今回は最後の記事として、取りこぼしたネタをピックアップする。
また、ここで取り上げるアイテムは近年のものなので過去の商品データには存在しないものが多い。
まずは写真の話題から。
撮影風景を捉えたメイキングスチール。
ヘリコプターの飛行場面は、屋内に機体を運び込んで撮影されたようだ。
カメラの後ろに立つのがロメロ監督だ。
米版ポスターで世界的に有名なPlaid Shirt Zombie登場場面の撮影風景。
ほとんど見かけることのないレア写真だ。
次は、本編スチール。
アパートの場面で、死体置き場から溢れたゾンビがSWATに襲い掛かる。
板の奥に注目して欲しい。
撮影カメラを覗いたマイケル・ゴーニックらしき白人が見えないか?
見間違いでないなら、内部からの別テイクも存在したことになる!
もっとも映像的には不必要なショットなので、「ラフカット版」をまとめる以前のラッシュ段階で採用されなかったとも思われるが。
これらの写真が本編にあると思ってはいけない。
撮影合間に撮られた、宣材写真なのだ。ガスマスクの背景は、ショッピングセンターである。
無論本編中にこのような場面は存在し得ない。
ちなみに、日本で最初に発売されたLDジャケットにガスマスクのシルエットスチールが使用された時は、意外なチョイスに驚いたものだ。
後にGAGAのポスター等で引用した為、本作のキービジュアルとして世界的に通用する事となる。
しかし今思えば、これは当時先に発売された「ザ・クレイジーズ」との共通イメージを図った為の結果だろう。
果たしてそれがセールス的にプラスに働いたかは疑問だ(笑)。
最近ではリアルな立体物が商品化されている。
NECA社のCult CLASSICSシリーズからも本作のフィギュアが発売!
シリーズ3に初登場の‘Fly Boy’!
原型写真が本編スチールと変わらぬ完成度。
続くシリーズ4ではこいつが登板。
頭を撃たれた後なのはご愛嬌。
もう本物にしか見えない、シリーズ6でのちょんまげゾンビ。
緊急物資の箱付き!
こちらはシリーズ違いだが、暴走族の一員も商品化されている。
ピーターに撃たれて噴水に落ちたおかげで、立派なゾンビになれたようだ(笑)。
印刷物でも商品展開が続いている。
2002年にドイツで発刊された、究極本。ロメロの「ゾンビ三部作」を256Pに渡って解説し、この時点でのポスターや商品パッケージ等ほぼ完璧に掲載。
なんとショッピングセンター‘モンロービル・モール’の詳細まで記事になっている。
こちらは2004年発売の、本作のアメコミ版。全104Pオールカラー。
ダイジェスト的なストーリーながら、なかなか楽しめる。
でも登場人物の顔は似ていない(笑)。
レアスチールてんこ盛りの‘ゾンビ・トランプ’!
ファン必携だが、子供は怖がりそう…
こんなものもある。


一年中ゾンビと、にらめっこのカレンダー!
’07年と’08年を入手。中の使用写真は一部重複している。
音楽CDも続々と再発売!
20周年記念盤としてCINEVOXから出たものは、これまでの10曲から7トラックも増えての51分25秒。
長年欲しかったゴブリンの初収録曲もたっぷりと堪能!しかしながら未だに何曲かが未収録のまま。
確かにコンプリートじゃなく、スペシャルエディションだわな…
2004年には、ロメロが米版で使用した流用曲がついに初CD化!
ラストで流れる特攻野郎モドキが未収録なのは残念だが、これも立派な「ゾンビ」のサントラ。
実はこの商品、発売前は限定だの日本には入らないだのと言われていたのに、今でも入手出来たりする。
何やら怪しい‘THE ULTIMATE EDITION’と銘打った珍品。
カラーコピー同然の印刷物と、録音レベルもバラバラの内容。
特筆する点は、ロメロ版で使われたゴブリンの曲を流用曲と混ぜ合わせてある。
更に本編からセリフを抜き出して収録!26トラック 70分03秒。
2009年に日本国内で出たHQ盤CD。
’06年に再発売された20周年改訂盤と同じ内容なので、4曲目の頭の音が切ってある。
当時発売されたCINEVOXのLP原盤はゴブリンのメンバーが不満を感じる程にトラックダウンの仕上がりが悪く、米国のVarese Sarabande社が出していたサントラ盤に比べると音が平面的に処理されている。
ちなみに、最良の音質を誇る米盤LPの曲目は‘メインテーマ’と‘ZOMBI’が逆に収録されていた。
後のCD化の際に曲順が戻るのだが、音質の素晴らしさは失われてしまった。
元ゴブリンメンバーのクラウディオ・シモネッティーが主催するデモニアのCD付きDVD。
この商品、なんと「ゾンビ」から11曲を再演奏して収録している。
イタリアで発売された本作のDVD-BOX特典として付属していたものにボーナストラック3曲を追加した商品で、オリジナルをヘビメタ調にアレンジしたものもあれば原曲に極めて忠実なものもある。
映像の世界でも、ファンをよろこばせるものが登場!
2004年に米で発売されたULTIMATE EDITIONの特典映像から。

撮影から26年経った時点でのメインキャストは、どうやら生き残り組が若いようで(笑)。
映画を見ながらのコメンタリーもあり、本作を知る上での最重要資料なのだが、複雑な権利問題の為日本版に移植されることはついになかった…
撮影当時のダリオ・アルジェント、ジョージ・A・ロメロ、マイケル・ゴーニック、リチャード・P・ルービンシュタイン。
彼らの創り出した一本の映画が、時代を超えて今日も世界中で熱狂的なファンを生み出し続けている。
日本初公開当時のパンフレットに書かれた、増渕健氏のこの言葉は現実となったのだ。
ゾンビ~極悪の映像に栄光あれ!!

捕らえられた宇宙人のようなこの写真。実はこれこそが、幻のもう一つのラストシーンを証言するものなのだ。

背景はショッピングセンターの屋上に見える。頭部炸裂のテスト撮影をしているのが分かるだろう。
「ゾンビ」のオリジナルシナリオに書かれた最終ページは、実際に撮影されたとする説がある。
本作のメイキング作品「ドキュメント・オブ・ザ・デッド」の中で、監督のロメロ自身が語っているからだ。
‘絶望的な最後も、捨てきれずに残した’と!
一体それは、どんなものなのか。
<銃口をこめかみに当てたピーターは、もう何処へも逃げる気持ちなどなかった。
二人の友をその手にかけ、自分だけこれ以上生き残るつもりもない。
彼の心は折れてしまったのだ。
怪物たちが部屋に入った瞬間、ピーターは引き金を引いた。
自分自身に…!
ヘリで待機していたフランは、その銃声で全てを知る。
燃料計はほとんど空だ。
ヘリから降りた彼女は、発作的に天窓に登ると回転するブレード目がけて自ら飛び込んだ!
頭を砕かれたフランの身体は、ヘリのすぐ傍に倒れた。
屋上に出てきた怪物たちが、彼女の遺体に群がる。
その映像に被るようにエンドクレジットが流れ、やがて暗転すると同時にヘリのエンジンが止まった…>
最悪だ。
妊婦の自殺!
これだけはやってはいけないだろう。
しかしロメロは撮影だけはしたと言う。誰かの助言なのか、本人が気付いたのかは分からないが、希望の残るラストに変更したのは正解だった。
この他にも、「ドキュメント・オブ・ザ・デッド」には本作を知る上での貴重な証言が数多く含まれている。
撮影用シナリオは253Pあり、通常撮影では1Pにつき1分と考えられる。
これに関してロメロは、‘アクション描写がメインだから、完成しても二時間以内に収まるよ’と言っていた。
1977年暮れから行われていた撮影は、舞台のショッピングセンターがクリスマスの飾り付けをする12月は中断して編集作業を平行。
この時点で当初のシナリオはカバーしていたから公開することも可能だったらしいが、撮影再開分からは即興場面や新アイデアを取り込んだ為予定以上に長くなった。
撮影風景より。ショッピングセンターの営業が21時半に終わるので、撮影クルーは20時半から現場入り。
23時から翌朝の開店7時まで、正味7時間の撮影が行われた。和気藹々とした現場だったという。
撮影を担当するのはマイケル・ゴーニック。
監督とカメラマンは対等に近い発言権を持っていた。
上の写真は、削除されたと思われる場面の撮影風景。
「ドキュメント・オブ・ザ・デッド」で確認出来る映像だ。
暴走族にハンマーで殴られた二体のゾンビが、再びゆっくりと起き上がる場面。
倒れ掛かるテントに驚いた女ゾンビは、まだ死んでいなかったというわけだ(笑)。
更に別のメイキング映像に残された、弓矢で頭部を射抜かれるゾンビのシーン。
これらが「ラフカット版」に使用されていたのか、興味は尽きない。
撮影合間にくつろぐゾンビたち。複数のメイキングカメラが回されている。
エキストラの個人的なものまで含めれば、膨大な量のお宝映像が存在するのだろう。8ミリフィルムだけでなく、VTRで撮影されたメイキング映像も確認されている!
スタッフ・キャストが揃っての記念撮影。全員が本作のタイトルロゴ入りTシャツをお揃いで着ている。チームワークのとれた仲の良いムードが見て分かる。
1978年初頭、撮影終了。
しかし、本国アメリカでの公開が難航する。
X指定か90分程度にカットするか等でいくつかの配給元と衝突し、監督は一切の妥協をしなかった。
その為、配給先が決まらない。
資金を提供したイタリアでは’78年9月に本国よりも先行して公開。
日本ではイタリア映画として輸入され、’79年3月に封切られたのはご承知の通り。
結局アメリカは、一番遅れての公開となったのだ。
本作の編集作業中、ロメロ監督はこう発言している。
‘いっぱい撮って何に使うかは、編集の時点で考える。気に入ったショットが10コあっても、2コしか使えない時は残念だ’
別テイク等の映像素材がいかに多く存在したかの貴重な証言だ。
インタビューの中で「マーティン」の初編集版が2時間45分あったと語るように、どんな映画でも膨大な量のラッシュ編集から始まる。
通常はそこからネガ編集で上映時間に合わせた長さに調整されるので、一般の目に触れる事はない。
本作が他と違う点は、完成品としてのネガ編集が3時間近い最長の状態で存在したという事実なのだ。
昔の映画ならネガを切り捨ててしまうので、後に復元出来ない場合がほとんどだ。
例えDVDの特典映像で収録されても、ラッシュプリントから拾い上げた状態の悪い映像しか現存しない。
そこには音楽も効果音も、セリフすら存在しないものが多い。
最長に仕上げた理由は出資者側との契約の問題だったのかは定かではないが、このマスターネガは複製されてイタリアへ送られ、音楽や効果音も入れ替えられて再編集された。
しかしロメロは、実際この「ラフカット版」を認めていない。
彼にとっては、これこそが粗編集版の位置づけに違いないからだ。
例えばアルジェントの再編集では、アパートの場面で死体置き場から出てくるゾンビたちがカメラに当たって映像が揺れる部分まで使用しているが、後にロメロは短いカットでも切り詰めて修正している。
(アルジェントは音楽に合わせる為に細かい部分を切り詰める例もある)
米国公開までの長い時間の中で、ロメロは上映時間を考慮して「ラフカット版」のマスターネガに鋏を入れる。
それがカンヌ国際映画祭出品用に編集されたといわれる、「ディレクターズカット版」だ。
一部の情報ではこれを最初の粗編集版だと定義しているようだが、マスターネガは一つしかないのだから認識を誤っている。
でも、ロメロ自身はこのバージョンですら気に入らないという。
最終的に米国で正式公開されたフィルムは、127分まで刈り込まれていた。
映像作家としての彼が最も気に入り、自信を持っているのがこの最終形態なのだろう。
ファンの中にも、監督がベストな状態と考えたこの編集版が一番好きだと言う方もいるはずだ。
実際、冒頭のテレビ局や暴走族突入後の音楽のセンスは他のバージョンよりも印象深い。
さて、ではこの映画のマスターネガはどうなっているのか。
残念ながら、現在では127分に切られた状態と考えて間違いない。削除された映像がどうなってしまったのか、それはロメロのみぞ知る…
しかし、上映用プリントの作成は直接マスターネガからは行われない。万一を考えて一度デュープネガやマスターポジを作成し、そこからプリントするのが常識だ。
更にその間にはインターネガ等多くの複製を繰り返し、色調や輪郭は劣化するのが常であった。
今現在も「ディレクターズカット版」が綺麗な状態で見られるのは、127分に編集し直す前にマスターネガを複製して保管していたからなのだ。
全ての基礎となった「ラフカット版」も、高品質のデュープネガとして残されている可能性がある。
イタリアに送った時に予備を用意しただろうし、「ドキュメント・オブ・ザ・デッド」には実際のポジフィルムが使用されているのだから。
監督のジョージ・A・ロメロとプロデューサーのリチャード・P・ルービンシュタイン。彼らの二人三脚ともいえる理想的な関係が、様々な障害を克服し本作を世に送り出した。
最後に、本当にこの映画が3時間近くもあるの?!という方は、「ディレクターズカット版」139分に伊版にしかない映像を足したら何分になるか考えてみてほしい。
両方を勝手に編集した海外のインチキDVDでの総時間は、156分に及んでいるのだ!
今回の検証で導き出した場面が映像化されているならば、そこから更に延びるのは間違いない。
本作の最長バージョン、「ラフカット版」の封印が解かれる日。
この記事が、それを願う者たちの夜明けの光となれたなら幸いである。










































