この週末を利用して、ロンドンまでひとっ飛びしてきました。ジュネーブの利点は、地理的にヨーロッパの真ん中にあるため、直行便があればたいていの観光地に1時間から2時間くらいで行けることです。

 今回は観光では2度目のロンドン。ほぼ全編タップダンスで構成されているミュージカル、「42nd Street(フォーティセカンドストリート)」が上演されているのです。私はこのミュージカルの舞台を東京とニューヨークで見ましたが、超人的タップに魅了され、終わった後すぐに「もう一度初めから見たい!」と思うほどです。

 土曜日の朝10時にロンドンのガトウィック空港に到着し、空港の観光情報のカウンターで、旅行に便利な公共交通機関用プリペイドカード、「Oyster Card(オイスターカード)」を買いました。Oysterって、「牡蠣」のことですよね。なぜ、「牡蠣カード」というのかは聞きそびれました。デポジットに5ポンド(750円くらい)を入金し、さらに交通費として私は35ポンド(5000円くらい)を入れました。毎度チケットを買うのに機械に並ぶのが嫌だし、ヨーロッパではあらゆる機械がよく壊れているからです。カードを買った際についてきたケースには、「And never queue up again」(もう二度と並ばなくていいよ)と書いてありました。

  

 とにかく、電車に乗り換え、ロンドン市内の中心にあるCovent Garden(コベント・ガーデン)という駅まで移動したのですが、イギリス旅行では毎度いろんなところで困り果てます。駅の表示もとても分かりにくいと感じます。そう感じるのは私だけではなく、何人もの人が切符やスマホを持って呆然と表示を見上げていました。ホームには駅員さんがいるのですが、聞いても聞いても、返ってくる答えが理解できません。他の観光客たちも何度も聞いているところをみると、皆海外からの観光客のようです。

英語が、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアでこんなにも多様なのは、海をいくつも超えて広がったのだからしょうがないのでしょうか。ちなみに、イギリス人には私のカナダ訛りの英語がわかりにくいようで、何度か聞き返されました。すいませんすいません。田舎者の英語で。

 ようやく目的の駅にたどりつき、ホテルに荷物を置いてまずはSoho(ソーホー)にあるSoho’s Secret Tea Room(ソーホーの秘密のティールーム)という、パブの上にあるティールームに入りました。ここでは気軽にアフタヌーンティーを楽しむことができる、と観光ガイドに書いてあったからです。

 私は毎日コーヒーを何杯も飲みますが、イギリスに来たからにはやはり紅茶をおいしくいただいてみたい。それに、イギリス発祥の「アフタヌーンティー」というのもぜひ楽しみたい。でも、いわゆる高級ホテルでいただくのはちょっと敷居が高い。それならば気軽に入れるところで、と考えた次第。

 アフタヌーンティーとは、写真のとおり、軽めのサンドイッチ、スコーン、そして小さなケーキが何個かトレイに乗ってきて、ポットの紅茶が付いているものです。

 このお店で私が一番感激したのはスコーンのおいしさでした。スコーンを横に切ってそこにクリームを厚く塗り、さらにジャムを塗っていただくのですが、いやほんと、そのサクサクとした歯触り、クリームとジャムの混ざったときのおいしさ、おもわず「んんんー!おいしい!」と声に出してしまいました。

 お腹いっぱいになった後は、Notting Hill(ノッティング・ヒル)という、アンティーク市場が立つことで有名な街に行ってみました。

 私が目指すのはもちろん、日本の古地図。しばらく歩くと、ドンピシャの古地図専門店がありました。世界の地域別にまとめた地図が豊富にそろえてあり、なんと1683年製の日本の地図を見つけました。これが200ポンド(約3万円)也。うーん。本当に1683年製なのかなー。そんな古い地図を3万円で売るかなー、とは思いましたが…。ま、いいか。将来「なんでも鑑定団」に鑑定を依頼しよう!

 さあ、地図を買ったらもうノッティングヒルには用はない。すぐに地下鉄に乗り、一度ホテルに戻ってミュージカル観劇用に着替えて、アクセサリーを身に着けてさっそうと出かけました。このホテルを予約したのは徒歩5分で劇場に行けるから。外反母趾の足でヒールのある靴を履いて30分も歩いたりはできないのです。

 開場30分前には到着し、わくわくしながら待ちました。席は1階の真ん中あたり。タップダンスを以前習っていたので、ダンサーたちの足が良く見える位置を取ったのです。これは天井の照明。クラシックですがとても美しい装置でした。そして、ボックス席。

   

 舞台は想像以上にすばらしく、タップも超絶技巧で、ダンスも優雅に軽々と踊れて、歌も劇場に響き渡る声で歌える、そんな天才たちが舞台にあふれて飛び回っているという、夢のような光景にうっとりしっぱなしの幸せな2時間でした。

 ミュージカルにもいろいろありますが、シンプルなサクセスストーリーと目にも鮮やかな美しい1930年代の衣装、明るくて楽しい、笑いが絶えないこのミュージカルがやっぱりミュージカルらしくて私は好きです。

 一つアメリカでの舞台との違いを感じたのは、アフリカ系の人もアジア系の人も一人もいなかったことでした。アメリカであれば必ず数名は入っているのに。ロンドンほどのミュージカルの本場で、タップがうまいアフリカ系の人がいないはずはないと思われますが。ちょっとした違和感でした。

 こう見えても、タップを習っているウサギ