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私がまだ会社に入社が決まった頃、父の勧めで土地を買った。
その土地に父は1本の栗の苗を植えた。
その頃の父は、まだ若かったせいで、栗の木がどのくらい大きくなるものか。見当もつかなかったのだろう。
土地の隅っこ、隣家との境に植えた。
確かに家を建てる時に邪魔にならずに済んだけれど、栗の木はたちまち巨大になり、あっという間に二階建ての家の屋根まで枝を伸ばした。
しかも隣の敷地にも。
毎年枝切りするのが一仕事になってきた。
ある年、隣に家が建つ事になり、沢山の実がもうすぐ色づく頃に「枝を切ってください」と言われた。
色々な思い出がめぐったが、栗の木は根元から切る事にした。
大きな甘い実のなる丹波栗の木だった。
毎年自宅の栗で少しばかり渋皮煮を作ったものだったが、もう、買ってまで作る気に、なかなかなれなかった。
でも。栗の渋皮煮は、手間はかかるけれど、とてもおいしい。
マロングラッセ程甘くなく、渋も程よく抜けて、丸ごと食べられるのも嬉しい。
今年は買って作ってみよう。
大きな丹波栗で作って、久しぶりに父の事をゆっくり思い出してみたいと思う。