クラウドファンディングによる農業と地域振興

 「24次産業化」推進へ

 

昨今、「クラウドファンディング」という言葉をテレビなどでよく聞くようになった。


クラウドファンディングとは、不特定多数の人から少額ずつインターネットを通してお金を集める仕組みのことである。


米国においては2008年の世界金融危機(リーマンショック)から盛んになった。それは金融危機により投資や融資が停滞したため、新しい資金調達の方法が必要だったからだ。


日本においては東日本大震災を機に始まった。そのため、「誰かを応援するための購入」として広まっていった。


私は高校卒業後、米国に渡り、26歳でニューヨークで起業した。近年は、米国で学んだマーケティング手法を活用したクラウドファンディングを啓蒙するために、日本でも講演活動を行ってきた。


これまで佐賀県のアスパラガス、レンコン、パクチーなどさまざまな農家へクラウドファンディングを用いたマーケティング戦略を提案し、地域創生の手伝いをしてきた。

 

6次化阻む初期費用


コロナ禍のオンラインによる私の講座に、愛媛県内子町石畳で農業の「6次産業化」を目指す方が参加した。


この石畳は人口270人の農村地。過疎化が進み、30年後には99人になるとの予測がでている。


この自然があふれる地域では、伝統文化を守りつつ子どもたちやその子孫のために、水車小屋の復元、桜の保存活動、水車祭りや桜祭りなどの交流イベントに取り組んできた。


しかし、これだけでは、次世代につなげていくことはできないと思い、景観保全に加え、栗を中心とした生産、スイーツなどの加工品の製造、古民家を再築した宿を拠点とした観光などを促進した。自らで稼ぐ仕組みを作り、地域のコミュニティーを守っていく活動が始まった。


そこで栗生産者7人が集まった。それに加え、県内で行われた生産者と企業のマッチングイベントで、飲食や製菓業を営む仲間と出会った。  


そのうちの1人が私にたどり着き、セミナーに参加しクラウドファンディングを知ることになった。


東京大学の今村奈良臣名誉教授は、「6次産業化」を提唱した。6次産業化とは、1次(生産)・2次(加工)・3次(小売り・流通)それぞれの産業を融合することにより、新しい産業を形成する取り組みのことである。


要するに、生産者(1次産業)が加工(2次産業)と小売・流通(3次産業)も行い、経営の多角化を図ることだ。


この数字を掛け合わして「6次」として、新たな価値を生み出すことを意味している。



資料: クラファン総研


そのために、意欲ある農業者が生産物の質的向上や差別化、加工と販売の一体化に取り組むことが必要である。


しかし、この6次産業化の難点は商品開発やパッケージデザイン、マーケティングへの投資など、加工品を商品として販売するためには、多額の初期費用がかかってしまうことだ。 


そこを解消するのが、私が提案する4次産業としてのクラウドファンディングとDX(デジタルトランスフォーメーション)化である。

 

DXが未来をつくる

日常生活やビジネス様式がコロナによって変容し、明らかに時代が変わる。農家や農業も変わらなければならない。


農林水産省も現在、DXを緊急の課題としている。DXを簡単に言うと「データとデジタル技術を活用して新たな価値を創造する」ことである。単にアナログなものをデジタル化するものではない。


DXを最初に提唱した、スウェーデンのエリック・ストルターマン氏は、「ITで人々の生活をあらゆる面でより豊かに変化させる」ことを概念としている。


このDXの波は、農業にも押し寄せている。


生産管理の人工知能(AI)化やドローンの活用。また、流通販売もデジタル管理される。


これからの農業は、いいものを作るのは当然のこととし、どのように効率よく生産し、広く販売・管理するか。ここまでが1つの完成形ではないだろうか。


世界は日本のおいしく安心な農作物を安定的に求めている。6次化をさらに進化させ、付加価値を高め、地域を活性化し、新たな雇用と所得を生み出す。そんな「24次産業化」のサイクルが必要である。

 

CFでブランド強化

昨秋、「農業×地方創生×クラウドファンディング」の挑戦が始まった。


「地元民だけで味わうのはもうやめた。人口270人の村からお届けする愛媛完熟石畳栗」と題し、目標金額は30万円で、開催期間は45日で行われた。


県外のクラウドファンディングコンサルタントも2人加わった。


通常このような案件は集まっても100万円程度。


しかし、なんと村の人口よりも多い1163人の支援者から、1000万円以上の資金を手に入れることができた。


私は、今回の農村の成功から、4次産業としてクラウドファンディングを活用することがこれからの農業と農村を発展させていくものと確信した。


これまでの6次産業化からさらに進化した、1次×2次×3次×4次の「24次産業化」を推奨したい。


クラウドファンディングは前述したように、全国または世界から少額ずつの資金調達ができるだけではなく、消費ニーズの発掘、ファン作り、地域のブランディング、PR、オンライン販売を行うことができる。


その結果、「ジャパンブランド」として、その生産物や加工品を海外へ輸出、また海外への拠点進出も可能となる。インバウンド(訪日外国人)に関連する産業にも大いに広がりを見せるだろう。


近い将来、コロナ禍が終わり、いよいよ復興のための経済活動が始まるだろう。


24次産業化の推進によって、これからも農林水産業を盛り上げていきたい。

 

初出:日本農業新聞 2021年1月31日「農村学教室 <202回>」


板越ジョージ

クラファン株式会社 代表取締役

佐賀大学客員教授



 

小さな幸せが大きな幸せ^_^

 

板越ジョージ 博士(学術)

ワインソムリエ、温泉ソムリエ

クラウドファンディングコンサルタントR

 

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