原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分をどうするか。日本全体に突きつけられている課題だ。原子力発電環境整備機構(NUMO)が、北海道の2町村を対象に地質データや論文を分析した文献調査の結果を公表した。寿都(すっつ)町は全域、神恵内(かもえない)村は一部について、次の「概要調査地区の候補とする」と結論づけた。核のごみは強い放射線を発する。火山や断層の活動の影響を受けない地域で、地下300メートルより深い場所に数万年間埋設することになっている。処分場に適しているかを3段階で調べる仕組みが2000年に定められた。文献調査はその1段階目で、クリアするのは今回が初めてとなる。概要調査は実際に地質を詳しく調べる。地元自治体の首長に加え、知事の同意が必要だ。2町村の首長は現時点で態度を保留している。北海道の鈴木直道知事は、かねて否定的な立場を取ってきた。過去の火山活動などを理由に「適地ではない」と指摘する地質学者もいる。求められるのは、先入観を排した幅広い議論である。2町村では、概要調査への同意を問う住民投票を実施する案が浮上している。北海道だけに負担を押しつけるような現状への不信感も根強い。NUMOは今後、説明会を開く。長期間の安全性が保てるのかなど、懸念や疑問に誠実に答えるべきだ。02年の公募開始以来、高知、鹿児島、長崎などで応募に向けた動きが起きたが、いずれも住民らの反対で断念している。危険物を長期にわたって保管する「迷惑施設」を受け入れることへの抵抗感は理解できる。だが日本は多くの核のごみを抱える。最終処分の問題を避けて通ることはできない。政府は昨年、適地選定への関与を強めると決めた。既にいくつかの自治体を個別訪問したが、詳細は明らかにしていない。手続きの透明性を確保することが重要だ。地震の多い日本で適地を見つけるのは難しいとの見方もある。科学的知見を総動員して慎重に検討を進める必要がある。【毎日新聞社説(2024.2.18)】

 ※ 『何処かに処分しなければならない、でも慎重に議論しなければならない』というのは中立の意見ではありません。日本では地層処分は出來ないという現実を受け入れたら、核のゴミの問題は動き出せるでしょう。