GET THE NACK

 「ビートルズの再来」と言われ、アルバム1曲目ではビートルズの『PLEASE PLEASE ME』の1曲目「I Saw Her Standing There」を思わせるカウントで始まります。アルバム・タイトルもビートルズの米キャピトルからの1枚目(ビートルズはキャピトル以前にVee JayやSwanというレーベルからシングルとアルバムをリリースしたことがありますが売れませんでした。)の『MEET THE BEATLES』を意識したものでしょう。

 私がこのアルバムに出会ったのは中学2年生の時。当時読んでいた音楽誌「GUTS」のレコード・レビューのページの、「ビートルズの再来」と書かれた記事と細身のネクタイのユニフォームの写真に興味をそそられました。カーペンターズやABBAは聴いていましたが、ビートルズ以外では初めて買った洋楽アルバムです。
 初めて聴いた時には、あまりビートルズらしさは感じませんでした(^^ゞ 理由はギターの音色やテクニックの違いだったのかもしれません。そして最もビートルズらしさを感じなかったのは、ベースの音色です。「ドゥン」という丸い音ではなく「ブン」という音は今でも好きではありません^^; 楽器は同じリッケンバッカーの4001(?)を使っているのに‥‥。(McCartneyは4001を使う時はトレブルも目一杯上げて、「ズン」という感じの音にしていました。)

 ドラムスの音は今聴いても最高のパフォーマンス&レコーディングです。タムのチューニングとスネアの音色のバランスも心地よく、生ドラムのカッコよさが最もよく出ているアルバムです。

 この1枚目の後はなかなかヒットに恵まれず、ドラムスのBruce Garyがバンドを離れ、その後1982年に一度解散しています。しかし1991年に再結成し、日本ではあまり知られていませんが現在も活動しています(^o^)


●Let Me Out
 先にも述べたように、「I Saw Her Standing There」を意識したカウントが勢いがあってイイ! ベースとドラムスよりも、ギターとドラムスのアンサンブルがリズムをタイトにしています。

●Without Your Number Or Your Name
 このアルバムの中でも一番よく聴いた歌です。このアルバムの中ではよく練られたアレンジの佳曲です。

●Oh Tara
 それほど好きではないなぁ‥‥。「アルバムの中の1曲」でしかありません。

●(She' So) Selfish
 ドラムスがイイ! ハイハットがしっかりペダルで鳴っているのがよく聴き取れ、かなり本気でしっかり基本をマスターしているのがわかりますネ。最近のそこらのジャリバンドのドラマーはこのドラミングを聴くべきです。

●Maybe Tonight
 シンバルの逆回転や「In My Life」に似たパターンのドラミング、*バイオリン奏法のリード・ギターで、中期のビートルズを意識した歌です。
 イントロの左チャンネルから聞こえるギターのピッキングが、「♪But I ...」からの転調からは突然アコギに変わっているミキシングは、自然で楽曲によくマッチしたアレンジを生かしていると思います。
 *バイオリン奏法‥‥ボリュームを最低にしてギターをピッキングして、直ぐにボリュームを上げる奏法。ピッキング音が聞こえず、弦楽器のボウイング(弓で弾く奏法)のような音になる。ビートルズは「Yes It Is」「I Need You」「Wait」などの『HELP!』の頃のレコーディング・セッションで披露している。

●Good Girls Don't
 かなりヤバイ歌詞です^^; これもヒットしたのですネ。

●My Sharona
 シングルでは中間部のギター・ソロが編集で短くされています。たしかにシングルをラジオでOAしてもらうには冗長な感じがします。
 スネアのフラム(両手でタイミングを少しずらして「ラタッ」という感じに叩く奏法)が心地よい~(^o^)/
 私はこの当時はまだハード・ロックに目覚めてはおらず、KISSやDeep Purpleももう少し後に聴きました。ですから、この歌で聴けるような速いフレーズのギター・ソロには初めて触れたわけで、その細かいフレーズに驚いてしまいました(^^ゞ

●Heartbeat
 バディ・ホリーのカバー曲。『FOR SALE』でビートルズが「Words Of Love」をカバーしていることの真似か?

●Siamese Twins (The Monkey And Me)
 タイトルも歌詞もかなりヤバイ‥‥。単なる「アルバムの1曲」かと思っていたら、けっこうライヴで演奏される機会がある歌なんですネ。

●Lucinda
 アレンジとメロディがけっこうお気に入りの歌です。イントロとAメロが最高!
 ギター・ソロのエフェクトは曲調に合っていないと思います‥‥^^;

●That's What The Little Girls Do
 なかなかいいメロディを持った佳曲だと思います。「Good Girls Don't」とタイトルが紛らわしい‥‥。

●Frustrated
 当時からあまり聴いていません‥‥(^^ゞ 『RUBBER SOUL』の「Run For Your Life」のような感じの立場の歌ですかネ。


 収録曲はリード・ボーカルのDoug Fiegerが全曲を手掛けています。(数曲はリード・ギターのBerton Averreとの共作)わかり易いメロディを書く、素晴らしいソング・ライターだと思います。
 その彼は今年の8月に脳腫瘍の摘出手術を受けたようですが、術後の経過は順調のようです。

 そして同じく今年の8月、「My Sharona」のイントロでパワフルなドラミングを聴かせてくれたBruce Garyがお亡くなりになりました‥‥。享年55歳。