化粧品の現実 | スローコスメから見た新時代化粧品事情

スローコスメから見た新時代化粧品事情

化粧品の良し悪しは10年~30年(長期間)使用してお肌が健康であるかどうかにあります。

昭和20年代末から30年代初期にかけて、化粧品の原料と皮膚の関係を理論的にとらえ、合成界面活性剤と化学添加物が皮膚に与える毒性を化粧品公害と名づけて指摘したのは小澤王晃(たかあき)、ゼノアの創設者です。

シャンプーが合成洗剤であり、バリアゾーンをこわしていろいろな化学添加物を皮膚に入れてしまうこと、そしてシミやシワの大きな原因になっていることは今でこそ知られていますが、当時は見向きもされませんでした。

一方、このようにしてふえた化粧品公害が消費者の反発をまねき、添加物に対する批判や自然化粧品の流行を生みました。

化粧品の原料には油脂や石鹸が欠かせませんが、これらはみな酸化や腐敗しやすいので添加物が必要です。

そこで化粧品業界は、油脂のかわりに合成樹脂を、石鹸のかわりに合成洗剤を使えば酸化防止剤も防腐剤もいらないことを利用したのです。合成洗剤も合成樹脂も表示義務がないので「無添加です」「自然化粧品です」と宣伝できたのです。

粘り気はあるが油を使っていない乳液やクリームは、水溶性の合成樹脂または合成セルロース。ウォータープルーフのファンデーションや濡れた唇の口紅は、水に溶けない合成樹脂の応用です。

こうして今、女性は合成洗剤の洗顔フォームで顔を洗い、合成樹脂の乳液をすりこみ、合成樹脂製のファンデーションや口紅を「落ちないし、仕上がりもきれいだし」とよろこんで使っているのです。

話しはかわりますが、日本と欧米の化粧品の違いは、なんといっても、基礎化粧品がまったく異質であることです。

欧米の基礎化粧品はすべて保湿化粧品であるといっても過言ではありません。皮膚のバリアが弱い、つまり皮膚の水分が蒸発して逃げやすい人達が欧米という乾燥地帯に住んでいるので、特に乾期には皮膚がその負担に耐えかねて痛みさえ感じます。ですから皮膚に水を補給する保湿化粧品が普及するのも当然です。

だれも気づいてないようですが、欧米の「スキンケア」とか「スキンコンディショニング」は日本人の「肌の手当て」とはまったく違います。

皮膚が乾燥したら皮膚に水を注入すればいい、ですから彼らにとって合成界面活性剤は保湿剤でありスキンコンディショニング剤なのです。このようなことは欧米の化粧品成分事典を見れば明らかです。

欧米の保湿化粧品の基本形は、「合成界面活性剤の水溶液」に「合成ポリマー」を溶かしたものです。皮膚に合成界面活性剤の水溶液を注入するのです。日本人は合成物を嫌うので、水溶性コラーゲンのような合成ポリマーに変えることが多いようですが、皮膚が水でふくらむのでアンチエイジング化粧品だと称して高利潤をえたことは有名です。

化粧品のサンプルを使ってみると、しっとりと皮膚が潤います。一見若返ったような気がするでしょう。「植物の潤い成分が」などという説明書を見ると「なるほどねえ」と思うにちがいありません。

しかし、皮膚が求めている最高のクリームは、あなた自身の皮膚から分泌される皮脂です。その皮脂はべとべとして気持ちわるいのです。

皮膚には「つけると気持のわるい皮脂(親油性化粧品)が必要なのに、化粧品業界が開発し製造してきたのは「つけると気持ちのよい化粧品(親水性化粧品)だったのです。女性の乾燥肌が急増した理由がここにあります。

合成樹脂なら刺激がなく、かぶれない化粧品を作ることができます。しかし皮膚は合成樹脂にまみれて進化してきたのではありません。皮膚の環境が汚染されて、皮膚はますます弱くなります。すると一生、無刺激の合成樹脂化粧品しか使えない皮膚になり、皮膚の老化を早めてしまうことになるのです。


ここらで私たちは基本に帰って、化粧品はどうあるべきかを考える必要があるのではないでしょうか?