おとなもなだめるフィードバック。 | 悠々自適に綱渡り
翻訳会社でお仕事をしていて、とても気を遣う業務のひとつに、

翻訳者へのフィードバック(翻訳者が納めた翻訳に対する評価を返すこと)があります。

トライアルに合格して登録した翻訳者も、実際に翻訳をお願いすると、ワードやエクセルの扱い方が上手でなかったり、コンディションが良くなかったのか、とんでもない誤字・脱字や誤訳をしたりする場合があり、そういった場合に、私はチェック者の立場から、フィードバックを返します。

上のような理由で、フィードバックはたいていの場合、「ダメ出し」とその「改善策の提案」が主な内容となるため、

1.「私にはひとつの落ち度もない」と逆ギレする翻訳者

2.前向きに受け止める翻訳者

3.ひどく落ち込む翻訳者

といった、主に3つの反応に分かれます。それで、たいていの場合、

1番目の翻訳者からは、一応言い分を聞きますが、客観的に見ても非があるのに認めず、引き続き逆ギレが続く場合は、とりあえずその後の注文は控えます。今後も同じことの繰り返しになる可能性が高いためです。3年B組ではないので、体当たりで解決しようとはしません。

2番目の翻訳者は、フィードバックの意味をわかってくれているので、印象がよいです。次の回で改善されていれば、さらに嬉しいです。改善されていれば、ですが(^_^;)

結構気を遣うのは、3番目の翻訳者です。学生時代、本人は頑張って仕上げたつもりなのに、添削結果が意外と悪かったときの定期試験を思い出してください。

「訳抜け」「誤訳」「誤字・脱字」「直訳過ぎて意味不明な翻訳」・・・気を抜くと様々なポイントに落とし穴があり、どれも減点対象になってしまいます。

先日、そのような3番目タイプの翻訳者に、「ダメ出し」とその「改善策の提案」をしたところ、次のようなメールが返ってきました。

文面上は前向きに受け止めているようですが、それよりはショックの方が多かったんじゃないかな、と思い、今後モチベーションが下がってしまっては元も子もないため、一応こう返信しました。

フィードバックをされて、気分がよい人はいないと思うので、外注先に過ぎない翻訳者に対して、どこまで厳しく言うかは、本当にさじ加減だとは思いますが、結局のところ、

「お互いにとって利益になるように、前向きに受け止め、真摯に改善に努めてほしい」

というメッセージは、誤解のないように伝えていかなければ、と思っています。

結局、その翻訳者からは、下記のメッセージをいただきました。

今は、先日落札した翻訳プロジェクトのメンバーとして、フルタイムで翻訳に励んでくださっています。

外注する側、される側の関係なので、「怒鳴りつければいい!」と思う人もいるかもしれませんが、私は家庭教師として、嫌がる子供達をなだめながら勉強させてきた経験もあり、

「追い詰められた精神状態で作業をするよりも、負荷のかかっていない、前向きな気持ちで作業をしてもらった方が、きっとよい納品物が仕上がる」

と信じてやみません。だから、この翻訳者のように、前向きに取り組む決意を固めてくれると、

「フィードバックのし甲斐」

を感じます。もちろん、今後改善されないと困りますが(^_^;)

こういったフィードバックは、翻訳会社に限らず、「改善」や「教育」の必要な現場では、口頭や文書で必ず行うものだとは思いますが、まぁ、何というか、

エネルギーを使いますよね。だから、

フィードバックし終わった後のメシは、格段とうまいのです。結局、そこなのよ(^_^;)

(終わり)