ここまでで、電圧を継続的に記録する装置の中身はできました。これをケースに入れて観測サイトに設置するわけですが、実はこれが奥が深い。どのようなケースにどのように入れ、どこに置くのか、センスと経験が必要なところです。管理人の経験からいうと、原則は

 

(i) 可能なら大きなケースを使う。小さなケースにする必要があるなら、なるべく実験室で全て組み立ててから行く。サイトで細かい仕事をしようと思うな。

(ii) 小さなケースでぴったり作ると、例えば後ほどチャネル数を増やすといった拡張作業は非常に困難

(iii) 端子台は可能なかぎり接続しやすいものに。ネジ式よりもPCBターミナルブロックなどのほうがよい。

(iv) 金属製よりもプラスチック製のほうが扱いやすい(ケーブルを通す穴を空けるときなど)

 

とにかく、サイトで細かい作業はなかなかできるものではありません。地盤工学への適用として、法面で作業することも多いと思いますが、勾配が1:2を超えると、立っているだけでも足首に負担がかかります。そして、無風・快晴の日ばかりではありません。天気が良すぎると、まぶしくて細かいものが見えないこともあります。細かいネジなど回していると、あっという間に日が暮れます。多少の雨ならタープを組み立てて作業ができますが、雪だと横から入ってきます。

 

上記(i)に関して、下の写真はプロに頼んで構成してもらったロガーとボックスです。かなり大きくて余裕があることがわかります。

 

 

一方、これは管理人が自作したものです。コンパクトにまとめたという意味で、搬送その他は楽でいいのですが、原位置での作業は(この状態になるように接続するのは)大変でした。連れていった学生がずっと文句を言っていました。

 

 

 Amazon・Monotaro・オレンジブックなどで「プラスチック ボックス」などと検索すると無数に製品がヒットするので、好きなものを選べばよいのですが、いくつか紹介します。

 

・防水プールボックス

 未来工業などのものが多く出回っています。かなりコンパクトなシステムとして収めることができます(ただ、上記の通り、けっこう大変)。たとえばこれは未来工業製の100mm×100mm×75mmのもの。写真のようにぎっちり詰めることになりますが、カバンに入れて持ち運べます。中に取付板などはないので、自分で何かしら作ることになります(内壁にユニバーサル基板を直接ねじ止めする、あるいは100円ショップで買った木板をちょうどよい大きさに切って両面テープで貼って取付台にする、など)。

 

 

 

・TAKACHIのプラボックス

 こちらはいろいろなサイズで売っています。

タカチ電機工業 BCAP型防水・防塵開閉式

https://www.monotaro.com/g/00965864/?t.q=%82a%82b%82%60%82o%8C%5E%96h%90%85%81E%96h%90o%8AJ%95%C2%8E%AE%83v%83%89%83%7B%83b%83N%83X

 

ちょうどよいスケールがなかったので傘と一緒に。

 

 

こんな小さいものもあります。

 

 

プラスチックなのでケーブルを通す穴が開けやすくよいです(底面の部分)。

 

 

取付台は別売りです。

https://www.monotaro.com/g/00965875/?t.q=%82a%82b%82%60%82o%8C%5E%96h%90%85%81E%96h%90o%8AJ%95%C2%8E%AE%83v%83%89%83%7B%83b%83N%83X

 

 

100円ショップの木板がぴったり合う場合もあります。100円ショップの木板はカッターで切れるほどフニャフニャで強度は全くありませんが、その分、切削は楽で、ちょうどこのような用途に向いています。

 

 この他、「対候性」と書いたボックスも多く売られていますが、これらは必ずしも「防水」を意味しないので注意してください。当然ですが、ゴムパッキンのないケースに防水効果はありません。ぴったりと閉まっているように見えても、雨水は侵入します。

 

 ケーブル用の穴は、当然、雨水が入らないように下の面に開けますが、ケーブルを通したらエアコン用パテなどで隙間をなるべく塞いでおくとよいです。そうでないと虫が入ります。北海道ではマイマイガの幼虫の巣ができたり、場所によってはスズメバチが入っていたりします。蜘蛛はしょっちゅうです。

 

 

 こういったケースは数千円はするので、自作ロガーは、中身の部品すべて足し合わせてもまだケースのほうが高い、というのは冗談ではないというのがわかります。