私の今回の経験では、癌の治療はジェットコースターに乗っているような感じだと思った。前回の記事に書いたように経過がよくなり有頂天になったが、暫くすると急降下してしまったのである。一般に化学療法では、腫瘍が完全に消失すること(CR: complete response)はあまりなく、良くて私のような部分奏功(PR: partial response)のことが多い。PRの場合は、癌細胞が残っているのだから、私のような悪性度の高い癌細胞はあっという間に増殖してしまう。

 

少し専門的な話になるが、癌組織は癌細胞の塊といっても、その中を占めている細胞は均一な性質をもつものではなく、特性の異なる細胞が集合しているのが普通である。抗がん剤に対する反応についても、良く反応し死滅してくれる種類のものから、全く反応しないものまである。これが問題で、抗がん剤を使用して多くの癌細胞が死滅してくれたとしても、そのあとは抗がん剤の効かないものが残ってしまうことになる。私の場合は、それが4クール目の治療後に訪れた。いわゆる「抗がん剤が効かない」状態になったわけである。わかっていたが、やはり空しい気持ちと今後に対する壮絶な不安が襲ってきた。

 

 

ジェットコースターが急降下を始めた。