クリュッグ本社を初めて訪問したのは確か1986年だったはず。香港で手に入れたクリュッグ・コレクションの肩バッジを持参し、Certifications を獲得するために行ったのである。それらのボトルはすべてマグナムであり香港のレミー・二コラのカタログ外商品であった。当時の価格はあまり記憶に無いが恐らく 2,200~3,000HK$日本円に換算すると5万円から7万円程度だったと思う。

 

このクリュッグ・コレクションが有名になってしまったのはそれから数年後の事である。何でも有名になると価格が跳ね上がるのがこの世の常であり、今ではとんでもない価格になってしまった。高くなってから飲もうとするのは本来のクリュギストではない。

 

さて現在の有名シャンパーニュのお値段はハッキリ言って異常としか言えない。

 

クリュッグのグランド・キュヴェは当時の定価で2万円程度、ヴィンテージはそれより5千円から高くて1万円アップだったように記憶しているが、今ふとネットの広告を見るとヴィンテージの1本が15万円とか20数万円になっているではないか。

 

葡萄の原価は昔も今もそんなに変わっていないし、現にグラン・クリュのコミューンでシャンパーニュを生産している蔵のタリフは15~20€ 程度である。オーブに下ればもっと安い。8から10€で出荷する生産者もまだまだ大勢いるはずだ。

 

高ければ旨いと信じて疑わない人が大勢居られるからこんなとんでもない流通価格になってしまったわけである。味の良し悪しと価格が妥当であるかどうかを判断する能力のある人たちが少な過ぎる結果ともいえる。飲み手側の常識を疑われても仕方ない状況である。