娘の通っている高校の卒業式が行われた。


私はPTA役員なので来賓として出席した。


卒業生代表に卒業証書が校長から授与された後、

各担任から卒業生一人ひとりの名前が名簿順に読み上げられ、

生徒はその場で次ぎつぎに起立した。


各担任は凛とした声で順々に名前を呼び、

生徒たちも元気よく返事した。


3年○組の番になった。


担任の男性教諭が、生徒の名前を読み上げ始めた。


間もなく担任の声が震え出し、そしてその幅が大きくなり、

やがて嗚咽して言葉にならなくなった。


その瞬間、それまで祝賀ムードに包まれていた

体育館の空気が一変した。


担任が感激して声を詰まらせた訳ではない。


本来そこで読み上げるべき順番の生徒の名前がないのだ。


自殺した男子生徒の名前が、卒業生名簿から消されていた。


その後、担任は何とか声を搾り出し、残りの生徒の名前を読み上げた。


最後に自殺した生徒の名前を大きなしっかりとした声で読んだ。


すると3年○組の生徒全員が

体育館に響き渡る大きな声で「はい」と返事した。


会場のあちこちからすすり泣く声が聞こえた。


ほんの少し前までは保護者席に座るはずだった両親のことを思うと、

私も思わず落涙してしまった。




私には直接の面識はなかったのだが、○○君へ言いたい。


君の死を耳にしたとき私の娘は、一日中布団をかぶって泣いていた。


でもその何万倍の量の涙を、君の両親は流したに違いない。


苦しくて苦しくて苦しくてたまらなかっただろう君には酷な話だが、

ほんの少し君の行動が与える他人の苦しみを想像してほしかった。


君の短すぎる一生は、両親に喜びと苦しみとどちらを多く与えたのか?



親友、彼女、先生、親戚、そして何よりも家族の苦しみを思うと、

君の行動に対して「バカヤロー」と言いたい。





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