ワインの裏側表側 サルジェ・ド・グリュオー・ラローズの2008年です。


2008年というと記憶に新しいはずですね。


水みたいに薄いボージョレ・プリムールを飲まされた方は印象に残っているはずです。


ボルドーとローヌではかなり気象条件が違うのですがフランス全体的に見て葡萄の生育に恵まれなかったことは確かであります。


ちなみにこの年のブルゴーニュ、2つ程の銘柄を除き私は全く買いませんでした。


ワインは農産物ですので毎年同じように美味しいワインが出来て来るという確証など存在しませんが、契約して買う側は毎年一定量を確保しなければその権利を他に取られてしまいます。


ワインを輸入するという仕事、特に生産農家と直接取引する会社の負うリスクは大変なものだと思います。


ボルドーの場合、生産者直売もありますが殆どの有名銘柄はネゴシアンがその窓口になっているため、そういったリスクは軽減されるはず。試飲して気に入れば買ったら良い訳です。


さて1855年の格付け第2級のシャトー・グリュオー・ラローズのセカンド2008年ヴィンテージ、どんなワインに仕上がっているのでしょうか。


ワインの裏側表側 前置きが長くなりますが、例によって表のラベルはINAOの定めた要件を満たしておりません。従って裏ラベルであるこちらが正式なエチケットとなってしまいます。

ところでアペラシオン・サンジュリアンですがその範囲はサンジュリアン・ベイシュヴェルのコミューンだけではなくキュサック・フォール・メドック、そしてサンローラン・ド・メドックの一部を含むことが法律で決められています。

ならばサンジュリアン・ベイシュヴェルのコミューンはアペラシオン・サンジュリアンだけかと思われがちですが、実はアペラシオン・ポーイヤックに属する畑も一部分含まれています。

こちら をご覧下さい。サンジュリアンに関する法律は1936年に定められてから追加条項はあるものの大きな変更はありませんね。

こちら が最新の情報です。

第1章第5条に葡萄品種に関する記述がありますがコピーさせて頂くと

V. ― Encépagement

1° Encépagement :
Les vins sont issus des cépages suivants : cabernet franc N, cabernet-sauvignon N, carmenère N, cot N (ou malbec), merlot N et petit verdot N.

2° Règles de proportion à l'exploitation :
Pas de disposition particulière.

カベルネ・フラン、カベソー、カルメネール、コット(マルベック)、メルローそしてプティ・ヴェルドーが使用出来る品種でありその割合についての規定がないことからカルメネール100%でワインを造ることも可能であります。

さて生産者のサイト を見てみましょう。

おやおやあまり面白そうな情報はありませんね。

分かりやすいのはこちら でしょうね。こちらのサイトから敷地面積は150ha、葡萄畑は82haで、葡萄品種の割合はカベソー57%、メルロー30%、カベルネ・フラン8%、プティ・ヴェルドー3%そしてマルベック2%と書いてあります。

アペラシオンの原本 を見ると葡萄品種にグロ・ヴェルドの名前を見掛けますが、この品種は新しくは植えることが出来ないはず。

さてグロ・ヴェルド、あまり聞き慣れない名前かも知れませんが正式名称は「Verdot Gros」シノニムは15ありますが次の通りです。

COLON
FER
FER SERVADOU

GROS VERDOT
GROS VERDOT COLON
GROS VERDOT NOIR
HERE
HERRANET
HERRE
HERT
MANCIN COLON
PLANT DE PALUS
PRUERA
VERDAU COLON
VERDOT COLON

2番目3番目の「フェール」「フェール・セルヴァドウ」はご存知の方が多いはずですがこれは混同されているだけのお話で、ガイヤックなど南西地方の正式名称「Fer」とは別品種であります。

ワインの裏側表側
さてさて大変遅くなりましたが開けてみましょう。


キャップシールはいつの間にかアルミの安物に変更されていますがコルクはセカンドとしてはご立派な長さ49mmの上物。


コルクを抜いた瞬間に感じる香りはオヤッというもの。


グラスに注ぐと予想を遙かに上回る濃い赤色で紫色の成分も僅かですが健在です。


香りは昔のグリュオー・ラローズとはかなり異質でアペラシオンを感じません。

樽の影響かも知れませんが・・・


味はと申し上げると・・・・

驚いたことに既に飲める状態になっています。


酸が少なく甘さがあり、コクもあり味密度もそこそこ。一般的に申し上げると大変飲みやすいワインではありませんか!


ふと思い付いたのは中国料理との相性が良いのではと・・・。


ですが私の申し上げたいのはサンジュリアンのワインではないような仕上がりということ。そこそこ寝かせればサンジュリアンらしさが出てくるのかも知れませんが・・・。


ネゴシアンの出荷価格は恐らく12.5ユーロ程、昔から比べると高くなりましたが最近のセカンドは蔵から出たらすぐ飲んで美味しいと云うことが求められているのでしょうか。


なんかイタリアのボルゲリみたいに感じてしまいました。