この記事のポイント;
  • イプソス社の国家ブランド指数で日本が1位に。西洋以外の国で初の快挙。
  • しかし日本は18年間7位以下に落ちたことがなく、実は日本のブランド力はゆっくりと、かつ着々と高まって来ていた
  • 失われた30年の間、日本の民間はそれまで蓄積してきた富をうまく使って、社会を安定させ、文化を成熟させ、オリジナリティとクリエイティビティを高めてきた
  • 問題はそのブランド力の買いたたきと安売を許す円安を放置してきた政府の政策

職場でかなり話題になったことある調査結果があります。
世界的な調査会社イプソスが毎年発表しているアンホルト・イプソスNBI National Brand Index 国家ブランド指数です。
レポートの詳細はこちら;
調査開始18年にして、西洋以外の国が首位になるのは初めてで、ドイツと米国以外の国が首位になるのも初なので、快挙といって良いでしょう。ただ、実は日本は昨年も2位に付けている上、これまで7位以下に落ちたことが無いのです。



このところの歴史的な円安や、世界の経済成長に取り残された「失われた30年」、政治のていたらくなどから、日本はもうオワコン化していると嘆く人が多いです。

しかし、私の意見は異なります。

経済ではポール・クルーグマンなどの経済学者も然り、日本の商社株を買い増している伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏然り。不安定化が進む世界で、この30年間社会の安定を保ちながら、ゆっくりと文化を成熟させつつ変化して来た日本の「株」が実はグンと上がっています。

製造業においては、中国における外国企業への重圧や、政府の政策が突如変化するリスクを嫌って、コロナ以降、工場やサプライチェーンを他国に移す動き=中国の「デリスキング」(リスクを無くすこと)が進んでいます。

不動産市場で中国版リーマン・ショックの潜在的リスクが不安視される中、中国の消費者は財布の紐を締め、成長率もスローダウン。

こうした中で感じるのが、日本市場の存在感の相対的上昇です。このところ、日本における売上を伸ばしている外資系メーカーが増えています。もちろん、業種にもよるし、同じ業種でもまちまちですが、企業によっては二桁台の成長を見せているところがある。それを牽引しているのは、インバウンド消費ももちろん追い風ではあるものの、実は「日本の消費者」です。

きちんと良いものを作っていれば、相応に評価してくれるのが日本の消費者。そして日本の消費者に評価されているとなると、中国をはじめアジア市場での売上にも波及するので、消費財メーカー各社にとって、もともと日本市場は重要でした。

ただ、ここ10年ほどは、グローバル企業の日本拠点に務める人なら誰もが感じて来たことかとおもいますが、とにかく中国ファーストで日本なんてどうでもいいといった風潮がありました。いわゆる日本通過=Japan Passing. 

それがここにきて、アメリカをはじめとする西側諸国との経済における対決姿勢を強め、中国政府が、中国発企業を優遇する「国潮」を推し進めています。具体的に、外資系への企業秘密開示の強制や、政府職員とあっただけで企業スパイの嫌疑をかけられ拘束されるなど、締めつけを強めている。

こうした背景もあって、中国一辺倒を反省し、日本への資本投下を強めている外資系が増えています。私の会社でも、日本の消費者インサイト(学べること)の重要性や、正しい戦略さえとれば消費者がきちんと評価してくれることなどを本社にアピールし、改めて注目されています。

そこにきて発表されたイプソス国家ブランド指数における日本の1位。思ったより話題になっていなかったのですが、みんなもうちょっと注目すべきではと感じます。「別に…」というのも日本らしさとは感じますが、このブランド力をもっと経済的な国力へと変換することができれば、それこそ「賃上げ」にもつながるのではないかと思います。
次回はもう少し、このブランド力について掘り下げます。
(この投稿は下記記事につづきます)