ジョーンズさんは会社の社長だ。
ジョーンズさんの会社では自動車の製造販売で儲かっていた。
会社の経営は右肩上がりだ。
ジョーンズさんは喜んだ。
でも、ジョーンズさんには少し不満があった。
製造、販売の現場に顔を出すことができなかったからだ。
ジョーンズさんはお客さんに接することが好きだった。
ジョーンズさんの会社はもともとはジョーンズさんが始めた小さな自動車修理工場だ。
ある日、ジョーンズさんは気がついた。
ジョーンズさんの会社の自動車の販売台数は国の自動車総販売台数に近い数字になっている。
もし、営業部門が上げる数字を信じるのであれば街中にはジョーンズさんの会社の車ばかりが走っていることになる。
ところが、ジョーンズさんが街を見渡してもジョーンズさんの会社の車はほとんど走っていない。
ジョーンズさんは不思議に思った。
ジョーンズさんは営業部門に問い合わせた。
営業部門は数字に間違いはないと答えた。
ジョーンズさんは安心した。
ある日、ジョーンズさんの会社は倒産した。
処分できないほどの在庫を抱えすぎたのだ。
ジョーンズさんの会社の車は売れていなかった。
ジョーンズさんに上がってきた数字は営業部門が捏造した数字だった。
実際には自動車はほとんど売れておらず、在庫ばかりがどんどんと膨れ上がっていた。
ジョーンズさんはこの事実を知って納得した。
街中にジョーンズさんの会社の車が走っていないはずだ。
会社が整理されてジョーンズさんにはわずかなお金が残された。
ただ、会社もジョーンズさんの大きな家もたくさんの不動産も全てがなくなってしまった。
借金が残らなかっただけでも幸いだ、とジョーンズさんは思った。
ジョーンズさんは奥さんと二人で小さな自動車修理会社を始めた。
久しぶりの現場での仕事だ。
倒産したジョーンズさんの会社ももともとは街の小さな自動車修理工場だった。
お客さんと自動車のことで直に接する。
儲けは少ないけれど、お客さんの顔が見えるとても仕事は楽しい。
従業員はジョーンズさんの奥さんだけだから、嘘の報告をする人間は誰もいない。
こういう商売をしなくてはいけなかったんだな、とジョーンズさんは思った。
ジョーンズさんは社長をやっているころよりも幸せだった。
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シジン