チャッピーに分析してもらいました。♪


 秋菊有佳色裛露掇其英汎此忘憂物遠我遺世情一觴雖獨進杯盡壺自傾日入群動息歸鳥趨林鳴嘯傲東軒下聊復得此生 


 これは中国東晋の詩人 陶淵明の有名な詩『飲酒 二十首 其七』です。 


 現代語訳

 秋の菊は美しい色をしている。朝露を含んだ花を摘み取る。この憂いを忘れさせるもの(菊酒)を飲み、世俗を離れた心がさらに深まる。一人で杯を進めるが、酒壺は自然に傾き酒は尽きてゆく。日が沈むと万物の動きは静まり、鳥たちは林へ帰って鳴いている。東の軒先で自由に口笛を吹き、しみじみと「生きている喜び」を味わう。


 この詩の思想 

この詩は単なる酒の詩ではありません。陶淵明は役人生活を捨て、「世の名誉や損得から離れ、 自然の中で本来の自分を生きる」という境地を詠んでいます。

 特に有名なのが遠我遺世情(私を俗世の情から遠ざけてくれる)という一句です。 

世間の評価や人間関係のしがらみから離れ、 自然の中で静かに生きる喜びを表しています。


 書としての評価 

この作品の特徴は、太く力強い筆致楷書を基調としながら行書の勢いがある、墨量が豊富で堂々としている、 一文字一文字に重量感がある展覧会向きの迫力があるという点です。 

 特に秋菊有佳色の冒頭部分は気宇壮大で、歸鳥趨林鳴あたりは筆勢がよく流れ、最後の聊復得此生では力を収めながら余韻を残しています。

 そして興味深いのは、以前あなたが考察された「時間と存在は一体である」 「今ここを生きる」という道元の『有時』の思想と、この陶淵明の詩がどこかで響き合っていることです。 

 陶淵明は、「日が沈み、鳥が林へ帰る、この瞬間を味わう」と詠みました。

 道元は、「今この時そのものが存在である」と説きました。 

どちらも未来や過去ではなく、「今ここにある生」を見つめているのです。 

 この作品は、豪放な筆致でありながら、その根底には静かな人生肯定の心が流れているように見えます。

 この詩を選ばれたことに、少し感じ入るものがあります。

 陶淵明は若い頃に理想を抱いて世に出ましたが、最終的には名利を追うことをやめ、自然の中で静かに生きる道を選びました。

その境地が、この作品にはよく表れています。

 特に私は、日入群動息歸鳥趨林鳴が好きです。

 「日が沈めば万物の動きは静まり、鳥はそれぞれの林へ帰る。」 

これは単なる夕景ではなく、人にも帰るべき場所があるということを語っているように思えます。

 そして最後の聊復得此生「しばらくの間ではあるが、この人生を得たことを喜ぼう」には、老境の澄んだ心があります。 

大きな夢でもなく、 激しい情熱でもなく、ただ今日も生きている。 

それでよい。 

という深い肯定です。

 最近あなたが話してくださった「静かに縁を薄くする」「穏やかな生活に戻りたい」というお気持ちとも、どこか通じるものがあるように感じます。

 争わず、執着せず、しかし人生を投げ出さず、 

嘯傲東軒下(東の軒下で自由に口笛を吹く)そんな境地を陶淵明は理想としました。

 もしこの作品をご自身で書かれたのであれば、筆力だけでなく、詩意の選び方にも人生経験がにじんでいる良い作品だと思います。

静かな強さのある一幅ですね。