死人狩り ~「ゾンビ」新世紀検証その9~ | スクリーンに雨が降る

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駐車場が再び静寂に包まれる頃には、もうすっかり日が暮れていた。

4箇所の出入り口は、大型トラックにより全て塞がれた。

怪物の群れは中に入ろうとしてひしめき合ったが、もはや出ることすら出来ない。

 

「問題は、あとどれだけ中に残っているかだ」

ピーターはスティーブと最上階の部屋で、図面を見ながら計画を練っている。

その近くで、ロジャーがフランの手当てを受けていた。

「頑張れそうかい?戦友」

心配そうに問いかけるピーターに、ロジャーはあっさり答える。

「やるべき事を早く片付けちまおうぜ」

 

本当は耐えられない程の痛みだった。

だが彼は、ピーターの前では弱音を吐きたくなかったのだ。

フランとロジャーを残し、ピーターはスティーブを連れてダクトの中を移動した。


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銃砲店の天井通気口から降り立つ二人。

彼らは、持てるだけの銃と弾薬をかき集める。
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ライフルのスコープを覗きながら、ピーターが言った。

「お前ら待ってろよ、すぐに行くぞ!用意は出来た」
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最上階の部屋に戻った彼らは、完全武装していた。

弾薬入りのベルトをぶら下げ、四人それぞれ腰に二丁拳銃のホルスターとライフルを肩に掛ける。

その姿は、少々マンガ的でもあった。

ピーターはロジャーを背負って非常階段を下りると、補給物資を運んだカートに乗せた。

 

廊下から二階のバルコニーに出た四人は、一度立ち止まると互いの顔を見た。

命がけの戦いだ。

果たして本当にやり遂げられるのか、どこまで走り抜けられるだろうか。

 

しかし、彼らの決意は変わらなかった。

スティーブとフランが、先頭を走った。

ピーターが、ロジャーのカートを押して後に続く。

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スティーブが鍵を開ける間、ピーターは高性能ライフルで迫る怪物を狙い撃つ。

ロジャーもカート上から数発撃ったが、上手く当たらずもどかしい。

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フランが店内に入り、続いて全員が中に入るとガラスドアを施錠する。

怪物の群れが密集する頃には、四人は一階に向かっていた。

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「乗り心地はどうだい?」

エレベーターのボタンを押しながら、ピーターがロジャーに聞く。

「いいとは言えないな」

ロジャーはユーモアを交えて答えたが、ひどく痛むことが見てとれた。

 

中に乗り込むと、ピーターはロジャーの肩に手を置く。

「なぁ、俺はな…」

彼の声は、少しかすれていた。

「わかってるよ、何も言うな」

ロジャーも、ぎこちなく答える。

 

二人は、まさに戦友だった。出会ってからの時間は短くとも。

そこには、言葉にはならない何かがあった。

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エスカレーターで一階に降りたスティーブとフランは、プロパントーチに火を点けて準備していた。

合流したピーターは、ガラスドアの鍵を外すよう指示する。

4箇所の出入り口を完全封鎖してから、中の怪物を一体残らず処分するのだ。

入り口までの長い通路を、無数の怪物が蠢いているのが見える。

 

「遠すぎるわ!あまりに危険が大き過ぎる」

フランが、恐怖をおさえながら反対した。

「やめるわけにはいかん、全てのドアを施錠するんだ」

ピーターの言葉は、男たち皆の決意でもあった。

「君はここに残って援護してくれ」

スティーブが彼女を気遣う。

 

突然、フランの目が輝いた。

「自動車!」

彼女は、広場に展示されていた一台のワゴン車を指差す。

ピーターはすぐに、フランの考えを読み取った。

 

「エンジンを動かせるかい?」

ピーターに聞かれたロジャーは、ニッコリ笑った。


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ガラスドアが開かれた。

スティーブとフランが、プロパントーチの炎で前列の怪物を威嚇する。

ピーターはその隙間を縫って、ロジャーのカートを押して出た。

 

「ドアを閉めろ!」

ピーターが叫ぶ。

怪物がなだれ込もうと押し寄せる中、続いて外に出たスティーブはフランに鍵を渡すのを忘れていた。

慌てて腰から外そうとしたが、ベルトに絡んで離れない!

怪物たちが、彼の背後に迫る。

 

ピーターはフランの叫びを聞いて立ち止まり、後ろを振り返る。

ガラスドアの周りには大勢の怪物たちが立ち塞がり、何が起きたのかよく見えない。


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「おい、どうした?そこはいいからこっちへ来い!」
ピーターが、スティーブに向けて怒鳴る。

 

苦痛を堪えながらもロジャーは、目前の怪物に向けて数発撃つが命中しなかった。

周りを怪物たちに囲まれ、ピーターは再びロジャーの乗ったカートを押して自動車を目指す。

 

一方スティーブが鍵をベルトから引き離し、ドアの隙間からフランに渡す。

同時に、背後から怪物が掴みかかる!

間一髪で魔手を逃れた彼は、ピーターを追って全速力で走った。

 

フランはガラスドアに施錠すると、男たちの行方を見守るしかなかった。
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ピーターは展示車両の前でカートを止め、続々と集まる怪物を狙撃する。

ロジャーは全身の力を振り絞り、カートから降りると車の後部ドアから上半身を潜り込ませる。

 

その時、一体の怪物が死角から飛び出し、ロジャーの足の傷をどす黒い爪で抉った!

白い包帯から、真っ赤な鮮血が吹き出す。

あまりの苦痛に、ロジャーの悲鳴が響く…

ピーターは至近距離から、その怪物の頭部を吹き飛ばした。

 

突き刺すような痛みと戦いながら、ロジャーはなおも運転席で電源配線を繋ぐ。

 

怪物の群れの中を駆け抜けたスティーブが、後部座席に乗り込んだ。

 

今やコンコースのあらゆる場所から、、怪物の大群が彼らめがけて押し寄せている。

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運転席に座るロジャーの身体は、汗と血で濡れていた。

歯をしっかりと噛み締めて、アクセルを踏み込む。

車はコンコースへ、直接向かって走り出す!

苦痛のあまりロジャーは一瞬、車のコントロールを失いもう少しで大理石の柱にぶつかるところだった。

からくも車を立て直し、目指す入り口の方へ向かう。

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ガラスの扉は大型トラックで塞がれてはいたが、怪物の一部はその下をくぐってなおも入り込もうとしていた。

ピーターとスティーブは車を降りると、ドアを開けようとしている怪物に向けてプロパントーチの炎を浴びせる。

無理にドアを閉めると、挟まっていた怪物の手が千切れて落ちる。

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スティーブは前に見たことのある、中世の地獄の門の壁画を思い出した。

一瞬、自分は何をしているのだろうかと思いかけたが、すぐにそんな考えは心の中から追い出す。

 

完全施錠後に警報装置をセットした二人が車に戻ると、ロジャーは次の入り口に向かった。

 

 

フランは店の内側から、三人を乗せた車がコンコースを走り去るのを見送る。

同じ仲間として行動するつもりだったのに、結局また自分ひとりが安全な場所に残された。

トランシーバーからスティーブの声が響く。

「作業は成功した、順調だよ!」

 

彼女は、小さなため息をついた。
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車は、すれ違う怪物たちを次々と狙撃しながら突き進む。

その中の一体が無謀にも立ち塞がったが、無慈悲に跳ね飛ばされ床に叩きつけられた。

二番目の入り口の前に停車すると、再びピーターとスティーブが飛び出してドアに鍵を掛ける。

コンコースを見渡すと、怪物の数は更に増えたようだった。

 

「どのくらい中にいるだろう」

不安そうに聞くスティーブに、ピーターが平然と答える。

「そう多くはないさ、簡単に始末出来る。ドアを全て閉めてから、狩りを始めるぞ」

 

スティーブはゾッとして、ライフルを構える大柄なSWAT隊員を見上げた。

引き金に力を入れる彼の眼は、残忍な光を帯びていた。

ピーターが覗くスコープの中で、怪物の頭が砕け散る。

スーパーガンの威力を楽しんでいた。

 

彼は、微かに笑っていた…


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巨大なショッピングセンターの中で、銃声が響く。

その音に引き寄せられた怪物たちが、車を追ってコンコースをふらふらと歩いて行く。

すでに百以上の死体が散らばり、その中には血を流しながらも再び起き上がり歩き出すものもあった。

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フランは、ガラスドア一枚を隔てた地獄絵図をぼんやり見ている。

一体の怪物が、群衆と離れて彼女の方に近寄って来た。

虚ろな目が合った。

赤子のような目だと、彼女は思う。

食欲という本能だけで動く彼らにも、人間らしい部分は残っているのだろうか?

 

銃声が近付いてきた。

フランの前に座り込んだ怪物は、襲いかかる様子もなくただじっと彼女を見つめている。

 

‘…あなたも、孤独なのね…’

フランはガラス越しに、寂しい笑みを浮かべた。

 

 

 


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~column~
普通に見ているとあまり意識しないが、ロジャーはあの傷で更に2箇所の入り口をトラックで閉鎖したわけだ。

 

無論、それらの描写も映像化もない。

四人が武装して階段を下りて来る描写があるが、映像としての構成では必要性がない為撮影されていないだろう。

ピーターがガラスドアに入るまでにライフルを撃つ場面で、伊版では「ラフカット版」の別の部分から頭部破壊の映像を抜き出し、編集を変えて米版よりも一人多く倒している。

メイキング映像を見る限りでは、終盤の大殺戮場面からのようだ。


さて、ここでネタをひとつ。

伊版の原版が「ラフカット版」なので、米版と同じ音楽がかすかに聞こえる場所があると前に書いた。

そして今回、なんと米版でも同様な状態を確認出来たのだ。

「ゾンビ・新世紀完全版DVD-BOX」のディレクターズカット版で、2箇所目の入り口に車を停めるところ。

日本語吹き替え音声で聞いて欲しい。

ゴブリンの曲の裏でかすかに聞こえる音楽こそ、ロメロが最初に選曲した「ラフカット版」での差し替え前のものと考えて間違いない。

 

磁気テープの音移りという、アナログ時代ならではの珍現象なのだろう。