樹木希林さんが亡くなってもうすぐ5年半になる。何だか今でも、ふらっとスクリーンやテレビに、あの自然体で現れてくれそうな気がする。

樹木さんが出演し、存在感を示してくれた作品。

 

210回目は

「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」

 

 リリー・フランキーさんの自伝小説が原作の、母子の物語。

「深夜食堂」等の松岡錠司監督。2007年公開。

ボク(オダギリジョーさん)の語りで話は進む。過去と現在が交互に描かれる。

 

 1966年、僕は3歳。小倉のばあちゃん(佐々木すみ江さん)の家に住んでいた。

酔って帰って来たオトン(小林薫さん)は、吐いたり、息子に焼き鳥の串をくわえさせたり。

オカン(内田也哉子さん)は愛想を尽かし、ボクを連れて実家の筑豊へ帰る。古い炭鉱の町だった。ばあちゃん(渡辺美佐子さん)がいた。

 

 友達と思い切り弾けて遊んでいたとは、本人の弁。

 

 オカンは皆と花札をやっていたかと思えば、変装をして笑わせる。

 

 現在に戻り、オカン(樹木希林さん)は入院中。ボク(オダギリジョーさん)は毎日のように見舞いに来る。窓からは東京タワー🗼が見える。オカンはガンだった。

 

 ボクが学校の長期休みになると、オトンのいる小倉へ一人で行く事になっていた。

オトンの部屋には描きかけの絵があった。ボクもスケッチブックを持ち出し船の絵を描いていると、オトンは船の模型を作ってくれた。ただ、色塗りは途中で終わってしまうもやもや

オトンとの一番の思い出だった。建設中の東京タワーと写るオトンの写真もあった。

 

 中学生になったボク(冨浦智嗣さん)はオカンと実家を出て暮らした。そこは元病院の部屋だったガーン
高校受験が近づいて来て、町を出たいと思う様になってきた。そして大分の美術の学校へ進学したが、堕落した生活になってしまった。

 

 ヒラグリ(勝地涼さん)という毛色の変わった友達と煙草を吸いまくっていた🚬

 

 そして東京の大学を受験、合格しボク(オダギリジョーさん)は、またまた堕落した生活に。留年し、オカンの励ましもあって卒業は出来たが、就職せず、サラ金に手を出していた。

お金が無くオカン(樹木希林さん)に甘える。オカンは小料理屋をやっていた。

筑豊のばあちゃんが亡くなったが帰るお金も無い。家賃さえ払えないのだ。

 

 オカンの妹から、オカンがガンの手術で入院している事を知る。

 

 ボクはエノモト(荒川良々さん)と一緒に部屋を借り、生まれ変わったように働きだす。

イラストを描いたり本を出版したりして、借金も返せた。オカンもまた店で働く。

まともに暮らせる様になったボクはオカンと東京で一緒に生活する。

 

 7年が経った頃、オカンにまた、ガンが見つかり、手術出来ない事が分かるのだった・・・。

 

 

 

 オカンの生きる強さとしなやかさに圧倒される。そして息子を信じただ見守る。息子への愛にあふれ、周りの人々に感謝する。それを、内田也哉子さん、樹木希林さんのリレーで魅せてくれた。

特に、樹木希林さんの抗がん剤による副作用で苦しむ場面は圧巻である。もう止めさせて、と思ってしまうほど。

苦労かけた分、ボクのオカンに対する思いも強くあふれる。優しい息子なのだ。

 

 多彩な顔を見せてくれるリリー・フランキーさん。その裏にはこんな親子の物語が。オカンとオトンの関係、そして若い頃は通る様な道の先に、今の彼がある。

 

 横断歩道を息子が母の手を取り歩く。子供の時、線路の上を息子の手を取り歩く母。

 

 

 どこの家族にもあるあの時の風景。ふと、思い出す、季節とともに。

思い出は、静かに優しく。

母と登りたかった東京タワーは今もそこに・・・。

 

☆3.75です。

 

 じゃ、またバイバイ