位置 青森県東津軽郡平内町大字白砂(40.9709716,140.9649833)

 

<ここで見られる地学素材>

◆石灰岩.付加体,コノドント

〇何がすごいの?

◆日本のはるか遠くの海でできた石灰岩が見れるのがすごい.コノドントという3度の大量絶滅を乗り越えた謎多き生物の化石を含む地層を見られるのがすごい.

〇この海岸では何を見れますか?.

◆ここで見られるのは,岩石名は石灰岩で,暖かくて浅い海でサンゴ・ウミユリ・貝殻などの生物の遺骸が堆積してできたと考えられています.堆積した時代を反映した地層名としては,この地点の少し南にある立石のチャートも含めて立石層といいます.地層が堆積した時代は中生代三畳紀(約2億5190万年前~約2億130万年前)という時代です.また,石灰岩がどのような経緯で現在の場所にあるのかで考えると付加体になります.

〇石灰岩はどんな岩石ですか.

◆日本の石灰岩は,日本から遠く離れた海洋プレート上の海山の上にサンゴ・ウミユリ・貝などの遺骸中の炭酸カルシウムの成分の多い物質が堆積してできたものです.

 石灰岩は生物由来の岩石なのでたくさんの化石を見つけることができます.ここで見られる石灰岩にもコノドントという化石が含まれています.しかし,その他の化石も堆積した時にはあったのだと思われますが,大陸地殻の下の付加した時の高温のために変質して見えなくなってしまったのだと思われます.

〇付加体とは何ですか?

◆海洋プレートをつくる岩石が,海溝で大陸プレートの下に沈み込むときに陸側に押し付けられてできた堆積物を付加体といいます.夏泊半島の石灰岩も堆積したのは三畳紀ですが,付加したのはもっと後の時代です.海洋プレート上の海山の上に堆積したのが石灰岩で,海山のまわりの深海に堆積したのがチャートです.海溝で海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むときに,チャートと石灰岩は陸側に付加しました.付加するときに岩石はグチャグチャに壊されて混ぜられます.ここの石灰岩が角礫化されているのは付加した時に破砕されたことによると思われます.その後の隆起運動で地下深くから持ち上げられて現在の夏泊半島に現れたと考えられています.ですから夏泊半島に出現するまでには,海洋プレート上→大陸プレートの底→隆起→夏泊半島の地表 という長い旅をしてきた岩石です.

〇コノドントとはどんな化石ですか?.

◆コノドントという化石は長い間どんな生物に由来しているのかがわからない化石でしたが,脊椎動物無顎類の仲間と考えられています.その後コノドントを持つ生き物の化石が発見されました.その生物はウナギのような細長い体で、コノドントになる歯は口から奥まったところに規則正しく並んでいました.この歯はエサとなる生物を捕まえたり消化にかかわる器官でだと考えられています.

 コノドント化石の大きさは1mm以下です.石灰岩を薬品処理して顕微鏡を使わないとみることができない化石です.このような小さな化石を微化石といいます.

 また,コノドントは古生代のはじまりのカンブリア紀から中生代の三畳紀までの地層から見つかっています.三畳紀末の大量絶滅の時に絶滅したと思われています.今日みられる動物の祖先がほとんど出そろったとされるカンブリア爆発の時代から三畳紀までずっと生き続けた生物の化石です.この間にビッグファイブとよばれる5度の大量絶滅を3度乗り越えて4度目の大量絶滅で絶滅した生物です.3度目の大量絶滅は約95%の生物種が絶滅したといわれ,5度の大量絶滅中で最大の絶滅イベントでした.せっかく最大の絶滅イベントを乗り越えて生き延びたのにその次の大量絶滅は乗り越えれなかった生物です.残念!!.

 

 

写真1.弁慶内の石灰岩から見つかったコノドント化石(0.5mm以下).3度の大量絶滅を生き延びて4度目の大量絶滅を生き延びれなかったすごく頑張った生物の化石.

 

 

写真2.夏泊半島の石灰岩.海岸に露出している岩石.この写真の左側に立石のチャートがある.

 

写真3.夏泊半島の石灰岩.レンズキャップのまわりが角礫状になっている.

 

写真4.夏泊半島の石灰岩.レンズキャップの左側が角礫状になっている.

 

写真5.夏泊半島の石灰岩.この石灰岩は角礫化している部分は確認できない.大きな角礫状のブロックの一部なのかもしれない.