『シェアハウスプロジェクト』
「ってなぁに?」
金髪ロン毛の少女は、何やら難しい言葉の並んだ書類を眺めて、解説を求める。長身で金髪の、目元の隠れた青年がため息を吐く。
「おま・・・自分がどうなって、こんな場所に居るのか解ってねぇのか?」
少女、シルヴィはベッドに腰掛けたまま足をぱたぱたと揺らす。
「だって、私は「殺してくれる程愛してもらえる」って聞いて来たんだもん。なのに、皆私以外を殺してさ。約束と違うの!!」
青年、クロードはシルヴィの隣に腰掛けて髪をくしゃりと撫でる。
「お前はいいんだよ。ちゃんと俺が殺してやるから。お前が死にたくないって思えたら、殺してやる」
「えー。それなんかチガウ」
シルヴィは拗ねて見せるものの、口元はどうも緩んでしまう。
元来。シェアハウスプロジェクトと言われるものは、犯罪者の思考、行動を観察し、データ化し、社会の犯罪者予備軍の早期発見、更生の為に役立てるというもの。の筈だった。
「でも、おかしいんスよね。この計画」
白を基調としたロシア軍のような軍服を着た黒髪の青年が口を開く。
「そもそも、犯罪者の生活パターンを観察したいなら、外と隔離すべきじゃないし、殺したい放題の不死身。なんて美味しい、ありえない世界を作り出したら、何の参考にもならないってのに」
彼の言う事は尤もだった。このプロジェクトによって、数人の犯罪者が一件の屋敷に集められ、そこで殺し合いの日々を送らされている。
それは社会的に非日常で、データとして何の役にも立たない。
「なぁんか、別の意図を感じちゃうっていうか」
腑に落ちないで悶々と考える彼は紛れもなくそのプロジェクトの発案者や、それを支援する政府側の人間の筈。
「やめとけ。変なこと考えるとオレみたいに左遷させられるぜぇ?」
「いや、あの。先輩の場合は自ら望んでの事でしょう」
クロードは青年に忠告したつもりが窘められてしまう。
「でもなぁタタラ。お前はちょっと真面目すぎるんだよぉ」
「先輩は不真面目でしたよねぇ。現場は荒らすし、犯人殺すし」
思い出したのか、青年タタラはため息をつく。
それでも、彼はクロードと同じ職場で働けた事を誇りに思っているし、今は拘束衣を着て、犯罪者になった彼を、尊敬している。
短命でも不死身になって。彼は楽しそうだ。
「まぁ、お前は外から、俺は内側から探ろうやぁ」
彼は待っている。
「あの男」のやる気のない、生気の無い瞳が情念で赤黒く色づくのを。
シェアハウスプロジェクト。
この屋敷に集められた犯罪者達は、少なからず狂っている。