日本女性の平均的な閉経年齢は、50歳前後と言われています。この前後10年間ぐらいの間が更年期と呼ばれる時期で、卵巣の働きが徐々に低下してきます。そのため、閉経が近づくと、卵巣から分泌されるエストロゲンの量も少なくなってきます。ところが、脳からは、エストロゲンの分泌が不足しているから、もっと分泌せよという指令が卵巣に届けられます。つまり、もう卵巣からエストロゲンが分泌される能力はないのに、脳からは卵巣を刺激するホルモンがどんどん分泌されます。
こうしたホルモンのアンバランスから自律神経の働きが乱れ、更年期障害が起こるのです。ところが、最近まだ20代、30代の若い女性にも、生理が不順になったり、月経が無くなって、更年期障害と同じような症状を訴える人が増えてきました。これを総称して、「若年性更年期障害」といった言葉が生まれています。この中には、さまざまな原因で実際に閉経する人も確かに含まれています。医学的には1年以上無月経が続くと閉経とみなされます。そして、43歳以前に閉経を迎えることを「早発閉経」と呼び、病的な状態と考えています。それより短期間、たとえば月経が無くなって半年ぐらいであれば、「続発性無月経」と呼びます。
しかし、若い人で本当に早発閉経に至る人はごく少数です。もちろん、中には40代前半で閉経に至る人もいるわけで、その場合、30代後半から更年期障害が現れても不思議ではないわけです。では、もっと若い人が更年期障害と似た症状を訴えるのは、何が原因なのでしょうか。これは、ストレスや無理なダイエット、食生活を含めて不規則な生活などが、大きな原因と見られています。あるいは、スポーツ選手などの場合、過激な運動が原因になることもあります。こうした要因が、卵巣の働きを低下させたり、あるいは卵巣の働きは正常でもホルモンのバランスが乱れて、更年期と同じような症状が現れると考えられるのです。症状として“ほてり”や“手足の冷え”だけでなく女性ホルモンの低下による骨量の減少、膣の乾燥や萎縮、脱毛、さらには精神的にも“うつ”、“不安”などが起こることがあります。
いずれにしても月経不順や無月経は女性にとって、危険信号です。婦人科できちんと検査を受けて対処することが必要です。