ナポリで泊まったホテルは、「卵城」と呼ばれる、港から海に突き出たところにあるお城のすぐ近くでした。それで、二日目の夜はこの卵城の敷地内にあるレストランにホテルから予約してもらってナポリの食事を楽しみました。ちなみに、なぜ卵城というかというと、昔このお城を建築した王様?が、卵を基礎の部分に置き、「この卵が割れたらナポリは滅びる。卵が割れない限りナポリは滅びない」と言ったのだそうです。なんか、不思議な話。

 この夜は雨で冷たい風が吹いており、ホテルで「すぐわかるから」と言われたレストランをすぐに見つけることができませんでした。うろうろしていると、とあるレストランの外で呼び込みをしている男性が「何を探しているの?」と英語で声をかけてきました。私はホテルの人に書いてもらったメモを見せて「このレストランに行きたいんだけど」と言いました。すると、その男性、「それならここだよ!」と、ドアを開けて私に早く入るように、とジェスチャーで示しました。でも、お店の名前はどこにも書いていないし、「本当にここ?」と思いながらも、早く暖かいところに座りたい気持ちもあり、「ホテルの人に予約してもらったんだけど」と言いながら、勧められたテーブルに座りました。英語を使う調子の良い男性は「ここだよ、ここ」と言いながら、私の持っていたメモをさっと取り上げました。「何か怪しい」と感じた私は「ちょっと、返して」と取り戻しました。

 ウェイターさんが来たのですが、英語がまったく通じません。「ホテルで予約」「お店の名前」を繰り返すと怪訝な顔をしています。

 調子の良い男が「飲み物は?料理は?」とせかすように聞くので、とりあえずビールとおつまみを注文すると、ウェイターさんはまだ怪訝な顔をしながらビールを持ってきました。

 一度引っ込んだウェイターさん、もう一人のウェイターさんと戻ってくると、メニューに書いてあるお店の名前を指さし、私のメモに書いてあるレストランの名前を指さして、「ここはあなたが予約した店ではない」とジェスチャーで示しました。やっぱり。。。

 「あの人が、『ここだ』と言ったのよ」というと、「違う、違う。ごめんね」と言いつつ、調子の良い男を睨みつけました。ビールを少し飲んでしまったので、ビール代を払おうとすると、ウェイターさん、「いいから、いいから」とジェスチャーで言って、「あなたの探しているレストランはあっちにある」と指さして教えてくれたので、お店を後にしました。「ナポリの男は調子がいい」と聞いていましたが、本当にその通り!皆さん、ナポリに行かれたら気を付けてください。

 でも、あのウェイターさんたちのように、「嘘をついてまでお客さんを引っ張り込むのは良くない」と良心を持っている人もいる、ということなので、まるきり悪いところでもないのです。世の中、いろんな人がいます。

 さて、ホテルで予約してもらったレストラン、La Scialuppaは小ぢんまりしていますがとても感じの良いお店でした。ギターと歌の二人連れの男性がライブをしています。私はチップを渡して、「帰れソレントへ」と「サンタ・ルチア」というナポリに関連した歌を歌ってもらいました。ライブで歌ってもらうのが好きなので、こういう機会があるとよくリクエストして歌ってもらいます。

 お料理は、ナポリ名物、モッツアレラチーズと生ハムのサラダ(というか、切ってどかんと置いただけですが)と、せっかく海の近くに来たのでタコの鍋焼きみたいなものを注文しました。モッツァレラチーズはイタリアどこでも食べられると思いますが、ナポリ周辺が発祥の地だそうで、タクシーの運転手さんいわく「モッツアレラはナポリで食べなくちゃ。ローマやミラノなんかで食べちゃだめだよ。全然違う味なんだから」とのこと。確かに、モッツァレラチーズ、おいしかったです。今でも、口の中に入れたときの軽い塩味と食感を思い出します。何もつけず、そのまま食べるのがおいしいですね。

ワインは、昼間のガイドさんから教えてもらった「Grangnano (グランニャーノ)」という微発泡の赤ワインをいただきました。ヨーロッパに来て以来いろんなワインを飲みましたが、微発泡の白ワインはあっても、赤ワインは初めてでした。これは本当においしいので、ナポリ周辺に行かれたらぜひお試しください。もしまた飲む機会があれば、ぜひ飲みたい、おいしいワインでした。

これだけでは物足りなかったので、牛ひれステーキも注文してしまいました。美味しかったー!でも、ちょっと量が多すぎて。。。「一人なので、全部少なめにお願いします」と言っておいたのですが、ちっとも少なくなっていないような気がしました。

 そして、食べてはいけないデザートも。「ナポリデザート」という名前の、アーモンドのタルトのようなデザートでした。日本人ガイドさんに案内してもらった際、ナポリのデザートをいろいろ教えてもらいました。食べてはいけないとは知りながら、どうしても、食べてみたかったのです、はい。

 ナポリの旅は、おいしい食べ物とポンペイに圧倒された旅でした。最後の日にようやく晴れたので、ヴェスヴィオス火山が遠くに見えるナポリの港で写真を撮りました。

 日本だと港っていろんなごみが浮いていて近くで見るものではないですが、ナポリの港は水も透き通っているしごみが一つも浮いていなくて、ごみを海に捨ててはいけない、という道徳心を皆さん持っているんだなあ、と感心しました。

もう一度、ポンペイに行ってゆっくりまだ見ていないところも見学したいものです。

ウサギ