私は猫を追っていた
蒼くて冷たい、風のような猫だった
猫は私の前に突然現れ、一度だけ頭を撫でさせると、背を向け去っていった
私はなんだかその猫を欲しくなってしまった
私は走ったが猫にはなかなか追い付かない
疲れて諦めようとすると、猫は傍によってきて甘い声で鳴いた
しかし、捕まえようとすると猫はまた逃げる
追うことに疲れた私は猫の行く手に火を放った
黒くて、熱を持たない、邪な火だった
やっと私のものになると思ったが、猫は火の中を逃げていってしまった
身体に酷い火傷を負いながら、今度は振り返る事なく真っ直ぐに走っていった
追いたかったが、私にこの火は越えられない
身体を燃やし、心を焦がしたがやはり越えることはできなかった
私は猫が去った方向とは反対に歩き出した
もう二度と振り返らないと誓って
時々、背後であの猫の鳴き声が聞こえる
そのたびに私は歩みを止め、誓いを破ろうかと考える
しかし私はもうお前を追うことは出来ない
お前を疵つけた私にお前を追う資格はないのだから
だからもう鳴かないでほしい
私に頭を撫でることを赦したことなど忘れて、ただ前を向いて、自分だけの道を走っていってほしい
私は二度と振り返らないから
さあ、今日は妖怪奇談です。
今日の妖怪は"百々目鬼"です。
ドドメキと読みます。
ゴツイ名前ですね。
「函関外史云、『ある女生まれて手長くして、つねに人の銭をぬすむ。忽腕に百鳥の目を生ず。是鳥目の精也。名づけて百々目鬼と云』。外史は函関以外の事をしるせる奇書也。一説にどどめきは東都の地名ともいふ」
『今昔画図続百鬼』の一節です。
江戸時代のお金は孔があって鳥の目に似ていることから"鳥目"と呼ばれていました。
つまり、鳥目の精とは金銭の精なのです。
したがって、百々目鬼の正体は銭の精に祟られた女、の泥棒ということになります。
人の目を盗むつもりが、銭の目に見られていたわけですね。
また、鳥目は別名を「鵞眼銭」といいます。
これは、鳥目の四角い孔が雁の目に似ているからだそうです。
雁といえば「雁瘡」と呼ばれる病気があります。
痒疹性の湿疹で、皮膚にぼつぼつができます。
百々目鬼に浮かび上がる目に似てますね。
「妖」ならぬ「瘍」は瘡、腫れ物、出来物の意。
「癢」とは痒いことです。
「技癢」とは腕がなること。
腕前を自慢したくて仕方ないことです。
百々目鬼は大層腕の立つスリ師だったんでしょう。
百々目鬼は左腕を捲り、無数の目に埋め尽くされた腕を見せた姿で画かれます。
「左利きの者は器用」というように、昔から左利きの人は手先が巧です。
私の知り合いにも左利きがいますが、器用かどうか今度聞いてみよう。
相手に当たれば百発百中で摩ることができた女スリ師も、当たったのは鳥目ならぬ祟り目でした。
「弱り目に祟り目」とは、弱った体に物の怪が憑いてますます落ち目になること。
瘡ならぬ「枷」は罪人を繋ぐ刑具。
お金の別名を「御足」といいます。
足がついて手に枷をはめられれば嫌な目にあわされますね。
江戸時代、再犯の可能性のあるものには目印として、入れ墨を入れられました。
百回も悪事をはたらけば体中目印だらけです。
それが嫌ならさっさと「足を洗う」ことにしましょう。
さて今日は何回"目"という字を使ったでしょう?
それでは
Good night and have a nice dream.
蒼くて冷たい、風のような猫だった
猫は私の前に突然現れ、一度だけ頭を撫でさせると、背を向け去っていった
私はなんだかその猫を欲しくなってしまった
私は走ったが猫にはなかなか追い付かない
疲れて諦めようとすると、猫は傍によってきて甘い声で鳴いた
しかし、捕まえようとすると猫はまた逃げる
追うことに疲れた私は猫の行く手に火を放った
黒くて、熱を持たない、邪な火だった
やっと私のものになると思ったが、猫は火の中を逃げていってしまった
身体に酷い火傷を負いながら、今度は振り返る事なく真っ直ぐに走っていった
追いたかったが、私にこの火は越えられない
身体を燃やし、心を焦がしたがやはり越えることはできなかった
私は猫が去った方向とは反対に歩き出した
もう二度と振り返らないと誓って
時々、背後であの猫の鳴き声が聞こえる
そのたびに私は歩みを止め、誓いを破ろうかと考える
しかし私はもうお前を追うことは出来ない
お前を疵つけた私にお前を追う資格はないのだから
だからもう鳴かないでほしい
私に頭を撫でることを赦したことなど忘れて、ただ前を向いて、自分だけの道を走っていってほしい
私は二度と振り返らないから
さあ、今日は妖怪奇談です。
今日の妖怪は"百々目鬼"です。
ドドメキと読みます。
ゴツイ名前ですね。
「函関外史云、『ある女生まれて手長くして、つねに人の銭をぬすむ。忽腕に百鳥の目を生ず。是鳥目の精也。名づけて百々目鬼と云』。外史は函関以外の事をしるせる奇書也。一説にどどめきは東都の地名ともいふ」
『今昔画図続百鬼』の一節です。
江戸時代のお金は孔があって鳥の目に似ていることから"鳥目"と呼ばれていました。
つまり、鳥目の精とは金銭の精なのです。
したがって、百々目鬼の正体は銭の精に祟られた女、の泥棒ということになります。
人の目を盗むつもりが、銭の目に見られていたわけですね。
また、鳥目は別名を「鵞眼銭」といいます。
これは、鳥目の四角い孔が雁の目に似ているからだそうです。
雁といえば「雁瘡」と呼ばれる病気があります。
痒疹性の湿疹で、皮膚にぼつぼつができます。
百々目鬼に浮かび上がる目に似てますね。
「妖」ならぬ「瘍」は瘡、腫れ物、出来物の意。
「癢」とは痒いことです。
「技癢」とは腕がなること。
腕前を自慢したくて仕方ないことです。
百々目鬼は大層腕の立つスリ師だったんでしょう。
百々目鬼は左腕を捲り、無数の目に埋め尽くされた腕を見せた姿で画かれます。
「左利きの者は器用」というように、昔から左利きの人は手先が巧です。
私の知り合いにも左利きがいますが、器用かどうか今度聞いてみよう。
相手に当たれば百発百中で摩ることができた女スリ師も、当たったのは鳥目ならぬ祟り目でした。
「弱り目に祟り目」とは、弱った体に物の怪が憑いてますます落ち目になること。
瘡ならぬ「枷」は罪人を繋ぐ刑具。
お金の別名を「御足」といいます。
足がついて手に枷をはめられれば嫌な目にあわされますね。
江戸時代、再犯の可能性のあるものには目印として、入れ墨を入れられました。
百回も悪事をはたらけば体中目印だらけです。
それが嫌ならさっさと「足を洗う」ことにしましょう。
さて今日は何回"目"という字を使ったでしょう?
それでは
Good night and have a nice dream.