だまされる科学：同調現象と順位制②

前回からの続きです。

水素っち「前回の話では、セミナーに出かけた僕が見事にだまされました。
ロジウム侯爵によると、だまされるように仕向けられたポイントは以下の通りです。」

①自分を権威付けする

(⚪︎⚪︎大学学長、アメリカで業界ナンバーワンの実績、⚪︎年で⚪︎⚪︎億円稼いだ、テレビに多数出演などなど。)

②同意者を大勢作る（数多くの体験者の声。今回の例では、セミナー参加者）

③メリットをわかりやすくする。
(楽にダイエット、楽に美容、楽に⚪︎千万円稼げる)


水素っち「」ストロンチウム博士によると、人間も含めた群れを作る生物の多くは、順位制を本能としておりので、それにつけこんだと言う話でした。」

順位制の例

※あくまでも例であり、元素っち同士の厳密な順位ではありません。

アンチモンキー「たしかに、サルやチンパンジー、ライオンなど、群れを作る動物は、順位付けをして、上のものには逆らわないような行動をとるよな。
誰から教育されたわけでもないのに。」

鉄わん「犬もそうだわん、飼い主にも順位付けするんだわん。」

モリブデン牛「牛などの家畜や犬などのペットになりやすい動物にも、ほぼ順位制の本能が組み込まれてるんだモー。
誰が一番偉いかは教える必要はあるけど、順位制それ自身は、教育をされていなくても、本能に組み込まれてるんだモー。」


ストロンチウム博士「人間界のコミュニティでも、ほとんどこの順位制が暗黙のうちに適用されてるんだ。
これは群れを作る哺乳類の本能だから、本人が無意識のうちにやってるので、避けようがない。
群れの維持には、上下関係を作って、上からの命令系統に従うのが最も合理的な選択だったんだろうね。」


イットリウムっち「確かに、人間もサルもゴリラもチンパンジーも牛もねずみもメダカもハチもカラスも自分との上下関係を作りますね。
他人と比べたがることが本能だと考えたほうが自然ですよね。」


ジルコニウムっち「会社や軍隊など、組織で動く場所は特にこういう上下関係の命令系統は徹底しているよな。」

アンチモンキー「同じコミュニティ内で、実力の近い者同士がいがみ合うのも、完全にサルと同じ行動だよな。人間なんて偉そうなこといって、結局サルと一緒ジャンか！！」

水素っち「中学生もこのブログ見てるので、あまり過激な表現はやめてよ…」

ロジウム侯爵「さらに、群れを作る動物の特徴は同調現象、つまり他人と同じ行動を選択しやすいということじゃ。」

水素っち「それ、この前テレビでやってました！

明らかに間違った答えを周りの人が答えていたら、ターゲットも間違いの答えをいいました。」
同調現象の例

酸素っち「本当はＢだと答えたいのに、前に答えた３人の答えに引きずられてしまいましたね、」

カリウムっち「人間も赤ちゃんの頃から親のしぐさや行動を真似ますものね。すでに、他人と同じ行動を取ることが脳に埋め込まれてるといっても不思議ではないですね。」

炭素っち「確かに、群れを作る動物が皆ばらばらなことやり始めたら、収拾つかないですよね。」

ロジウム侯爵「だから、この順位制と、同調現象の外にいた酸素っちからみれば、騙されてるとわかることでも、中にいる水素っちにとっては騙されてるとは思わないのだよ。

これに③のメリット、今回の例では、”楽してお金を稼げること”が自分のニーズと合致すれば、かなりの確率で、人間は騙されてしまうぞ。」

ストロンチウム博士「さらに、④にこれを入れてはどうだろう。」

④限定を匂わせる

(いまだけ、⚪︎人限定、もうすぐ席がなくなる)

酸素っち「テレビでの商品の紹介もそうですね。

まず、購入するメリットをわかりやすく説明をした後、偉い人が言っている、多くの人が買っている、さらに限定○台という流れになりますものね。」

窒素っち「目の前に行列ができてて、そこでみんな商品を買ってたら、ついつい一緒に買ってしまう人を見ますね。」

ロジウム侯爵「目の前の人に対する同調は強烈じゃからのう。」

マグネシウムっち「でも、動物の本能を見抜いてそこを攻めるなんて、本当によく考えてますね。もぐもぐ。」


ロジウム侯爵「このセミナー詐欺師のすごいところは、被害者が詐欺とはなかなか主張できないことなのじゃ。
たとえば、学習塾で東京大学合格実績多数！と謳った塾に通った結果、東京大学に合格しなかったとしても、保護者が学習塾を訴えることはできまい。
セミナーでも塾でも、私はこのやり方で成功した。そのやり方を相手の同意をもって教えているだけだ。という主張になるのだ。」


カリウムっち「なるほど、しかも、受講者の大半は、詐欺だと認識しなさそうですね・・・。」


スカンジウムっち「一人でも儲かっている人が出れば、大多数の人がセミナーに何十万円払ったとしても、全く詐欺と主張できなくなりますしね。」


ロジウム侯爵「そのとおり。人間を含めた動物の本能ともいえる、強烈な同調現象、順位制に組み込まれてしまっておるからな。本来群れの維持に役に立つはずだった動物の本能を打ち破るには、強力な理性が必要なのじゃが。」

アルミニウムっち「今回はセミナーの例ですが、同調や順位制を利用した詐欺には注意しないといけないですね。この手のものが全て詐欺とはいえないでしょうが、自分で判断できる目が必要になりますね。」



ストロンチウム博士「人間も、他の動物の一種であることを認識し、自分は基本的に同調と順位制を持っているものだと知っていれば、修正ができる。
人間が賢いところは、自己を正しく認識すれば、修正していけるところじゃろうな。」


水素っち「僕たち元素っちも、人間のように成長しますかね？」


炭素っち「元素っちたちが集まって、いろいろな化合物を作っていくのが成長と言えるのかもしれないね。」


水素っち「なるほど、人間も同調するように、僕たちも他の元素っちと群れをなして、いい同調、いい化合物を作っていきたいですね。」

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