鳥といえば、私はスズメに餌をやるのが好きなのですが、今年6月にジュネーブに出張に来た際一生忘れられないであろう経験をしました。

 私がいつも滞在するフェルネー・ヴォルテールのアパートメントホテルは4階建てで、その時私は4階の南向きの部屋に滞在していました。当時ジュネーブ近辺は日中の最高気温が37度にまで上がる日もあり、それは暑い毎日でした。ベランダからモンブランが見えるのは良いとしても、夏至のころでしたので朝日がまぶしすぎて朝のさわやかさを感じるよりも、とにかくぎらぎらと太陽が照り付けるので辟易しました。夜9時を過ぎても陽が沈まないので夜中でも屋根が熱いままです。

 「これはたまらん」と思った私は、部屋を下の階に変えてもらいたいとホテル側にお願いするつもりでいたのです。そんなある朝、ベランダでいつもチュンチュンとにぎやかに鳴いているスズメが、尋常ではない、叫び声のような鳴き方をしたので「これは何かおかしなことが起こったに違いない」とベランダに出てみると、なんと、スズメのひながベランダに落ちていました。ひなと言っても羽は生えてきていました。でも口ばかりが大きくて落ちても動くこともできず親を呼んで弱弱しく鳴くばかり。

 こりゃ困った、どうしよう、と一瞬思いをめぐらしましたが、日本でWWFの会員になっている私。WWFの広報で、巣から落ちたひなは拾ってはいけない、と知っていました。親はどこかでちゃんと見ていて、育てようとするのだそうです。もちろん、必ず成功するわけではありませんが、人間が育てようとすると間違った子育てをしてしまうので、親に任せておいたほうが良いのです。私は見て見ぬふりをしてなるべくひなに近づかないようにすることにしました。

 といっても炎天下のベランダ。ぎらぎらの日差しを遮るものはほとんどありません。しばらくしてベランダに出てみると、ひなは冷房の室外機の下にちょこんと座っていました。親が「ここにいなさい」と言ったのでしょう。他にはテーブルセットがありますが、太陽が動くにつれて陰の部分も動いてしまうので一日いるには向いていないようでした。

 仕事に行かないといけないし、ひなは心配だし、うろうろ部屋の中とベランダを行ったり来たりして、これしかない、と思いついたのは水を撒くこと。ペットボトルに水を汲み、ベランダの端から端まで撒いてみました。この日差しではすぐに乾いてしまうなあ、と思いながらも、少しでもひなの消耗を防ぎたかったのです。

 親は時々餌をくわえて飛んできてひなに与えていました。二日後、またもやベランダで異常なスズメの鳴き声が!「すわっ!カラスに襲われたか?!」と飛び出してみると…。なんと!もう一羽ひなが増えているではありませんか。ああ、だめでしょ!こんなこと。。。お母さんスズメ、お父さんスズメ、しっかり!ひな達、どうなる?!

 オロオロウサギ