最初からこれを使えって話ではあります。太陽光パネルで充電池を充電しながら使えば、地下でもない限り恒久的に給電を行うことができます。ただ、露出部品が増えますので、盗難・いたずら・風雨への注意が必要になります(タイで観測をしたときは、金属部品が見えたら1日で盗まれると現地の人に言われました)。

 

 太陽光パネルの使用については、あまり詳しくないのですが、ある程度常識的なことをまとめると

・太陽光パネルの出力は常にふらつくので、バッテリーを介してロガーに給電する必要がある。

・バッテリー(充電池)には、リチウムイオン(ポリマー)電池・ニッケル水素電池(エネループ・充電式エボルタなど)・鉛電池(車やバイクに使うもの)などが使える

・過充電や過放電を防ぐために、バッテリーチャージャー(チャージコントローラー)が必要。

・特に、リチウムイオン電池は爆発の可能性があり、ヘタな充電をしないように注意が必要

このあたりのことはどこにでも書いてあると思うので、ここでは具体的な製品とつなぎ方を紹介します。

 

鉛電池を用いる場合

 鉛電池は基本的に12Vです。小型のもので7Ahくらい(写真左)、やや大型で12Ahくらい(写真右)の容量があります。これだけでも相当な期間の稼働が可能なわけですが、サイズが大きいのが難点です。ただ、電圧が高いため、大きな印加電圧が必要なセンサーに直接用いることができるなどのメリットもあります。寒冷地仕様などいろいろありますが、通常のものは5千~1万円くらいで買えます。

 

 

チャージコントローラーは違う種類のものがいくらでも売っていますが、例えばこれ。

 

 

この製品はType A USB端子(この前まで全てのPCについていた、いわゆる普通のUSB端子)がついており、ここから5Vを引き出すこともできます。ちなみに太陽光パネル・鉛電池と合わせてもっていると、災害のときにスマホの充電に役に立ちます。2018年胆振東部地震のときにも、部屋にあったスペアを使いました。

 

 太陽光パネルは、ちょうどよい大きさのものを見つけるのが難しいですが、例えばこれ。

 

 

電線をテスターにつないで太陽に向けると、20Vくらい出力されるのがわかります。

 

 これらを、以下のようにつなぎます。

 

  

これで、太陽光パネルを南上方に向けておけばよいです。こんな感じに。

 

 

もちろん、防水対策を忘れずに(1年以上動いていたものが突然止まったときがあり、現場に行ってみると、太陽光パネルからの電線に雨水が入ったようで、ボロボロになっていました)。少し計算してみたことがありますが、平均して1日に1時間でも晴れれば、前回までに作ったシステムを恒久稼働するのに十分な電力が得られます。鉛電池のバファーがあるので、仮に1か月くらい太陽が全く出なくても、その後快晴が数日続けば大丈夫です。秋田で2年ほど運転していますが、数日ごとに鉛電池は満タンに戻っています。

 

リチウムイオン(ポリマー)電池を用いる場合

 リチウムイオン(ポリマー)電池用のチャージコントローラーもたくさん、しかも安く売られています。しかし、管理人はこれらを使ったことがありません。というのも、裏ワザがあって、ホームセンターで売っている防犯LEDライトを買えば、1000円もせずに太陽光パネル・チャージコントローラー・リチウムイオンポリマー電池と、これらを入れるケースが全てついてくるのです(人が通ったときだけ人感センサーもついていることが多いです)。

 

 

買ったら、まずケースを開けます。製品によって違うでしょうが(管理人が試したのは、上の製品ではなく、Viva Homeで1個980円買ったオーム電機社製のものです)、この例では、人感センサーが反応したときだけLEDに電力供給するような制御チップと回路が付いています。これを外して(下図のように切断して)、下図のようにつなぐと使えます。

 

リチウムイオンポリマー電池なので出力は3.7Vです。よって、5V系であるArduino UNOには使えません(直列つなぎで2つ使わない限り)。Pro Mini 3.3Vを使ってください。フル充電すると4Vを超えるので(天気が悪い日がよほど続かない限り、4.0-4.2Vの間で推移します)、RAW – GND間に印加して給電するのがよいです。

 

 サイズとしては鉛電池をつかったシステムよりも格段にコンパクトですが、前回までのシステムを恒久的に給電する能力があります。家のベランダで1か月ほど稼働させていますが(下の写真)、リチウムイオンポリマー電池の電圧は全く下がっていきません。エネループだとたかだか数か月しか持たないとはいえ、せいぜい1~2mAの消費なので、小さい太陽光パネルでも十分まかなえます。

 

 

 これで、省電力・長期稼働のテーマは終わりです。スリープや電源管理モジュールを使ってできる限り省電力化を行うとともに、近場で観測するならエネループを数か月おきに交換、遠隔地なら市販の防犯LEDライトをハッキングしたものを使う、という方針で、長期観測ができます。

 

その他

 ニッケル水素電池用のチャージコントローラーも存在しますが、メモリ効果(使い切らないのに充電すると実質容量が低くなってしまうこと)が大きい電池であることを考えると、このようなつぎ足し充電によって長期間使うのにはあまり向いていないかもしれません。その他、エナジーハーヴェスティングといって、例えば振動や温度差など自然エネルギーを利用した給電方法が考案されていますが、実用上、なかなか太陽光に替わるものはないでしょうね。ちなみに、スマホのモバイルバッテリーに太陽光パネルがついた製品もありますが、第6回で説明したように、過充電防止機能が勝手にはたらくため、そのまま使うのは難しいようです。