塩野七生が著書で改革を志す政治家が失脚する要因のいくつかについて論じていたと記憶しています。その一つが「市民の大事なもの」を奪ったとき。(だったと思います。たぶん、。(たしか、「ローマ人の物語」のグラックス兄弟のあたりでは・・・)それゆえに、逆に、ローマの為政者は市民にパンとサーカス とを与えることに腐心し続けたものと思われます。


さて、昨日、指定管理者 (文化会館や総合体育館など)の議案が上程されました。まず気になるのが、どの事業者の事業計画書を見てもコストの削減と利用者の増大が書かれているにもか関わらず、指定管理料(高砂市が事業者に払うお金)が殆んど横ばいである点です。とはいえ、「オマエはいくらが適当だと考えるのか?」と問い返されたら、正直困ってしまいます。「コスト=指定管理料+利用者負担」なので、指定管理料とは利用者負担とのバランスで成り立っていることになります。


個別の過去の財務書類が手元にあるのは、総合体育館のみですので(予算計画書はどの事業計画書にも添付されている)、申し訳ありませんが例に使わせてもらうとして、「(支出(コスト)-利用収入)÷利用者数(団体数)」を計算すると、

平成21年 約1万1753円

平成22年 約1万2881円

平成23年 約1万2039円

となります。つまり、団体が総合体育館を一回使うごとに、1万2千円前後の税金が投入されていることになります。言い方は悪いですが、あたかも団体が一回施設を使用するにつき多額の補助を与えているのと同様の効果ということになります。しかも、上述の「支出(コスト)」には一般管理費(間接費)を配賦していませんし、また建物の減価償却も計算には入れてません。これらを算入すると、数字はさらに高額となります。


高砂市の施設ですから、「文化の振興」とか「スポーツの振興」となどなどの行政目的が各施設にはあります。ですから、完全な利用者負担を求めよというつもりはありません。そんなことをすれば、各施設の利用者は誰もいなくなってしまいます。また、一気に値上げをしていくことも現実としては難しいでしょう。


ただ、やはり各施設の利用者が払う利用料と各施設のコストには大きなひらきがあることに正面から向き合うべきだと思います。①特に、昨年4月から書いていりように、高砂市の施設は老朽化しており、重い問題としてのしかかっていること(建て替えの場合には約1000億、大規模修繕には約550億。ともに私の勝手な試算。この試算を前提にすれば施設の統廃合は残念ながら不可避)。


②一方で高砂市が政策的に増やさなければならない「公を担う民」、平たくいえば余暇の時間を公園の草むしりや小学生の登下校の見守り、落ち葉掃きをしている人には、経済的援助等はあまりない場合が多いことの不均衡。


③財政調整基金の少なさ(災害などの有事のタネ銭として30億円は必要であることは以前に書いた。が、現実はその半分ほどしかない)。

などの背景を考えれば、苦しくとも現状を説明し利用者と話し合い、もう少し利用者負担を求めてもよいのではないでしょうか?市民の「大事なもの」を奪うことに繋がるかもしれません。しかし、パンとサーカスとを振舞うのではなく、市民への説明と市民との対話を通じて、市民に理解してもらうこともリーダーの役目だと考えます。