今日は昨日とうってかわって日中は良いお天気でしたが、日が暮れると冷え込みますね。取り組みたいことが多く時間が足りませんね。事務所の運営面でも、合同事務所にするかどうか検討したり・・・いずれにせよ事務所を良くしていきたいし育てていきたいです。
さて、一定の相続人は、遺留分侵害額を請求することができます。遺言作成の際は、遺留分を考慮しつつ、作成される方もおられます。本日は、自筆証書遺言作成のご相談の際にご質問があった、遺留分侵害額請求権について触れたいと思います。
遺留分侵害額請求権について
1.遺留分とは
兄弟姉妹以外の相続人は、相続人の遺産の一定部分について、一定割合を受ける権利を有します(民法1042条1項)。これを「遺留分」といいます。
兄弟姉妹以外の相続人とは、配偶者、子などの直系卑属、親などの直系尊属をいいます。
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます(同1046条)。
※ 受遺者とは、遺言により財産を受け取る人のことをいいます。ここでは、特定財産承継遺言によって財産を承継し、又は相続分の指定を受けた者を含みます(同1046条1項)。
※ 特定財産承継遺言とは、遺産分割方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言を言います(同1014条)。
2.遺留分の算出方法
遺留分は、遺留分を算定するための財産の価額をもとに、以下の割合で算出されます(同条同項)。
直系尊属のみが相続人 | 3分の1 |
上記以外の場合 | 2分の1 |
なお、相続人が複数人となる場合は、上記割合に各自の法定相続分(同900条)を乗じた割合となります(同1042条2項)。
なお、遺留分を算定するための財産の価額とは、亡くなった方(被相続人)が相続開始の時において有していた財産の価額に、贈与した財産の価額を加えた額から、債務の全額を控除した額となります(1043条1項)。
ここで、贈与した財産の価額とは、例えば父が亡くなった場合において、亡き父が生前にその財産を誰かに贈与していたとします。その財産も、相続開始前の1年間にしたものに限り、遺留分の算定するための財産の価額に算入されます(同1044条)。なお、亡き父、贈与を受けた者どちらもが、遺留分権利者に損を与えることを知っていた場合は、1年前の日よりも前にした贈与についても算入の対象となります。
但し、贈与した者が相続人だった場合は、相続開始前10年間にしたものが対象となりますが、当該相続人が婚姻や養子縁組、生計のために受けた贈与の価額に限られます(同1044条3項)。
※ 負担付贈与がされた場合における贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額となります(同1045条1項)。
※ 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなされます同1045条2項)。
3.遺留分侵害額の算定
遺留分侵害額は、上記「1.遺留分とは」記載の遺留分(1042条)から、次の①②を控除し、③を加算して算定します(同1046条2項)。
① | 遺留分権利者が受けた遺贈 又は 903条1項に規定する贈与の価額 |
② | 900条から902条まで、903条及び904条の規定により算定した相続分に応じて 遺留分権利者が取得すべき遺産の価額 |
③ | 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、 899条の規定により遺留分権利者が承継する債務の額 |
つまり、以下のようになります。
遺留分侵害額 = 遺留分 -(遺贈を受けた額 + 特別受益の額 + 遺留分権利者が相続分に応じて取得すべき額※)+ 遺留分権利者が承継する債務の額)
※ 寄与分は含まれません
なお、遺贈を受けた者(受遺者)や贈与を受けた者(受贈者)は、その遺贈又は贈与の価額を限度として、遺留分侵害額を負担することになります(同1047条)。
受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担します。 |
受遺者が複数あるとき、又は 受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたときは、受遺者又は受贈者がその価額の割合に応じて負担します。 (但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います。) |
受贈者が複数あるとき(上記を除く)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担します。 |
4.遺留分侵害額請求の方法
遺留分侵害額の請求は、意思表示だけで行使することができます。遺留分の請求は、内容証明郵便によることが推奨されます。内容証明郵便では、日本郵便が、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったのかを証明してくれるので、後日の有力な証拠になります。
請求先の受遺者又は受贈者が応じてくれない場合は、家庭裁判所の家事調停を利用する方法もあります。
5.遺留分侵害額請求権の行使期間
遺留分権利者は、以下の期間内に、遺留分侵害額の請求を行使する必要があります。以下の期間が経過すると、遺留分侵害額請求権は、次項により消滅するので注意が必要です(1048条)。
相続の開始 及び 遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間 |
相続開始の時から10年間 |
なお、受遺者又は受贈者が無資力だった場合は、遺留分権利者は何も払ってもらえないこともあります(同1047条4項)。
6.遺留分の放棄
遺留分は放棄できるのでしょうか。
相続開始前、開始後、いずれにおいても、遺留分を放棄することができます。
但し、相続開始前においては、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、放棄することができます(同1049条1項)。相続開始後に放棄する場合は、その旨の意思表示のみで足り、家庭裁判所の許可を得る必要はありません。
なお、留意すべき点として、遺留分の放棄をしても、遺留分以外の遺産を相続する権利は残ることが挙げられます。これは、例えば、亡くなった方の負の財産つまり借金などを相続してしまう可能性が残っているということになります。プラスの財産もマイナスの財産も全て相続しないようにするには、相続放棄をする必要があり、これは意思表示だけでは足らず、家庭裁判所への申述が必要です。
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