随分前にテレビで桜を次々に挿し木で増やしている老人の仕事を見たことがあった。

名人らしい。

彼はこれと思う桜の枝を口にくわえて山を降りすぐに挿す。

なんとなく覚えていたのだが

数年前に生け花で使った桜の小枝をまねして挿してみた。

口にくわえるのは乾燥を防ぐ意味だと思っていた。

今年初めて数輪の花をつけた。

これほどうれしかったことはあまりない。

今はもうすっかり葉桜だがちょうどピアノ越しに

その桜の木が見える。

弾きながら桜のことを思った。

すると突然桜が風に吹かれたように大きく揺れた。

まるで挨拶するかのように。

なんだか胸が一杯になってしまった。

私のDNAを知っている桜に私も挨拶をした。

大きくなってくれてありがとう。



木を育てる時にはその木の枝を口にくわえると

木はその人を記憶すると言う。

つい最近そんなことを知った。

本当かどうかは分からない。

でもあの瞬間私が桜と深い挨拶を交わしたことは事実。

私も桜もとても嬉しい気持ちがした感じは忘れられない。




その桜が私の大好きな桜餅の葉っぱに使われる

オオシマザクラだということも最近わかって、

とても嬉しくて桜餅を手作りして食べたいと思う。

そしてもちろん昔から好きだった葉っぱも食べようと思っている。