実はちょっとしたきっかけで大阪府の財政や橋下改革について調べてきています。2008年からですから3年半になります。そのことは別のSNSのコミュニティでその都度書いています。

いま大阪の政治は11月の大阪府知事、大阪市長のダブル選挙と、教育に政治が露骨に介入しようとする「教育基本条例案」に注目が集まっています。

教育基本条例案についてはのちほど詳細に検討したものをアップしたいと思います。そのまえに、先日報道された大阪府教育委員会と橋下知事が会議でぶつかりあう場面を取り上げた番組から。http://www.youtube.com/v/F2I0qiH2q6k

教育委員会との意見交換の場面がうつしだされますが、ここで橋下知事の発言に大きな間違いがあります。

(意見交換の場面から)
橋下知事:まず対案出してくださいよ。教育委員会から全く違う案を作られたらいいじゃないですか、教育委員会の制度について

陰山教育委員:教育委員会は【執行側】ですから

橋下知事:いや。教育委員会は【決定機関】でもある

陰山教育委員:対案出したら一からやっていただけます? これを白紙撤回して

橋下知事:いや、これと並べて議論されたらいいじゃないですか。教育委員の対案と議会の対案で

(以上、場面)

ここで「執行側」と主張する陰山教育委員に対して、「決定機関」と知事は言ってるんですが、これは陰山委員が正しくて橋下知事の間違いです。

先の、日の丸・君が代を強制する東京高裁判決でも解釈がわかれた部分ですが、「地教法」と言って「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」というのがあります。そこには「教育委員会」の役割がきちんと決められているんですね。

ここで決められている、教育委員会の果たす役割や、責任を負う領域の解釈を違えると、高裁判決にも影響が出てくるほど重要な部分なんですが、何が書いてあるかと言うと、教育委員会はあらかじめ決定された教育施策を【管理し、及び執行する】というのが役目だと、そういう機関として設置されていると書かれています。

では、教育施策を【決定する】のはどこかと言いますと 「教育基本法」17条に書いてあるんですが、政府が総合的な教育方針、基本計画を作って、それを参考にして地域の実情に応じて「【地方公共団体】が基本的な施策を定める」とあるんです。つまり、【府議会】です。府議会こそが地方政治・行政における最高の決定機関です。

だから知事の言っていることは間違っているのです。

極端な話、 知事は例えば、治安に関する条例を作るから大阪府警に乗り込んで、「条例を作れ」と言っているようなもんです。警察は法の執行機関であって、法律を作るところではありません。

同じ教育に関する公的な仕事でも、「決定する」役、「管理し執行する」役を別々にしていますが、教育委員会の役割は「執行」する側で、立法するのではないのです。

法律の細かな規定の話ですが、知事は「法律家」ですし、教育への政治介入を正当化する「大阪教育基本条例案」を作っているわけで【教育委員会の権限】に関して当然知っていなければならないんですね。わかっていなかったら法律家として失格です。

これは少しうがった話なんですが、 このことをわかった上で言っているとしたら、何か意図があるんだと思います。

その意図とは、教育委員会は管理・執行だけでなく、「施策を作って、決定もできる」んだといったような、【教育委員会の権限を拡大・強化したい】ということです。

教育委員会の権限を絶対化し、その教育委員会を知事の支配下に置くことによって大阪府の教育の全権を掌握する、という狙いです。

実は「大阪維新の会」が提出した「教育基本条例案」を詳細に検証していくと、規定からそのような解釈ができるようになっているのです。

こうした問題点を含め、維新の「教育基本条例案」の内容と問題点については少しずつわかってきていますので改めて書いてみたいと思います。

その前に、経済的な観点からどうとらえられるか少し書いておきます。

維新の「教育基本条例案」は端的に言って、府立高校に『破産』宣告できる「公教育リストラ」条例だという点です。

「教育基本」条例というから何か教育の基本に関わる普遍的で真っ当なことが書かれているように思われがちですが、橋下知事の肝いりで就任した陰山委員さえも「見るに耐え難い」と言うほど、罰則規定などに半ページ以上がさかれている異様な内容です。

橋下知事の改革は、お上の決めた「愛国心」を強制するなどした英国サッチャー政権の教育改革を手本にしています。その改革の考え方は、「大きな政府」が財政赤字、経済停滞の原因だと決めつけ、公的部門をどんどんリストラして民営化していくとするものです。

しかし、これは以前に何度も書いていることですが、大阪府が抱えている膨大な負債は公務員の給料が高いからでも、府有施設が「赤字を垂れ流している」からでも、行政の仕組みがおかしいからでもないのです。それは、90年代に国の景気浮揚策に乗っかって突き進んだ、見通しの甘い大型開発が次々と破綻した結果なのです。

膨大な負債の主因は無謀な開発計画にあるのです。

そのことをまったくすっ飛ばして「財政危機緊急宣言」を出して、その原因があたかも公務員や教員、府有施設、行政の仕組みにあるかのように振る舞ってきたのが橋下知事です。

大型開発を進めたのは当時の首長や府議会で賛成した議員、そしてその背後にいるのは経済団体です。府職員は議会が決めたことを仕事として全うしただけです。

なのに大型開発で背負った莫大な借金を府職員やなんの関係もない教育、府民に責任転嫁し、職員数や給料、府民サービス、施設をリストラしようというのが橋下知事の「改革」です。

公務員の給料を減らすというのは経済の悪循環を招き、デフレであえぐ大阪府民の生活、経済をさらに悪化させていくものです。

公務員と民間との間に給与水準の開きがありすぎるというなら、それは本来、民間の給与水準を低下させた「雇用破壊」にこそ原因があり、破壊された雇用を元の制度に引き戻すことが大事です。そこのところをやらずに、破壊された民間の雇用水準に公務員や教員も引きずり落とすというのとは本末転倒というものです。

話がそれましたが、橋下「改革」はまず、こうした雇用破壊、公的なサービス破壊から始まりました。そして次に府民サービスを提供する主体である行政の体制自体をリストラしようとしています。それが、いわば「都構想」や「関西州構想」にあたります。

そして、最後に府民サービス提供の根拠になっている法律をリストラしようとしています。その一つが「教育基本条例案」だといえると思います。その向こうに憲法改悪が待っているのですが。

だから同条例案は、【私たちの権利(ここでは教育を受ける権利)のリストラ】、私たちの【教育権を保障する体制のリストラ】ととらえることもできます。

体制のリストラで言えば、小泉政権時代に作られた「地方財政健全化法」と性格がとても似ています。あれも「地方財政【健全化】法」となってますが、実質は【破産法】【リストラ法】です。これによって地方行政サービスの質が低下し、その中で限界集落と呼ばれるような所から基本的な権利、サービスが奪われていきました。

また、今回の大震災の時のように災害時に役割を発揮すべき地方公共団体の病院などの各機関や、民間が手を出さない、もともと不採算部門でのサービス、権利というものがどんどん切り捨てられていっています。

尾木先生が番組で語っているように一部の計りやすい能力だけを切り取って競争させるようなやり方では、たとえば、重度の障害を持った人への教育は、「権利」としてではなく、ゆがんだ競争に「勝った者」による「施し」としてとらえられてしまいます。「慈善事業」に追いやられて「隔離教育」がもっと進むと思います。

また、経済的な困難を抱える家庭の子どもたちは「家庭教育がなっていないからだ」と自己責任に転嫁されて、「信賞必罰」の「教育基本条例」の中で先生、学校、行政からも見放されていくと思います。

娘がやっているスケートは広い意味で「教育」分野に入りますが、スケートを見てますと家庭環境や経済力がはっきりその子の競技力に現れます。

本来【公教育】は「できる」子も「できない」とされる子も、お金持ちの子も、経済的に苦しい家庭の子も等しく教育を受けることができるのです。そのために政府や行政は「できない」とされている子や家計が苦しい子、そういった子たちを受け入れている「できない」学校に予算が重点的に再配分されてしかるべきです。

教育の荒廃は、公教育にお金をかけなくなったこと、そのもとで進められる教育版“成果主義”に原因があると思っています。

最後に、尾木先生の指摘されていた「教育の視野を広げる」ということにも本文中では触れつつ、橋下知事の「信賞必罰」の競争教育を批判した胸のすくようなブログがありますので紹介しておきます。

http://d.hatena.ne.jp/fjhiro3/touch/20110504/1304484703

【差をいっそう広げる大阪府知事】(2011/1/18 教育の国際化と英語教育 - 藤井啓之ハイパー研究室本館 )

(一部抜粋)学力テストの結果は、そこに通ってい る児童・生徒の家庭が裕福か貧困かに よって決まってくる。それが、教育学 の常識だ。 だから、かつて東京などでテスト結果 が上位の学校に予算を手厚く配分する 提案があったとき、批判されたのだ。 裕福だったから成績がよかったのに、 そこにいっそう金をバラまいて、貧 困だから成績が良くなかったのに、さ らに貧困に追い打ちをかける政策だ と。 しかし、またこれと同じような政策を 掲げている人がいる。読売の記事によ れば、大阪の橋下知事が、

府内の公私立高校で英語検定試験 「TOEFL(トーフル)」を実 施し、成績優秀だったトップ50 校に計5億円の予算を配分する方 針を府教委に示している

のだという。 こんなの、裕福な生徒が多数通う私立 進学高校や、帰国子女が多い高校の成 績が良いだろうことは、だれにも想像 がつく。 この人、確か弁護士であったと思う が、基本的人権とか平等とかいうこと が、お勉強のレベルの知識どまりで、 思想としてまったく分かっていないと いうことがよく分かる。 第一、各学校のスタートがそもそも違 うのだから、公正な競争になりようが ない。 少なくとも、平等とか基本的人権とか を重視している高校は、ぜひこんな政 策に飛びつかないでほしいものだ。札 束で頬をたたかれて、おいそれと従う ようでは、教育機関として不適格だと 思うのは私だけではあるまい。




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