ロジャーの死は、残された3人に大きな虚無感を残した。
どんなに物欲を満たそうとも、所詮彼らは籠の鳥なのだ。
数か月の時が流れ、全ての放送網が途絶した。
文明社会の崩壊を肌身に感じ、荒んでゆくそれぞれの心。
それでも彼らは、あらたに人間関係を築き直そうと努力していた。
しかし、過酷な運命が3人に牙をむく。
ピーター「バカな だまって聞いてろ」
突然入った無線通信に答えようというフランを、たしなめるピーター。
略奪者の集団が、避難民を装って今まさにこのショッピングモールを襲撃しようとしている。
日本ヘラルド映画版(以下、H版)の翻訳字幕において、一番シビレる場面。
これらは、ブルーレイの字幕よりも情報量が多い。
ピーター「トラックを動かして入って来るぞ」
スティーブン「下には亡者が何百人もいる」
ピーター「あいつらはプロだぜ」
ピーター「奴らは戦い抜いて来やがったんだ」
スティーブン「20人はいる 門を閉める」
スティーブン「門を閉めるんだ 我々に気づかん」
夜の闇を、爆音が引き裂く。
生き残った暴走族の集団が、ショッピングセンターを襲撃したのだ。
ゾンビの群れが建物を守る形になるが、邪悪な者たちは笑いながら殺戮を繰り広げる。
ロジャーが命をかけた防壁も突破され、店内は阿鼻叫喚の修羅場と化す。
乱入した族を、ライフルで迎撃するピーター。
族の銃弾に狙われ、追い詰められるスティーブン。
最上階の部屋で、じっと2人を待つフラン。
最後の夜が、明けようとしていた。
「何百人いるか知らんが心配はねえ」
暴走族のセリフは現場で大幅に増やされているので、シナリオにないものが多い。
上は、H版の字幕なし部分。トラックに乗り込んだ族が大喜びしている。
Shit, It's still taped up. It's all ready for us.
後のバンダイビジュアル版では、ここに初めて字幕が入る。
実は、トラックに乗り込んだ族が喜んでいる理由がある。
錯乱し、ゾンビに噛まれたロジャーはトラック停車後に後処理をする余裕がなかった。
運転席の電源配線は、切断されずにテープで巻いたままだったのだ。
だから、トラックはすぐにも動く。
「配線を繋いだままだ!まるで俺たちを待っていたみたいじゃないか!」
これが、正しい翻訳だ。
怪物相手の防御策は、より邪悪な相手の前では何の役にも立たなかった。
あまりに簡単に突破できるので、族も呆れているのが表情でも見て取れる。
最初の誤字幕が受け継がれ、ブルーレイでは以下のような内容に。
次は、H版とDVDでは正しかった字幕。
ブルーレイでは、誤字幕となる。
翻訳は、すべてを直訳すれば良いというものではない。
誰もが分かりやすいよう、映像に合わせた意訳も必要だ。
しかしこの場面に関しては、作品の深みに通じる部分でもあると考える。
いつの日か、正しい翻訳に戻されるのを願う。
「勝手なマネをするなよ 行け!」
リーダー格の族の威圧感を強調する、H版の字幕。
ピーター「よし畜生め これは戦争だぞ!」
ブチ切れた彼は、略奪者を血祭りに上げる。
さて、ここが全ての翻訳に対する僕の疑問点。
天井に登ったピーターに向かって、「見たぞ!」と叫ぶ族。
H版の字幕はこれだけだが、次に男は「チョコレートマン」という侮蔑言葉を発する。
しかしよく聞くと、大声でなく小さく吐き捨てているようではないか?
「クソッたれ」とつぶやくように。
僕には、もう一人の声が被っているように聞こえるのだ。
ピーターの、おどけた声のように。
状況的に、ピーターはまだこの上にいる。
彼は族の威嚇に、黙って息を潜めているような男だろうか?
実際、ソフトによってはこの部分の台詞を[SPEAKS INDISTINCTLY](不明瞭な言葉)と表示しているものもある。
「I see you」(見えてるぞ!)の後に、ピーターが返すとしたならどんな言葉だろう?
何にしても、族が口を動かしている映像なので「チョコレートマン」という字幕でも間違いではない。
実際、ピーターは何かを言い返しているのか?
ちなみに、ある映画で車のナンバープレート「I.C.U」に(訴えるぞ)と翻訳字幕を被せていた事例もある。
僕の長年の疑問、誰かにトドメをさしてもらいたいw。
















