私が店をしたいと考えていたのは20年ほど前になる。

前にも書いたが「車椅子で一人で行ける喫茶店」を作りたかった。

そのための土地を探す間、勉強のために「天然酵母のパン屋」に勤めたり、友人から「貴石」を仕入れたり少しづつ、準備をしていった。

だから天然素材の洋服や、東南アジアの人の手作りアクセサリーや、紫檀黒檀の家具など、一見脈絡のない品揃えも、その時々に出会った人の縁から広がっていった物で、自分では違和感がない。

しかし永年の夢だった「店」がオ-プンしてもうすぐ1年になるのだが、20年前には予想もしていなかった展開なのだ。

アジアの雑貨にもアクセにも衣料にも関心のなかった長男が、「店」で毎週ケーキを焼きランチを作っている。

高校の教員を1年で辞めてしまい、大好きなケーキを作る側に回ってしまったから。

そして来年の3月には2年間の調理師学校も卒業。

今の私の願いは「店が長男の一生を支えてくれるように」

ということだけ。

毎日けんかばかりなのだが、彼は非常に優しいのだと言う事にも気がついた。



日曜日、炎天下、モーターボートを1日楽しんだ4人グループが家に帰ろうとしたところ、

出口に車が止まっていて立ち往生していた。

店の前が出口なので彼らの一人がうちの客じゃないか聞きにきた。

私は車の持ち主らしき人を探しにいったが見つからなかった。

何十分待ってもその車の持ち主は現れず、「相当頭に来てるよねえ」と私たちは心配していた。

その時長男は「あの人たちに私の作った紫蘇ジュースを持っていってくる」と言ってたくさん氷を入れて持って行った。

上半身裸で金のチェーンをつけた人がいる、男性3人女性1人のグループだった。



その直後、車の持ち主がのんびり釣竿を持って現れ、色々言われていたけれど、けんかにならずに済んだ。

彼はただ「この暑いのに大変だなあと思った」と言った。

私は彼が一人になった時にこの店で食べていってくれればそれで充分。

彼の優しさがあれば大丈夫なような気がしている。