たまには真面目に照明談議です。
数ある照明器具の中でも、技術的に最も新しく、もっとも不思議な灯り。
ご存知、有機ELです。
* * * * *
私が有機ELを始めて目にしたのは6,7年前だったでしょうか。
携帯のバックライトとして注目され始めた頃のことでした。
その頃、有機ELはLEDと共に次世代照明として多くのメディアに取り上げられ
○○年頃にはペラペラのフィルムになって建築材としてさまざまな用途で用いられ、
照明の概念を塗り替えるでしょう、と報道されていたのを記憶しています。
それは未来の幕開けを予感させる映像でした。
それから時が流れ、3年前のある展示会でのこと。
大手各社がこぞって有機ELパネルの展示を始め、LEDを追従するように、効率や
明るさの数値が一斉に並んだのです。日本発にて世界を席巻する技術として、大々
的に発表されていました。有機ELを初めて手に取ったときは、その薄さと軽さにショ
ックを受けたものです。当時の私は、以前勤めていたところでLED導光板の製品化
に携わっていましたので、有機ELでしか成しえない、明るい未来を感じた瞬間でした。
翌年、同じ展示会に足を運び真っ先に有機ELを確認。
あれ? 去年と光景があまり変わっていません。有機ELを活用した製品が続々と
登場すると思いきや、そうでもないのです。LEDが全盛の中にあって、有機ELは
まだ時期早尚なのか?
当時は震災によって省エネが叫ばれる中、発光効率がLEDより劣る有機ELは劣勢
に立たされていたかも知れません。それにしてもさみしい。
そして去年。今年こそ、と期待した展示会。
しかしまたしても、一般住宅で使えそうな製品は出てきてはいませんでした。
一体どうしてなのか?
これまで傍観していた私でしたが、それからは有機ELについて色々と調べました。
調べるにつれ、有機ELの置かれた状況が思ったよりも厳しいことが分かってきた
のです。
* * * * *
まず、価格。とにかく高価。それもそのはず、需要の掘り起こしが進んでいません
から、低価格化が進まないのです。これは今現在も変わらぬ事実です。世界中で
停滞しています。
そして効率。省エネを唄うにはあまりにも低効率。この状況を打開するには恐らく
企業は研究投資を重ね、新たな有機材料を発掘せねばならないはず。しかし需要
が伸びない状況にあっては投資も厳しい状況かもしれません。
メーカー関係者さんはきっと頭を悩ましていらっしゃることでしょう。
極めつけは、その形。
決まったサイズの四角形しか作れないとのこと。四角形だけでは、デザインにかな
りの制約が生じます。
この状況となっているのは、メーカーの生産ラインの都合もあるでしょう。
需要が高まる気配があれば、設備投資もできるでしょうが、今の状況ではそれも
厳しいかもしれません。しかし、これだけ制約があるとすると、デザイナーが躊躇す
るのも無理はありません。
しかし、私が感じた有機ELの最大の可能性は、その光の質にありました。
とにかく、なめらかで、やさしい光なのです。
LEDを見続けてきた私にとっては、衝撃に近いほど、光の質の良さに驚きました。
身近にあっても嫌な感じがしない。逆に、光を絞って置いておくと、ながめていたく
なるような、不思議な風合いがあるのです。落ち着くのです。
しかし、これを裏付けるような論文はありません。単なる、私の感覚に過ぎません。
また、壁や植物を照らすと、他の光源にはない光り方をするのです。とにかく、
光のグラデーションが美しい。
それを感じて以来、私はオフィスに有機ELを取り入れ、日々の時間を過ごしてい
ます。LABにも導入し、生活の光として使っています。
学術的な裏付けはありませんが、私の感じた心地よさは、月日と共に確信となってい
きました。
* * * * *
価格や形の制約は今も変わりません。世界中でデザインが停滞している状況も
変わりません。今年のミラノサローネでもほとんど発表されていなかったほどです。
しかし、この光を一般家庭にも届けたい。だって、良いものは良いのですから。
これが私の有機ELとの出会いです。
最近、少しずつですが有機ELの輪が広がってきました。
嬉しいことです。




