ムルテンでの夜、ホテルのバーでコーヒーをすすりながら、「さて、明日はどうしよう」と考えました。私は気ままな独り者なので、何をするにも基本一人です。誰かが一緒だととても気を遣ってしまい、「本当はこの人、あっちに行きたいんじゃないかな。これがやりたいんじゃないのかな」と気になって疲れてしまい楽しめないのです。私の旅行はあまり計画を立てず、その時の気分で行くところもその場で決めてしまいます。

ジュネーブで購入した往復チケットが、ヌーシャテル経由になっていたのを利用して、有名なヌーシャテルで降りてランチを食べることを思いつきました。フランスの女性歌手、Zaz(ザーズ)の曲、「Je veux(私が欲しいもの)」の中で「ヌーシャテルの豪邸(じゃなくて愛がほしい、と続くのですが)」と出てくるので、気になっていたのです。

フランス語を学んでいた頃、先生の一人が、歌で覚えましょう、という方針の方で、この歌を一緒に歌ったことがあります。私が「なぜフランスの歌なのに、スイスのヌーシャテルが出てくるの?」と聞いたら、「フランスの人はスイスに本当の豪邸がある、と思っているから」というので、不思議な気がしたのでした。まあ、なんでも高い国なので、そこの豪邸となると、たしかに天井知らずの値段になってしまいますが。

ヌーシャテルで電車を降りて、さて観光案内所に行って地図を、と思っても、そんなものはありませんでした。じゃあ、ロッカーに荷物を入れて身軽になって歩くか、と思っても、駅の地下にあるロッカーは、代金は5フラン(600円くらい)なのに、なぜか5フラン硬貨は使えず、1フランと2フラン硬貨だけで5フランにしないと使えないのでした。しかも、両替機もありません。近くのキオスクに事情を説明しても、当たり前ですが両替なんてしてくれません。こういうところが、ヨーロッパって本当に不親切。というか、日本だけですね。至れり尽くせりしてくれるのは。

しかたなく、小型スーツケースをゴロゴロ引きずっての移動になりました。

とにかくヌーシャテル湖を見たくて、坂を下り15分ほど歩くと港に到着です。ヌーシャテル湖はムルテン湖と比べるととても大きくて、遠くにアルプスのギザギザの山並みが見え、涼しい風が渡ってきて思わず深呼吸したくなる気持ちの良い景色でした。

港で観光用の小さな汽車「プチ・トラン」を見つけたので、1時間で効率よく見どころを回ってくれるこの楽しい汽車を利用することにしました。

旧市街は湖から丘の上に向かって広がっているので、荷物を引いて歩いたら相当にきつかったと思います。

 

 

プチ・トランは丘の上にあるコレジアル教会の広場で10分休憩しました。教会の中はステンドグラスの光に満ち、天井は紺碧の深い青で彩られていました。丘の上から見えるヌーシャテル湖も美しく輝いています。

 

 

 

港に戻ったら、湖を見渡すホテルのレストランで紅茶を飲みながらぼんやり過ごし、ぐずつき始めた天気がさらに悪くなる前にジュネーブに戻りました。

疲れた時に行きたくなるところが、山の人と海の人といると思いますが、私は明らかに海(水辺)の人のようです。水面を眺め、水鳥を見ていると心が穏やかに落ち着いていくのを感じました。

残り一週間、なんとか乗り越えて日本に帰ります。

フェルネーに戻って、歩き足りないので近所の散歩に出て、いつもウサギが「チン」と座っているところを探したら、今日もやっぱりウサギが座ってました。

かわいい!本当に不思議な「放し飼いウサギ」です。もうすぐジビエの季節ですね・・・。かわいいウサギを見て思い出すのもなんですが。

指折り数えて帰国を心待ちにするウサギ