意外なところに宝はうまっているものだ

 

夜中に突然布団から飛び起きた。日本で講演を頼まれたことを思い出したからだ。

 

いつもアメリカでの起業やクラウドファンディングに関しての話をしているのだが、今度の講演では僕の若い頃の話、学生時代の話をしなければならないようだ。すでに、自分でタイトルや講演内容を決める前に勝手に宣伝されてしまったからだ。

 

この20数年ビジネスに没頭していた私は、30年近く前の学生時代のことなど記憶の奥底にいってしまった。しかし悩める学生時代に人前で話せるようなネタは何もなく、何を話せばいいのかずっと思い悩んでいた。そんなとき、突然夜中に自分が日記をつけていたことを思い出したのだ。

 

学生当時の日記など何の役にもたたない幼稚なものだと思ったが、何か話の材料になるかもしれないと思い、読んでみようということになった。

 

ニューヨーク在住の私の自宅には、地下に物置ストレージがある。パジャマのままつっかけを履き、スマホをポケットに入れて急な階段を降りていった。久しぶりに入った埃っぽいストレージには使わなくなったベンチプレスやスキー板やゴルフバッグ、私のアメリカ滞在30年分の荷物が滞積し、今にも崩れ落ちそうだ。書類の入ったダンボール箱も山積みになっている。それを見て少し心がくじけた。

 

確か黒いボストンバッグに入れていた記憶がある。みつけてくれとばかりにそれは意外にもあっけなく見つかった。日記と一緒にアルバムをまとめた箱も見つけた。その白い箱にはアメリカ内で何度も引っ越した形跡があり、引越し業者が容赦なく雑に巻いたであろうガムテープで、ぐるぐる巻きになっていた。ずっしりと重いボストンバッグとダンボールを抱え、何かあけてはいけないパンドラの箱を持っているような、しかしウキウキ気分で真っ暗な階段を上っていった。

 

 部屋でさっそくボストンバッグをあけてみると、中から単行本よりやや大きいサイズの分厚い日記帳が十数冊でてきた。

 

 

中学校の時に書いていた日記からアメリカに留学生としてやってきた日。おまけに、マメに綴った家計簿や、壁や机に貼っていた自分へのスローガンが入っていた。

若い頃の少し恥ずかしく熱い思いに、ふとにやけた。

 

 

すべての日記帳の表紙には

 

「Do Not Read!読むな!」「Do Not Open!開けるな!」

 

と、ご丁寧に英語と日本語で書いてあった。所詮日記はすべて日本語なので、アメリカ人が読んでも何の支障もなかったはずだが。

 

どの日記帳から読もうかと思い、表紙に書いてある日付を元に時系列に並べようとした。すると一冊だけ、破れた黒い表紙の日付も何も書いてない日記帳があった。

 

なぜこの日記帳だけ、表紙が破けているんだろう。ふとそれを開いてみる。

 

おれは燃えている。 

91年5月3日 

車中にて 

George Itagoshi

 

という文字が飛び込んできた。我ながら笑ってしまった。よし、この日記から読もう。

 

続く。。。

 

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