儀武さん、ありがとう。さようなら。
58号線を北に向かって車を走らせる。
右に普天間基地が見えたら次の信号を左折。
すぐ右側にお店が見えると、
なぜだか久しぶりに実家に帰った時のような、
ちょっとした照れと安心感のようなものが湧き上がってくる。
宜野湾市伊佐のタコス屋さん「メキシコ」。
メニューはタコスのみ。
オーダーする時に客が口にするのは、何人前かということと、
テイク・アウトなら、それを伝えることだけ。
コロナ・ビールは冷蔵庫から自分で取る。
そして、しなやかなトルティーヤのタコス。
沖縄の空と空気にピッタリの絶品だ。
でも、「メキシコ」の主役はタコスだけじゃない。
店主の儀武息次さん。
心優しいド不良のオヤジだ。
通い始めてから数年が経った頃、儀武さんは三線を始めた。
最初はたどたどしかった。
「久しぶり!」と店に入ると、
オーダーも取らず、民謡のCDをかけて、
「ここ、どうやって弾いてるの?ゲレン、教えて」
などと言う。
「こうじゃないかな」と教えると、「ああ!」と言って弾く。
それが、次に店に行った時には、
もう一流の民謡歌手のように三線を奏で歌っていた。
沖縄、そして、儀武さんの人生の悲しみと喜びの全てを
編み込んだような、そんな歌だった。
儀武さん、今度沖縄に行ったら、また寄るよ。
いつもの通り、午後の中途半端な時間に。
そうしたら、店も空いてるし、
またゆっくりゆんたくして、
一緒に「ちんぼーらー」でも演って、ね。
儀武さん、ありがとう。さようなら。
ずっと忘れません。