らかかった。
「。。。名前、尋いてもいいかな?」
半ば無意識に問うて、それから慌てて身を離す。
「あ、えと。。。ほら、君の歌をまた聴きたいから。。。その、」
あたふたとしながら紡ぐ言葉は要領を得ない、ぐるぐる回る頭でスザクは必死に次の言葉を探す。
「。。。ルルーシュ」
さらり、と流れるように、声が聞こえた。
「そう、ル。。。え?」
「ルルーシュだよ。ルルーシュ・ランペルージ。。。俺の、名前だ」
繰り返す少年の髪が、また風に揺れる。
一瞬と云うには長すぎる時間、スザクは硬直した。
見惚れた、が正しいだろうか、とにかく手足も頭も口も、動かなかった。
「。。。ぁ、えと。。。僕は。。。僕は枢木スザクっていうんだ、その。。。」
もう少し、歌ってくれないかな?
上手く回らない頭でやっと吐き出したのは、願いだった。
観客が居る前で歌うなんて珍しいなと少年。。。ルルーシュが笑い、ぺこりと少しかわいらしい仕種でお辞儀をして見せる。
曲のタイトルも告げぬままに紡がれたメロディはスザクの知らないもので、どこか寂しさを孕んでいて。
冷え切った風をあたためようとするように、その身を削るように声を響かせるルルーシュは、それでも幸せそうだった。
歌うことが生きることそのものだと、そのために殉するのなら本望だと語るように、歌う。
やがて静かな余韻を残して歌が止み、ルルーシュはまたぺこりとお辞儀をする。
拍手はこの場に合わない気がして、ただ綺麗だと微笑えば、ありがとうと微笑が返ってくる。
翌日の同じ時間にまた会うことを約束して、ルルーシュは歩み去った。
その先に民家があるとは思えないような細い路地に入って行く彼は振り返りはしなかった、ただ視界から消える寸前に、僅かに手を振ってくれた。
うたが声が耳に残るまま、スザクはしばし立ち尽くした。
翌日の朝、スザクは貯金を叩いてギターを買いに走る。
独り歌うルルーシュの隣に、傍らに在る存在になりたいと。
楽譜なんて殆ど読めないし、楽器に触れたのは音楽の授業くらいで。
それでも、走った。
入学祝いや卒業祝いにギターを欲しがる少年は沢山居るから、楽器店に行けば基本的な道具がセットになって並んでいる。
黒いエレキギターとアンプ、初心者向けの本、紫色のピックを二つ。
そこそこにでも弾けるようになるまでは秘密にしておこうと、一人にこにこしながら家路を急ぐ。
自然と、昨夜ルルーシュが歌っていたメロディを口ずさんでいた。
。。。あの歌、なんて云うんだろう。
ふたりで音楽やろう、なんて言ったらびっくりするかな。
昨日みたく笑ってくれたら良いな。
空はとても蒼く鮮やかで、どこまでもスザクの気分を上昇させた。
>やっぱりやった音楽ネタ。
No Music,No Lifeな俺はこんなん大好きです春が青い。スザクが白い。←
スザルルアイドルネタとはまた別だったりするあたりスザルルって恐ろしい。
てかまたルルーシュがどっかおかしい子だなぁ。。。何故。
俺も今年は新宿あたりで歌ってやろうと思います、夢追い人でもいーじゃん厨二がとまらない(*^-')b←誇るな
少年は歌う。
優しく、柔らかく、祈るように。
人通りの少ない夜の道、学生服の上にコートを羽織っただけのその姿はさながら黒を纏う天使のようで。
中学二年生の、冬の日。
明日からは冬休みと云うその夜に、枢木スザクは彼と出会った。
冷たく、全てを切り裂こうとするような風が少年の黒い髪とロングコートを打ち、歌声が途切れる。
ふるりと身を震わせて下げていた両手を口元に寄せ、ふと彼はスザクを見る。
驚いた様子もなく見据えてくる瞳は上質な紫水晶のようで、つい先程まで響いていた歌声と同じく酷く澄み切っていた。
「。。。いつまで、そこで見ているんだ?」
柔らかなテノールが呼びかける、そばに来れば良いと。
うっすらと微笑み、寒さで朱くなった指に白い吐息を吹き掛けながら。
「聴いて、いたんだろう?」
吹き付ける風にぱたぱたと黒髪が揺れる。
子猫のような仕種で首を傾げて見せる少年に軽く息を飲み、スザクはそっと歩み寄った。
「綺麗な声。。。だったから。。。」
少年から数歩離れた位置で立ち止まり、勝手に聴いていてごめんと呟く。
構わないと囁くように告げる少年にどう話して良いのかわからない。
年齢はスザクと変わらないだろう、透けるような白い肌の、綺麗な少年。
無防備なのにどこか艶を帯びた眼差しが痛い、たまたま通り掛かっただけなのに、なんだかいたたまれなくなる。
「えぇと。。。どうしてこんな所で、歌ってたの?」
ストリートミュージシャンは主に駅前とか公園に出没する筈だよね?
そう問い掛けると、彼は少しきょとんとした。
歌い手ならば誰かに聴かせるために歌うだろうと思っていたスザクには、人の少ない夜道で歌う意味はわからないのに。
「。。。歌いたかったから。」
答えはひどくあっさりと彼の唇から流れた。
「風とか夜空とか。。。気持ちがよかったからな」
だから歌っていたんだと、至極当たり前のように云う彼は、ただ歌が、歌うことが好きなのだと。。。ようやくスザクにも理解できた。
ヒトに聴かせるだけが歌ではない、自己主張の手段やまして利益のためだけに歌うのではない。。。
ただ純粋に歌いたいから歌う、その行為が飾らない態度が、歌声に顕れるのだと。
美しく澄んだ歌声は、彼の心がそのまま流れ出したようなものだったのだと。
だから、だからスザクは立ち止まった。
引き寄せられるように、無心にその声を追っていた。
街に溢れるありきたりに装飾された歌たちにはさして興味も湧かない自分が、『聴いていたい』と思ったから。
それを告げると、紫水晶の瞳が少し嬉しげに細められた。
薔薇色の唇がやわらかく弧を描く。
「変わった奴だな、お前」
くすくすと微笑う、その姿は月光に融けてしまいそうに儚く細く、ただ綺麗で。
気付けばその頬に触れていた。
夜気に晒されていた肌は冷たく、陶器のようでありながら柔らかかった。
「。。。名前、尋いてもいいかな?」
半ば無意識に問うて、それから慌てて身を離す。
「あ、えと。。。ほら、君の歌をまた聴きたいから。。。その、」
あたふたとしながら紡ぐ言葉は要領を得ない、ぐるぐる回る頭でスザクは必死に次の言葉を探す。
「。。。ルルーシュ」
さらり、と流れるように、声が聞こえた。
「そう、ル。。。え?」
「ルルーシュだよ。ルルーシュ・ランペルージ。。。俺の、名前だ」
繰り返す少年の髪が、また風に揺れる。
一瞬と云うには長すぎる時間、スザクは硬直した。
見惚れた、が正しいだろうか、とにかく手足も頭も口も、動かなかった。
「。。。ぁ、えと。。。僕は。。。僕は枢木スザクっていうんだ、その。。。」
もう少し、歌ってくれないかな?
上手く回らない頭でやっと吐き出したのは、願いだった。
観客が居る前で歌うなんて珍しいなと少年。。。ルルーシュが笑い、ぺこりと少しかわいらしい仕種でお辞儀をして見せる。
曲のタイトルも告げぬままに紡がれたメロディはスザクの知らないもので、どこか寂しさを孕んでいて。
冷え切った風をあたためようとするように、その身を削るように声を響かせるルルーシュは、それでも幸せそうだった。
歌うことが生きることそのものだと、そのために殉するのなら本望だと語るように、歌う。
やがて静かな余韻を残して歌が止み、ルルーシュはまたぺこりとお辞儀をする。
拍手はこの場に合わない気がして、ただ綺麗だと微笑えば、ありがとうと微笑が返ってくる。
翌日の同じ時間にまた会うことを約束して、ルルーシュは歩み去った。
その先に民家があるとは思えないような細い路地に入って行く彼は振り返りはしなかった、ただ視界から消える寸前に、僅かに手を振ってくれた。
うたが声が耳に残るまま、スザクはしばし立ち尽くした。
翌日の朝、スザクは貯金を叩いてギターを買いに走る。
独り歌うルルーシュの隣に、傍らに在る存在になりたいと。
楽譜なんて殆ど読めないし、楽器に触れたのは音楽の授業くらいで。
それでも、走った。
入学祝いや卒業祝いにギターを欲しがる少年は沢山居るから、楽器店に行けば基本的な道具がセットになって並んでいる。
黒いエレキギターとアンプ、初心者向けの本、紫色のピックを二つ。
そこそこにでも弾けるようになるまでは秘密にしておこうと、一人にこにこしながら家路を急ぐ。
自然と、昨夜ルルーシュが歌っていたメロディを口ずさんでいた。
。。。あの歌、なんて云うんだろう。
ふたりで音楽やろう、なんて言ったらびっくりするかな。
昨日みたく笑ってくれたら良いな。
空はとても蒼く鮮やかで、どこまでもスザクの気分を上昇させた。
>やっぱりやった音楽ネタ。
No Music,No Lifeな俺はこんなん大好きです春が青い。スザクが白い。←
スザルルアイドルネタとはまた別だったりするあたりスザルルって恐ろしい。
てかまたルルーシュがどっかおかしい子だなぁ。。。何故。
俺も今年は新宿あたりで歌ってやろうと思います、夢追い人でもいーじゃん厨二がとまらない(*^-')b←誇るな