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サムライ時計師スイスで修行してきました!

スイスといえば自然、銀行、そして時計。
いやいやそれだけではありません。
ハイジの故郷は、実はこんな国なんです。
(ヨーロッパ 海外 海外生活)
そして帰国しました。

ちょっと専門的な話を。











時計の世界、特に機械式時計の世界では





時計の正確性をはかる時に、しばしば「日差」という言葉が使われます。











日差というのは、簡潔に言うと





「一日に時間がどのくらいが進んだり、遅れたりするか」





という数値になります。











現在、一日は24時間とされていますが、





では、一日は何秒だか計算してみてください。











答えは、86400秒。











もしみなさんの使っている時計が一日に1秒遅れるとすると、





一日は86399秒ということになってしまいますね。











つまり、





86400秒-86399秒=1秒。











この1秒を、「日差1秒」と表現するわけです。











さてみなさんは時計の狂いをどこまで許容できますか?











①、たとえ1秒のズレであっても許せないという時間に正確なタイプ。











②、1日に1秒だと、1ヶ月で30秒も狂ってしまうから、





   せめてその半分くらいにしてもらいたい、というタイプ。











③、1日1秒の進み・遅れは仕方がない。 たとえ10秒くらい狂ってもまあ、





   ”目覚ましテレビ”の時間でも見ながら、毎朝時間を合わせればいいや。





   というちょっと粋なタイプ。











④、時計は趣味だから、1日に10分くらい進んでも、遅れてもかまわない。





   見て楽しめればOKというマイペースタイプ。











・・・・・。











時計の選び方は人それぞれ、TPOや好みで選ぶのが基本だと思うのですが、





時計が好きな人の中にはこの「日差」などを基準に、





時計の正確さ・精度を重要視する人がいます。











時計は、本来実用的な道具でもあり、時間の正確性を要求される現代において、





それは至極もっともな価値基準だと言えるでしょう。











そう考えるのであれば、①のタイプは「電波時計」が合うかも。 




ただ、いくら技術が進んでいるとはいえ、デザインがいかにも機能的な時計という感じで




敬遠する人も多いのではないでしょうか。









②のタイプはクオーツ時計を選ぶ人が多いでしょう。




モデルやメーカーにもよりますが、機械式時計より手の届きやすい価格で




デザインも豊富。 メンテナンスも電池交換が中心で使い勝手がいい。









④は、もう、懐中時計とかアンティーク時計など、モノを愛でることが出来る人ですね。




ただ、しっかりとしたメンテナンスとコンディションが良ければ、




その時計が持つ本来のパフォーマンスに近づけることが可能でしょう。









問題は③です。









粋で終わらせられればいいのですが、このカテゴリーに入っている人たちの時計、




機械式時計は、いろいろな意味で「あいまいさ」があるような気がするのです。









たとえば、有名メーカーのロレックスは、




基本的にシンプルで実用的。 




個人的にも認めているメーカーですよね。









しかし、一般に丈夫で正確、なんて言われていますが、結局のところ機械式時計。




「日差」1秒のズレが普通におこるわけです。




ずっと使っていれば、極端な話、1年に数分狂うことがある。









時計の歴史、および機械式時計の歴史は、精度との戦いであり、それはこれからも




続くでしょう。 限りなく日差を±0にしていく努力。 




そしてそれを目指して時計が作られる。




ただ残念ながら、物理上それは現実的に不可能と断言します。









地球上に重力がある時点でそれはもう、機械式時計にとって障害なのです。




そして、みなさんが時計をはめているとき、常に腕は一定の位置ですか?




それもありえません。









時計をはめたまま腕を上に上げているとき、




はずして机に置いているとき、、、




それぞれ、時計に加わる負荷が変わり、また




時計の構造上それぞれの状態では時計のパフォーマンスに差が出る。









ここでもう一つ、









前に述べたような、たとえば横置きとか、時計をはめて腕を上げてるとか、




下げているとかいった時計の位置を、時計の「姿勢」と呼び、




ある姿勢と、ある姿勢の日差の差を「姿勢差」といいます。




また、決められたいくつかの姿勢の中で、最も日差が大きくなったものを




「最大姿勢差」といっています。









時計を机の上に平らに置いていたときは、1日1秒しか遅れなかったのに、




同じ時計を壁に吊るして掛け時計代わりにしていたら1日に10秒も遅れた・・・









この場合、姿勢差は9秒ということになります。









実際に時計を調整するときは、のんびり一日かけて時間をはかっている暇はありませんし、




日差、姿勢差、最大姿勢差などなど調べなくてはならないことが様々あるので、




現代では、時計をセットし、その振動音(厳密にはいろいろあるのですが)などから、




瞬間的に日差などの数値を表示する機械を用いて作業をするわけです。




理論的には正しいので、ここで表れた数値がその時計のパフォーマンスとなりますが、




人が一日その時計をはめた場合、外部からのあらゆる衝撃や、”想定外”の姿勢にさらされる




ため、購入者がアフターセールスサービスに「時計が狂う」と持ち込むことがあるのです。









私のたった4年間の時計師経験だけでも、この手の修理依頼は多く、




また、時計師の友人や、業者さんなんかの話を聞くと、




「日本人は」この精度の問題に非常に敏感なようです。









国民性など理由はいろいろあるとは思いますが、これは逆に言えば、




スイス人に負けないくらい厳しい調整作業ができる優秀な時計師が




日本に多いのではないかと推測させてくれます。









私の会社でも、顧客から精度に関する修理依頼があったようで、




それを見た社長が、先月末から少し精度調整基準を厳しくしています。









時計のモデルによってパフォーマンスに違いはあるのですが、




私が担当しているモデルの精度許容範囲は、




・5姿勢による調整




・各姿勢の日差、-5秒から+10秒以内に収める




・そのうち2つの姿勢の姿勢差を限りなく±0にする




 (文字盤上向きと文字盤下向き)




・5姿勢の最大姿勢差15秒









さらに、実際の使用を想定して、




・3姿勢差(文字盤上向き、リューズ9時位置、リューズ下位置)




 の平均姿勢差を-1秒から+1秒に収める。









最後の3姿勢差の平均姿勢差-1秒から+1秒に収めるのがけっこう大変で、




これをスムーズに行うためには、5姿勢差の最大姿勢差をできるだけ詰める




必要があります。


これが先日から新たに加わった項目です。


それ以外の上記の項目を詰めていくことは、このモデルの構造上厳しいようです。


しかも、ロレックスなど最近の時計に多い、8振動ではなく、


6振動のモデルなので、特に縦姿勢にブレが出やすい。


これを簡単にやりこなすには、もっと経験が必要です・・・









そして、ゼンマイ全巻きから決められた時間が過ぎた時点でもういちど確認し、




これらを同様にクリアしなくてはなりません。









最後に、平姿勢(文字盤が上あるいは下を向いている状態)で220°、




縦姿勢で180°のときの最大姿勢差が基準値以内におさまっているか。。。









どうですか、こういう精度の追求を見てみると、時計に多少進み・遅れがあったとしても、




手がかかっていて、機械式時計はやっぱり価値があるように思いませんか?









だって、クオーツ振動子も、電池も、ICも使ってないんですよ!






















































































































































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