公開時にはその表現方法が話題になった。
3年半前にBSで放送されたものを録画したが、メンタルに自信が無かったのでそのままにしておいたもの。やっと観てみた。俯瞰して観る私の性格から全て作り物と割り切れたが、もう一度観たいかと言うと、もういいと思う。刻み込まれた。
189回目は
「野 火」
子供の頃から大体の内容はなんとなく知っていたが、この歳になっても未読の大岡昇平氏の原作。太平洋戦争、レイテ島で彷徨う兵士が経験した事とは?
2015年公開。主演、脚本ともに塚本晋也監督。
1959年の市川崑監督版は観ていないが、リメイクという形ではないという。
第二次世界大戦末期、フィリピン、レイテ島、補給も無く兵士達は悲惨な状況下だった。
田村一等兵(塚本晋也さん)は結核のため野戦病院へ行くが、部隊へ戻れと言われてしまう。何度も行き来し、行き場のなくなった田村はジャングルの中を彷徨い続ける。飢えが襲い掛かる。
田村
病院の近くにいた二人の兵士、安田(リリー・フランキーさん)と永松(森優作さん)。
永松は、足を怪我している安田の面倒をみていた。
安田
永松
その瞬間病院は爆撃により、炎上してしまう
二人と別れ、彷徨う田村。村の教会♰ へ辿り着き長椅子に横たわって眠ってしまう。
そこへ、はしゃぎながら船で水際へやって来た若い男女が教会へ入って来る。田村はマッチが欲しいと声をかけたが、女は狂ったように叫びやまず、田村は撃ち殺してしまう。男は逃げる。
田村は女の死体の床下に、塩があるのを見つけ、持ち去る。
その後田村は、三人組の兵士達に出会い、パロンポンへの撤退命令が出ている事を知る。三人は田村が塩を持っている事に気づくと、貪る様に舐め、田村は同行する。
その三人は伍長(中村達也さん)と部下だった。そしてパロンポンを目指して歩き出すのだが・・・・・・。
日本兵への攻撃、死体の並んだ街道、蠅、蛆虫、そして所謂、"猿の肉" とは?
凄惨な現状が再現される。人はあんなにも残酷になれるのか?
田村は必死に正気を保とうとするが、非常な飢えの中、結局生き延びられたのは・・・。
相当グロテスクな表現であったが、実際に生き残った方が見たものは、もっと過酷な現場だったのだろう。戦後復員しても、何も話さず亡くなったという方が沢山いたというのだから、どれだけ悲惨だったのか・・・。
永松を演じた森優作さんは、可愛らしい素朴な顔をしているが、狂気に満ちた演技に圧倒された。
狂って当たり前の世界だったのだろう。
対照的に、ジャングルの緑、ブーゲンビリアの様な花、雄大な空や海が美しく描かれていた。皮肉なものだ。
平和ボケと言われる日本。戦後78年経ち、きな臭さがただようが、絶対に戦争をしてはいけない!何も生まない!
人を殺せば殺人として裁かれるのに、戦争の名の下では人を殺してもいいなどと許されない。
もう一度は観たくないが、観るべき一本かもしれない。
☆3.75です。
じゃ、また