福井県で見る様々な建築 2 by 山中コ～ジ

福井県池田町にある吊り橋
僕の経験上二度目くらいかと思いますが、吊り橋を渡りました。
橋がワイヤーで吊られる事で起こる独特の揺れは何とも不思議なものです。
同行した山下 麻子もジェイソン マリポールも貴重な体験に大喜びです。
吊り橋の形状は構造上無駄が無く出来ているので、遠くから見ても美しく整っています。
とてもプリミティブな橋なので、里山を表現する絶好のアイコンでもあります。

越前市内の住宅
豪雪地域のため、玄関の前には庇が深くかけられ、大きな欄間状の壁が庇から下りて来ています。
雪が壁や窓ガラスを破壊しない為の工夫です。
地域それぞれに、それぞれの気候にあった建築が日本では見られます。
素晴らしいことです。
塀の高さにしても京都とは少し違ったりと、自分の生まれ育った地域（京都）の建築と比べる事で、それぞれの街に建つ建築の進化過程と言いますか、必然的な経緯での成り立ちを想像させられます。
それは、住宅メーカーの様な全ての地域に馴染むかもしれない住宅とはまるで違っています。
つまり住宅メーカーの住宅は、機能を満たしているだけで、地域が持つ本来の暮らし方にまでコミットしていないので、実は馴染んでいるとは言えないからです。

越前市内の住宅
現在はギャラリーとして使われているこの建築は、元々住宅であったと想像しています。
黒い鎧張りで外壁が覆われており、とても重厚感のある建築です。
建築の両側を挟む様に建てられている壁面は、うだつの変形であるかのようです。
恐らく、住居としてだけではなく、何かしらの商店を営まれていた様です。

越前港の屋根
越前港に出ると、港のあちこちで写真の様な屋根と外壁を持つ建築を見かけました。
明らかにデザインソースを越前港全体で合わせています。
港町独特の風景を近代的なデザインの建築により、雰囲気を一新していています。
この取り組みは非常に面白い取り組みであると感じました。
大きな予算をかけた訳ではなく、出来る範囲で風景を新しくしていく姿勢は大変評価できる事だと思います。
同様の仕事がGENETOに入ると、今回の建築群を知らなければ、同様の手法を試していたかも知れません。
そう言う意味で、非常に理解できると同時に、更に新しい切り口でこういった状況の地域を設計できるだろうかと考えさせられました。

池田町の社
豪雪地域である事が最大の理由かと思いますが、社の外側にもう一つの建築が覆っています。
こんな社はなかなか見かける事はありません。
社自体の機能をもう一つの建築で担保しているという状況は、本質からはずれているのですが、どうしてこうするに到ったのかという経緯を考える必要がありそうです。
この様な建築の設計を最初から行う事はあり得ません。
僕達が建築を設計する際、建築を覆う建築という概念はなかなか無く、やはり建築はあくまで外部と内部を隔絶する存在であるからです。
そう言う意味で、何故こういう建築になったのかは想像は難しく無いのですが、自分の価値観に無いユニークな建築を久しぶりに見せられました。

同じ境内にある社ですが、この社も重厚感ある建築です。
木造で造られた柱梁や外壁の表面が、非常に魅力的に見えました。
どの地域でも、その構造でも少しずつ朽ちて行きます。
木造の朽ち方は、これまでどこも対して変わらないと考えていたのですが、この社と京都市内や他地域で見かける社とはなんだか違います。
白っぽい様な独特の表情を見せています。
材料なのか、地域なのか、原因は分かりませんがこんな表情になる木造建築もある事を学びました。

柱に残されているかき込みの後。
これは、以前違う建築もしくは別の部位に使われていた事を物語っています。
式年遷宮のように新たに建て替えることができる神社の社はまだしも、限界集落に建つ社はそんなに簡単に新しくはできません。
それでも、地域の方々の思いはかき込みの後や、風化した表面を見れば想像ができます。
如何に神社が地域の人々にとって大切な存在か、池田町にある社を見る事で地域の人々の温かい思いが、朧げながらに想像できたようでもあります。

色々な建築を見ることができた福井県出張でした。


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