昨日の続きです。

この本のサブタイトルは

”体温の科学から学ぶ猛暑のサバイバル術”というものなんです。

そうよ、知りたいのはここ！　で、なんて書いてあったの？とお思いのあなた、

じらすようで悪いのですが、トリビアの宝庫のようなこの本で、

私は最後の最後、P.109の「おわりに　40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか」を

ご紹介させていただこうと思うのです。

ちょっと立ち止まって考える、それが一番大事と思ったのです。

■おわりに　40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか

　体温の許容範囲という点では、非常に狭い温度の範囲でしか生きていけないのが人である。この本を読んでいただいて、そのことを実感していただければ私の目的は70％到達できたと思う。ただし、人の体や体温は、それほど脆弱なものではなく、体温調節という非常に精密なしくみによって守られている。加えて人には知恵があり、衣服や建築、土木の工夫によって身を守ることが可能である。ここまでご理解いただいて90％到達。

　ただし、ちょっとしたことで、体温調節が破綻する瞬間がある。熱中症は、強いはずの人のカラダや体温、緻密な体温調節を瞬間で破壊する病気である。しかしながら、いくつかの原因や原因解決の手立ては明確にあり、少なくとも熱中症で死ぬことを壊滅できると私は思っている。まず、異常な高体温にならないようにする。不幸にしてなってしまっても、できるだけ短時間になるようにカラダを冷やすことである。この本を読んだ方なら同意いただけると思う。ただし、本当に40℃超えの日本列島になると、この計画が少々難しくなる。

　地球の温暖化と人の生理学を結びつけようとする論文は、この10年間に多く出版されている。地球温暖化については、有名雑誌にも掲載される大きな問題である。しかし、人の体温に直接与える影響よりは、天災、感染症、植生や農業などへの影響のほうがより大きな問題になり、大規模に人に影響を与えるであろう。短絡的に熱中症発生を結びつけるようなシミュレーションは、ポイントがズレている気がしてならない。

　現在の暑さの問題は、都市の構造物の変化、人口分布の問題、労働や居住地域の緑地破壊などが大きく関係しているように思われる。都市環境は、短期的な努力で改善が可能だと思う。40℃になるのを漫然と憂うより、今できる改善の余地は多くあると考える。40℃超えの日本列島に人は住んでいけなくはないが、人の過ちのために40℃超えの場所にしてはいけない。

　私はもともと医者なのだが、体温の研究にはまって随分と長くなった。医者の研究は病気の治療や原因の探求であるべきだが、実は体温は、ほとんど失敗のない（＝病気のない）調節のしくみによって行われている。血圧は高かったり低かったり問題が生じやすい不完全な調節によって行われているが、普段の体温に個人差は少ないし、毎日薬を飲んで体温の異常を直していますという人は、ごくごくわずかである。この完璧さと、その調節のシステムのエレガントさは逆にとても興味深い。暑さに対する調節機能の解明は、興味をくすぐる、そしてその研究は人に直接役立つ研究だと自負している。（後略）

この「おわりに」は2019年に書かれたものです。

2023年文庫化にあたり、半ページほど追記をされており、それには、

この本を出した当時は地球温暖化について真偽を疑う意見もあったが、

IPCC,2021によって温室効果ガスの蓄積は疑う余地がなくなっている。

またタイトルの”40℃超え”については国内で観測されることが多くなって、

日本気象協会が「酷暑日」と命名。暑さ対策もアップデートする必要がある、

など記されています。

*

私は本を読むとき、まず目次を見て、それから「あとがき」を読み、

「前書き」を読み、それで分かったつもりになったりする粗忽ものですが、

この「おわりに」にはとても惹かれました。

この地球の一大事に対して、原因がわからないのならまだしも、

それが分かっているのに何もしないというのはないだろうと思うのです。

そして著者の永島計さんの、人間の身体と人間への信頼の深さに打たれてしまったのです。

それで、私にも「すぐできること、その１」として、

メッセージを転記させていただきました。

日本列島を

”人の過ちのために40℃超えの場所にしてはいけない”

ほんとうにそう思うんです。

*

昨日咲いたサボテンの花

今朝収穫したオクラ。

なんと15本もとれました。

★40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか（２）