空港の弁当屋さんで見つけると、必ず買う。

パン屋の安売りタイムで残っていたら、必ず買う。


嬉しそうに頬張るが「美味しい~♪」と言ったことはない。

だけど大好物らしい。うちの奥さんの。


昔食べた旨いカツサンドが忘れられず、その幻を追いかけている。

ならば俺が喜ばせてやろうと、ガッツリ作った。


出来たてのカツサンドは最高だ。

少し甘いソースをかけたサックサクの熱い豚カツ。

シャッキシャキの冷たいキャベツ。

バターとマスタードを塗ったパンでギュッと挟む。耳はあえて落とさない。

マスタードは少し多めが好みだ。


妻は頬張り、食べる。嬉しそうにもう一口。

笑みがこぼれ、「美味しい~♪」のフレーズが飛び出した。

子供も喜んで食べている。マスタードは塗ってないから大丈夫。

大喜びで食べている。

俺も喜び、作る。嬉しくなって、また作る。




ところが、ある日のこと。

「ママってカツサンド、大好きだよねぇ~。」と子供と話していると、

「えっ?私が?そんなに言うほどでもないよ?」と言う。


さらに他の日には、「カツサンド作るの好きみたいだから、これ買ってきたよ。」と

お惣菜の豚カツを買ってきた。にっこりと笑っている。

あなた、大好物でしょ?と言わんばかりだ。



どういうことだろう?

忘れている。忘れられているじゃないか!!俺がカツサンドを作る訳が!

俺はカツサンド作りにハマったクッキングパパではない。

しかも俺が作ったのを食べて「大好物」から「結構好き」へと、ごく自然に

降格されているではないか。



そして、ハタと気付いた。

「幻」と張り合ってはいけないのだ。

「幻」は無限。まるで別物だった。




妻のそれは、今は亡きお義父さんの作ったカツサンドだった。


俺の子はいつか、俺のカツサンドを幻と追い求めるであろうか。