まずはⅠ.Vision/Targetのあるべき姿です。
目標設定に関して多くの経営者が悩んでいるのは周知のことです。その多くは目標の高低についてでしょう。確かに非常に深く、悩ましい事柄ですが、そもそも一概に「正しい答え」はありません。目標達成・成果創出を通じ、その部署と当社において何を望むか、部下にどんなアクションを取ってもらいたいかによって高低を決めるべきです。例えば、①これまでの社員の認識や行動を一変させる必要があるのなら極めて高い売上や利益目標を、②バタバタしている状態からしっかりと利益体質を強化したいなら堅実な利益目標を、などです。一般に事業再生においては何より新たな思考様式・行動様式が社員に求められるわけですから、①のようにとてつもなく高い目標を設定します。
然しながら、私が本当にここで述べたいのは目標数値の高低の他にも重要なポイントが多くあるということです。以下3つ挙げたいと思います。
①達成する「意味」がある目標か
あるメーカーの品質管理部門のプロジェクトを行ったとき、目標の一つが「顧客クレームの発生率を0.0462%にする」というものでした。この0.0462…に何の意味があるか。数値根拠は前年比の25%減ということでしたが、厳しく言えば、達成したからといって「だから何?」という数値目標でした。「達成して会社、顧客、そして働いている部下たちにとってどんな意味があるのか」を問い続けた結果、当部署のマネージャーは「クレームゼロ」を目標に掲げました。最後は「顧客にご迷惑をおかけしないということはもとより、部下がこの仕事とともに当社の製品に胸を張って誇れる姿」を定性的な「目標」に掲げ、それを定量的な「クレームゼロ」に結びつけたのです。他にも、売上●●●百万円以上ならば地域のNo.1になるとか、利益を●●百万円以上あげると全部署の中でトップに立つとか。そういう数字の根拠があるとマネージャー以下の目標への思い入れが変わってきます(よって数値根拠をきちんと部下に伝えているかも重要なのです)。
その目標数字の裏にどんな意味があるか、マネージャーの想いが込められているか。あなたの部署の目標は、1年間の経営資源を費やして、みんなが歯を食いしばって努力して、それでも達成する価値のある目標でしょうか。
②優先順位は明確か
部署トップに求められるべきことは、「当部署にとって最も重視すべき指標は何か」に即答できることです。企業全体の状況、その中での当部署・事業の位置づけと貢献すべきポイント、部下への意識付け等々、様々な尺度から最も重要な「一つ」を規定できないといけません。換言すれば、これが一言で言えるということは、上記のことをきちんと理解しているということになるのです(多くのマネージャーが…ですが)。
更には、それ以外の目標の類の優先順位が明確なことも重要です。どんな部署でも求められる目標が一つだけというところはないでしょう。定量・定性含めいろいろな目標が同時並行して存在していると思います。ただし「あなたの部署の数ある目標を重要な順に教えてください」と聞いて、全員が同じ目標を同じ優先順位で答えられる部署に私はお目にかかったことはありません。結果、現場でどういうことが起こっているか。「売上を取るか利益を取るか」、「粗利、営業利益や事業利益、経常利益のどれを重視するか」、「どこまでコストを抑えるべきか」、「短期的な利益か長期的な利益か」、「どこまでこの顧客の『わがまま』に付き合うべきか」等々、平の一課員に至るまで社員は日々いろいろな「経営判断」をして行動しています。そうした判断を下す際に皆独自の価値観で行っています。そこに多くの機会損失が生まれています。
どこまで管理・共有すべきかは別に定めるとして、少なくとも共有された優先順位通りの部署の目標が、皆の頭に瞬時に浮かぶ。そんな部署が非常に「強い」組織と言えると思います。
③シンプルか・誰でも知っているか
最後に、シンプルであるかという点も重要です。あまりに「懲りすぎた」指標でも問題です。「これとこれを足してこの数値は除外した分子を、この数値とこの数値を加算した分母で割る。それが期末の2週間後にわかる」なんていう目標だと、皆何を目指しているか判らなくなります。大事なことは社員の日々のアクションがどうその目標に結びつくかが明確であるということです。
事業再生の場においてとてつもなく高い目標を達成する時、それはある種「お祭り騒ぎ」のようになるのですが、共通した特徴の一つとして、全部署員がどう動けばいいか、自分の一挙手一投足が業績にどう反映されるのかをきちんと理解している状態ということが挙げられます。
皆が目標に志向した状態になっているかは一番新米のパートの人が「部署の一番大切な目標は何ですか。あなたのどんな行動がそれに結びつきますか」という質問に答えられるかどうかで判ります。
最低限、上記の3つが充足されていなければ、「あるべきVision/Target」になっているとは言えないのです。