先日石橋文化センターを訪れたときのことですが、

筑後平野の麦畑も眺めることができました。

一面の麦畑、すっかり枯れてまさに麦秋でした。

ただ悲しいかな、この見事な景色を目にしても

言葉の断片も浮かんできませんでした。

一面の麦畑という原風景が私の中にないのだな～。

で、話はややずれるんですが、

以下の写真は私の畑に蒔いてみた緑肥用の麦。

夏野菜の株もとに敷く藁を確保しようと昨秋蒔いたものです。

この麦、春先から一気に伸び、2メートルはゆうに越して風にそよいでいましたが、

先日刈り取り、よ～く見ようと穂先だけを切り取って持ち帰ってみたのですが

稲とは全然違いますよ。

穂は、言うなれば四角柱で先端は四角錘。

ガチッとしています。

麦の粒の先端はツンツンした毛が密生し、痒くなりそうですが、

これ何というのかな？

興味津々です。

調べてみると、この部分「芒（のぎ）」というそうですよ↓

■芒（のぎ）は、コメ、ムギなどイネ科の植物の小穂を構成する鱗片（穎）の先端にある棘状の突起のこと。のげ、ぼう、はしかとも言う。二十四節気のうち芒種（ぼうしゅ）は、芒を持つ植物の種を蒔く時期のことである。また、陶器などの表面に現れる芒状の細長い斑紋を芒になぞらえて芒目（のぎめ）と呼ぶ。（ウキペディアより）

おおっ、ここで一つ賢くなりました。

天目茶碗で「禾目天目」という比較的地味な（？）お茶碗がありますが、

あれはここからきているのですね。

■焼成をする際に釉薬中の結晶が流下し、黒釉の中に細い線条の模様ができているものを禾目天目（のぎめてんもく）と呼びます。模様が稲の「芒＝禾（のぎ）」に似ているようであることから、そう名付けられました。（ウキペディアより）

あ、どこまでも横道に逸れていきます。💦

話を戻して、

季語「麦秋」では句を作れないと思っていたのですが、

この厳しい穂の群団を見ていて一句できました。

黙すれど荒くれぞろい麦の秋

*

なお、増殖する俳句歳時記、「麦秋」では以下の句がとってもユニーク。

麦秋や江戸へ江戸へと象を曳き　　高山れおな
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
■季語は「麦秋（ばくしゅう）」で夏。見渡すかぎりに黄色く稔った麥畑のなかを、こともあろうに象を歩かせるという発想がユニークで愉快だ。どんなふうに見えるのだろう。なんだかワクワクする。が、掲句は、空想句ではなく史実にもとづいた想像句だ。実際に、江戸期にこういう情景があった。以下は、長崎県の「長崎文化百選」よりの引用。「（象が）はっきり初渡来として歓迎されたのは、亨保十三年（1728年）将軍吉宗の時代に長崎に渡来したときである（松浦直治）という。六月七日にオランダ船で長崎に着いた象は、雄と雌の二頭。雌の一頭は病気で死んだが。残った七歳の雄は将軍吉宗に献上のため翌十四年三月十六日長崎を出発。十四人の飼育係に交代で見守られながら、江戸まで三百里（約1200km）をノッシノッシと行進する。南蛮渡来のこの珍獣を一目見ようと、沿道は大変な騒ぎ。ずっと後世のパンダブームのような大フィーバーである。なにしろ巨体だから、橋も補強しなければならない。大井川はイカダを組んで渡す、といったありさま。そのころはもう江戸では象の写生図が早打ち飛脚で到着して一枚絵に刷られ、象の記事の載ったかわら版は、いくら刷っても売り切れ『馴象編』『象志』など象百科のような出版物は十数種に上ったという。五月二十五日に江戸に着いた象は、浜御殿の象舎に入った。翌々日江戸城へ引き入れられ、吉宗は諸大名とともに象を見物した」。しかしこの象は、やがて栄養失調でやせ細り死んでしまったという。あまりの大食ぶりに、さすがの江戸幕府も持て余したようだ。

『ウルトラ』（1998）所収。（清水哲男）

麦秋の中を歩く象、向かう先は”江戸”！

絵になりますねえ…。

ただ、この後日談を知ると

ぬぬ、これは『かわいそうなぞう』まんまではないか。

知らないほうが幸せってこともあるんですよ…。

というか、今はそんなことばかりで…。

★麦の秋の句